この10カ月ほどニューヨーク・タイムズは、ヘッドラインのA/Bテストを行ってきた。文字通り、記事タイトルを複数作成し、パフォーマンスを比較してきたのだ。その結果、オーディエンスをより細かいセグメントに分けることにしたという。
この10カ月ほどニューヨーク・タイムズは、ヘッドラインのA/Bテストを行ってきた。
文字通り、記事タイトルを複数作成し、それらのパフォーマンスを比較してきたのだ。その結果、オーディエンスをより細かいセグメントに分けることにしたという。
A/Bテストの実例
2月の第3週に掲載された、航空会社が飛行機の座席モニターを廃止しつつあるという記事。それにもふたつの異なる記事タイトルが準備された。
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片方は「皆さんがコレ(ニュースを表示しているデバイスのこと)を見るようになったので、航空会社はモニターを廃止へ(左)」、もうひとつは「皆さんがデバイスを見るようになったので、航空会社はモニターを廃止へ(右)」となっている。左の記事タイトルが、まさにデバイスで読んでいるリーダーを想定して付けられているのだ。
ニューヨーク・タイムズのシニア・エディターであるマーク・ブーリック氏は、「可能な範囲で、今後はこういったテストを重ねていきたい」と語る。同氏はこのヘッドラインテストの運営リーダーだ。
ヘッドライン最適化の背景
この実験は、2016年4月に開始された同紙のプロジェクトの一環だ。これによって、モバイル上でのクリック率は26%向上したという。こうした動きは過去数年において、デジタルメディアのスタンダードな運営プロセスのひとつとなっている。
パブリッシャーにとってヘッドラインは常に重要であった。しかし、ヘッドラインでテストを行うことにエネルギーが割かれるようになったのは、ソーシャルメディアをトラフィック流入先として頼るようになってからだ。ヘッドラインひとつで、トラフィック流入量が劇的に変化するのだ。
そのため、大小関係なくパブリッシャーたちがヘッドラインの最適化を試みているのは、ソーシャルメディアや彼らのオウンドメディア、所有するタイトルに限った話ではない。タブーラ(Taboola)といったサードパーティ企業によるウィジェットにおいても同様の試みが行われている。
今回の試みの特異性
とはいえ、デバイスごとに最適化を行うのは、まだ珍しい。モバイルアプリにおいて、異なるヘッドラインを利用することは、いくつかのパブリッシャーが試してきたものの、デスクトップとは異なるヘッドラインをモバイルリーダーに提供しているところは少ない。またニュースレターとのヘッドライン差別化も少ない。
だが、その重要度は増してきている。こういったレベルでのリーダーデータに突っ込んでいくのは、専用のアナリティクスと作業に割くリソースが必要になるため、ほとんどのパブリッシャーが二の足を踏んでいるわけだ。
しかし、今後コンテンツのパーソナライゼーションにパブリッシャーたちがより真剣に取り組むに従って、こういったディテールに汗水垂らして取り組んでいくことが必要になる。コンセプト自体に興味を持っているパブリッシャーは多いものの、ちゃんとしたデータ、そしてそれに取り組むにあたり、明確なインセンティブをもっているところは少ない。
最適化が記事タイトルによる「釣り」へと繋がるといった誤解が消えつつあるいま、より多くのパブリッシャーと編集室が、少しずつこういった問題を把握していっている段階だ。
Max Willens(原文 / 訳:塚本 紺)
Photo by John Vandenberg (Creative Commons)