購読者数の高い目標を掲げ、全世界で1000万人の獲得を目指しているニューヨーク・タイムズ(The New York Times:以下、NYT)だが、一部のニュースレター(メールマガジン)については細かく攻め進めている。
購読者数の高い目標を掲げ、全世界で1000万人の獲得を目指しているニューヨーク・タイムズ(The New York Times:以下、NYT)だが、一部のニュースレター(メールマガジン)については細かく攻め進めている。
NYTは5月24日、新たに「サマー・イン・ザ・シティ(Summer in the City)」というニュースレターを立ち上げた。レイバー・デー(労働者の日:9月の第1月曜)にかけて週末に毎週発行し、ニューヨーク市の過ごし方のアイデアを提供する。また別に、ワールドカップにまつわる社会、政治、経済の諸問題について議論や意見を届ける「オフサイド(Offsides)」という隔週のニュースレターが、6月9日からスタートすることになっている。最近はほかに、風変わりなインターネット文化を扱う「インターネッティング・ウィズ・アマンダ・ヘス(Internetting with Amanda Hess)」、NYTの新しいポッドキャストシリーズを拡張する「カリフェート(Caliphate)」と、ふたつの臨時ニュースレターを出している。
NYTが期間限定のニュースレターを増やすことに決めたのは、2017年にテレビドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローン(Game of Thrones:GOT)」のニュースレターがうまくいったのを受けてのことだ。この全8回のニュースレターは8万人もの人が登録し、ユニーク開封率は60%だった。
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55種のニュースレター
NYTのニュースレターは55種類あり、登録者は2017年3月時点で1300万人(以降、登録者数は増えているとNYTはしたが、新しい数字の提供はなかった)。短期ニュースレターはそのごく一部ではあるが、NYTは同社の幅広い報道を読者に紹介し、また特定の層にリーチできる優れた方法だと考えている。たとえば「サマー・イン・ザ・シティ」は、NYTがオーディエンスを増やしたい若者を念頭に制作された。
「読者の習慣になるようにしたい」と語ったのは、NYTでメールとメッセージを担当する編集ディレクターのエリザベス・グッドリッジ氏。同氏は短期ニュースレターについて具体的な数字を出そうとしなかったが。NYTによると、ニュースレターの登録者は通常のNYT読者の2倍の確率で登録をする。NYTは短期ニュースレターで、ほかのニュースレターへの登録を積極的に宣伝している。たとえば、ワールドカップのニュースレターの登録者には、「オピニオン・トゥディ(Opinion Today)」やほかのスポーツ関連ニュースレターへの登録を促している。
「要はブランドの構築なのだ」とグッドリッジ氏はいう。「しかし、開封率とKPIがとりわけ高く、関係性の強化にもなっていることがわかった。好んで登録されるのは、短期間であることと、いま夢中になっているものだというのが理由だ」と同氏は語る。
「GOT」で得た教訓
こうした最近の期間限定ニュースレターでグッドリッジ氏は、「GOT」のニュースレターで得た教訓を頼りにしている。期間限定を魅力にして、人々が熱中しているテーマに切り込み、専門家が執筆してほかでは見つからないものを提供している。
たとえば、「サマー・イン・ザ・シティ」は若いスタッフ2名が執筆し、フォーマットを明確に定めている(周辺の旅行案内を2本。1本は夜のデートまたは友人との外出のためのもので、もう1本は親など市外からの来客をもてなすためもの)。
「オフサイド」はサッカーファン向けだが、フィールド外の活動に焦点を合わせている。「ニッチな内容でサッカーファンが対象だが、オピニオン欄に関心がある人にも響くはずだ」と、NYTで新たにオピニオンのニュースレター編集者になったアレクサンドラ・マーチ氏は語る。
「もっと増やせる」
NYTのニュースレターはこの55種類がピークだと思うかもしれない。しかし、グッドリッジ氏が監督する15人を超えるスタッフは増えているし、ニュースレターが互いに食い合っている様子はないという。同氏はまた、ワシントン・ポスト(The Washington Post)がやっているような購読者限定のニュースレターを検討している。
「もっと増やすことはできると思っている」とグッドリッジ氏は語った。
Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)