ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)がローンチした、テレビドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones)」に関するニュースレターが、わずか3週間で6万1000人の購読者を獲得した。その転送数、閲覧数は膨大で、その開封率は100%を超えたという。
ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)によると、同社がローンチしたテレビドラマシリーズ「ゲーム・オブ・スローンズ(Game of Thrones:GOT)」に関するポップアップニュースレターが、わずか3週間で6万1000人の購読者を獲得した。このニュースレターは、同社の新サービスでテレビドラマや映画のおすすめ情報を紹介するサイト「ウォッチング(Watching)」のスタッフによって制作されたもの。編集担当のエリザベス・グッドリッジ氏によると、このニュースレターの転送数、閲覧数は膨大で、その開封率は100%を超えたという。
ひとりがeメールを複数回開く、またはeメールを転送された相手がそれを開くことで、開封率は100%を超えることがある。グッドリッジ氏は、今回のニュースレターがここまで高い開封率を獲得した理由として、そのふたつのどちらが多かったかについては言及しなかった。いずれにしても、「ゲーム・オブ・スローンズ」のニュースレターの成功は、オーディエンスセグメントを構築する手段としてニュースレターを使っているパブリッシャーにとって、非常に大きな進歩だといえるだろう。
ただし、ここではポップアップを使って読者にクッキーをバラ撒くという手法が取り沙汰されるべきではない。「言いたいのは、『オーディエンスを拡大するためのツールを作ることを目的にはしていない』ということだ」と、グッドリッジ氏は語る。
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ローンチされた背景
タイムズは、以前にもポップアップニュースレターで成功したことがあった。2017年の上半期に発行した、ベトナム戦争での1年間を綴った「ベトナム’67(Vietnam ‘67)」というポップアップニュースレターは、タイムズが定期的に発行する50のニュースレターのなかでも最高となる、80%という開封率を記録した。ベトナム’67は、タイムズのオピニオン(Opinion)部門が制作したヒット作を再現する試みだったが、「ゲーム・オブ・スローンズ」は、それとは種類が異なる。
過去数年間で、グレイレディー(Gray Lady)、マイク(Mic)、マッシャブル(Mashable)のようなパブリッシャーは、「ゲーム・オブ・スローンズ」のエピソードの要約、番組の映像素材を使ったGIFアニメーションの制作、そして、ウェストロス(Westeros)という番組の架空の世界のさらなる面白さを広めるため、エディトリアルやオーディエンス関連の部門などから、これまででもっとも多くの人材を充ててきた。
タイムズのニュースレターは毎週3人のスタッフが担当となり、原稿の執筆や要約、取材、パブリッシャーから素材の収集を行っている。その目的は、毎週執筆されるいくつもの記事をふるいにかけ、読む価値のあるものだけを選別することにある。エピソードの要約を含むいくつかのコンテンツはタイムズのWebサイトで見ることができるが、ニュースレター限定のコンテンツもある。
ニュースレーターの効果
「これは、ただのリンクの寄せ集めではない」と、ニューヨーク・タイムズのTVエディター、ギルバート・クルーズ氏は語る。「ニュースレターを読むことで、読者は満足度の高い体験を得られると考えている」。
これによって、2016年10月に一般公開された、ウォッチング(Watching)というプロジェクトの魅力を高める手助けになることが期待されている。
ウォッチングは、たとえばFXのカルトヒット作「アメリカンズ(The Americans)」など、多くの番組をカバーする一方で、NetflixやHulu、そしてAmazonのプライムビデオなどのストリーミング動画の過多なサービスに辟易しているような視聴者に対して、おすすめ番組の情報を提供するサービスとしてもよく知られている。
読者は、ウォッチングで紹介する次の番組をもっと深く掘り下げて見てみようと楽しみにしている。また、そのように、おすすめの番組を提供し続ける方法を見つけ出すことは、読者が日々抱えている問題の解決につながる。
プロダクトの育て方
このニュースレターは、まだはじまってから数週間だが、グッドリッジ氏によると、これはすでにウォッチングにとってだけではなく、そのほかのタイムズ・ベータ(Times Beta)のサービスにとっても、ひとつの雛形となりつつあるという。
「『ゲーム・オブ・スローンズ』(のニュースレター)のオーディエンスが、ウォッチングとどのように関わっているかを見るのは素晴らしいことだ」と、彼女は語る。「これは、『ポップアップ商品をどのように作り、ベータの商品に適用すべきか?』という問題を考えるときには、私たちが取るべき戦略のひとつとなり得る」。
課題は、それを誠意を持って続けていくことだ。今シーズンの「ゲーム・オブ・スローンズ」はあと数週間で終了し、2018年に放映される完結編、シーズン6の公開までは休止する予定だ。クルーズ氏、グッドリッジ氏はともに、それまでのあいだは、新しく獲得した購読者に対してスパムメールのようなものを送りつけるつもりはないという。
「読者にはある約束をした」と、クルーズ氏は語る。「読者の信用を裏切るようなことはしたくないのだ」。