ニューヨーク・タイムズは2015年、デジタル購読者数100万人の大台を達成した。かつては不可能だと指摘した人が多かった目標だ。となると、次なる目標は何になるのだろうか。実は同社は、デジタル版の売上(2014年の4億ドル=約480億円)を、2020年までに8億ドル(約960億円)へと倍増させるという大胆な目標を設定している。
ニューヨーク・タイムズの経営側と編集側の幹部10名が署名した11ページの文書「Our Path Forward」には、「目標達成のために、購読者売上モデルと広告売上モデル両方の基盤となる、積極的なデジタル版読者の数を2倍以上に増やさなければならない」と書かれている。「デジタル版の売上を倍増」というと、目立つことだけを狙った高すぎる目標のような響きがあるかもしれないが、具体的な内容を見れば十分に実行可能なものだとわかると、同紙のウォッチャーたちは言う。
ニューヨーク・タイムズは2015年、デジタル購読者数100万人の大台を達成した。かつては不可能だと指摘した人が多かった目標だ。となると、次なる目標は何になるのだろうか。実は同社は、デジタル版の売上(2014年の4億ドル=約480億円)を、2020年までに8億ドル(約960億円)へと倍増させるという大胆な目標を設定している。
ニューヨーク・タイムズの経営側と編集側の幹部10名が署名した11ページの文書「Our Path Forward」には、「目標達成のために、購読者売上モデルと広告売上モデル両方の基盤となる、積極的なデジタル版読者の数を2倍以上に増やさなければならない」と書かれている。「デジタル版の売上を倍増」というと、目立つことだけを狙った高すぎる目標のような響きがあるかもしれないが、具体的な内容を見れば十分に実行可能なものだとわかると、同紙のウォッチャーたちは言う。
「通常のビジネスにすぎない」と語るのは、メディア企業にデジタル戦略の助言を提供する企業エンピリカルメディア(Empirical Media)でマネージング・ディレクターを務めるスティーブ・ゴールドバーグ氏だ。「業界全体と同じスピードで成長すればよいのだ。それより少し遅くてもいい。問題なく達成可能な目標だ」。
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ニューヨーク・タイムズは「デジタル売上の倍増」という目標をどのように達成するつもりなのか。ロードマップはこうだ。
同紙のデジタル売上の内訳は、大雑把にいえば、広告売上と、デジタル版購読料が同程度。ニューソノミクス(Newsonomics)社のメディアアナリストであるケン・ドクター氏によれば、目標となる2020年までの5年間、着実に成長していくと仮定すると、必要なデジタル売上の年平均成長率は12.5%となる。これは、ニューヨーク・タイムズの両収入源の現在の成長率に近い。第2四半期、デジタル広告の売上は前年比で14%、デジタル版読者からの売上は13.8%の成長だった。
内訳は次のようになる。
デジタル版の購読料
ニューヨーク・タイムズは業界で唯一、デジタル版の有料購読者100万人を集めることが達成できている。ただし現在は、デジタル版読者のごく一部(12%)が、デジタル版の売上の90%をもたらしている。このビジネスモデルは、有料購読者を増やし続けられるかどうかにかかっているのだ。
有料購読者は、直接の収入源になるのに加えて、熱心で頻繁に再訪する読者ベースを形成して広告の販売につながるという、2重の恩恵がある。ニューヨーク・タイムズは、海外市場に対しては各国に特化したアプローチを試しており、購読者ベースの13%を海外市場の読者が占めている。より若い読者層、国際的なオーディエンス、および新しい製品を材料に、年間10%成長し、購読者ベースを2億ドル拡大することは可能だ、とゴールドバーグ氏は言う。
また、新聞社はプリント版事業の現在進行形の衰退については語りたがらないものだが、ニューヨーク・タイムズには「デジタル版のみの契約」に切り替えるかもしれないプリント版の購読者が多く、デジタル版購読者は今後も増加していく可能性がある、とゴールドバーグ氏は指摘している。
広告からの収入
PwCの予測によると、世界のデジタル広告は、全体で見れば、2019年まで平均12.1%の成長が続くが、この市場はFacebookとGoogleに牛耳られている。ニューヨーク・タイムズが遅れを取らずについていくには、特にネイティブ広告とモバイル広告の分野で懸命に競うことが必要だ。ニューヨーク・タイムズでは現在、ネイティブ広告キャンペーンの質が、多くの広告主によい印象を残している。また、同社は海外展開も積極的で、7月には広告部門のコンテンツスタジオ「T Brand Studio」の支店をロンドンに開設した。
モバイルは現在、ニューヨーク・タイムズの売上全体の10%を超えるくらいだが、マネタイゼーションでは大きな違いがあり、デジタルオーディエンスはデスクトップよりモバイルのほうが多い。今後思いがけない成長を遂げる可能性がある領域があるとすれば、それはモバイル分野の広告だ。
その他のサービス
ニューヨーク・タイムズは、ニッチな分野やプレミアムな分野における別の有料製品の提案については苦戦してきた。たとえば、レシピサービス「Cooking」はまだ無料だし、ニュースのサマライズを配信する「NYT Now」アプリは、有料だったものが無料になった。ニュース分析・オピニオンを配信する「Times Insider」は、新機能とともに再開した。
しかし、広告と有料購読者からの売上が十分でない場合は、第3の選択肢として(おそらくこの選択肢がもっとも難しいだろうが)、もともと専門としている分野や、提携や買収で専門知識を得た分野でサービスを展開し、読者に課金する方法を模索することになる、とニューソノミクスのドクター氏は語っている。
Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)
Photo by Jleon (CreativeCommons)