サブスクに踏み込む大手メディア、「新役職」が続々誕生

ストリーミング動画プラットフォーム上で時間を過ごすテレビ視聴者が増えるにつれ、大手メディア企業はどこも、独自のサブスクリプション制ストリーミングサービス、すなわち、彼らが「消費者直結型」製品と呼んでいるものの確立に真剣に取り組みはじめている。それによって、歴史的に消費者にサブスクリプション制サービスを販売してこなかった企業で、新しい管理職の役割や責任が生み出されることとなった。

ポートフォリオにディスカバリーチャンネル(Discovery Channel)やフードネットワーク(Food Network)、ユーロスポーツ(Eurosports)を含むディスカバリー(Discovery)を例にとってみよう。ディスカバリーは2018年8月6日(米国時間)、同社初のグローバル直販製品担当CEOとしてAmazon元幹部のピーター・ファリシー氏を雇用したと発表した。ファリシー氏の職責は、米国のゴー(Go)ブランドの「ティーヴィー・エブリウェア(TV Everywhere)」アプリや、ユーロスポーツやモーター・トレンド(Motor Trend)のようなメディアブランドのサブスクリプション製品、ディスカバリーとPGAツアーの新しいゴルフストリーミングサービスなど、ディスカバリーのストリーミングアプリの拡大だ。

ディズニーは2018年3月、組織再編の一環として、同社の元最高戦略責任者(CTO)ケビン・メイヤー氏が率いる新部門ダイレクト・トゥー・コンシューマー・アンド・インターナショナル(Direct-to-Consumer and International:以下、DTCI)を作った。DTCIユニットは、4月に開始したスポーツ専門ストリーミングサービスESPN+と、今後開始されるディズニーブランドのエンターテイメント系ストリーミングサービスに関する責任を負う(ディズニーはつい先日、同サービスのコンテンツならびに番組戦略を監督する役目に長年マーケティング部門の幹部を務めてきたリッキー・ストラウス氏を指名している)。

新しい役職の目的

これらの新しい役割では、巨大企業内の他の部門や部署との共同作業が必要になる。たとえばファリシー氏は、ディスカバリー・ネットワーク・インターナショナル(Discovery Networks International)と協力して、「ユーロスポーツ・プレイヤー(Eurosport Player)」のような同社のアプリを米国外へ広めていくための仕事をすることになる。

ESPN+の責任はいくつかの部署に分散されている。ESPNのコンテンツ担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるコナー・シェル氏と、オリジナルコンテンツのニュース収集およびデジタルメディア担当シニアバイスプレジデントのロブ・キング氏がサービス向けにオリジナル番組を制作するグループを監督する。ESPNのプログラミングおよびスケジューリング担当エグゼクティブバイスプレジデントのバーク・マグナス氏とデジタルメディアプログラミング担当バイスプレジデントのジョン・ラスカー氏は、ライブスポーツと番組の獲得の責任を負う。そして、ESPNのCTO、アーロン・ラバージ氏と彼のグループがESPN+の製品およびテクノロジー開発を受け持つ(ラバージ氏のチームは、DTCI部門に属するディズニーのBAMTechの動画技術ユニットとも一緒に仕事をする)。

これらのサブスクリプション制サービスが大手メディア企業で重要性を増すなかで、そうした企業ははじめて、お金を払っている顧客と直接関係を築き維持することについて考えなければならなくなった。

分析能力を持つ人材

コンサルティング会社TVレブ(TVRev)のリードアナリストであるアラン・ウォルク氏はこう語る。「歴史的に見て、それは彼らが得意とすることではない。彼らは、ある意味、特定の番組にチャンネルを合わせてもらうために『直販』に進まざるを得ないだろうが、そうした企業はほとんどの場合、(ケーブルテレビ局や衛星テレビに)彼らの番組を流させることに焦点を絞らなければならず、これが大きな契約になることはなかった。ディスカバリーやABCやESPNは、すでに人々が本当に欲しているチャンネルのひとつだからだ。彼らはいま、自身の力で購読者を見つけなければならない」。

A+Eネットワークス(A+E Networks)のインターナショナルおよびデジタルメディア担当プレジデントのショーン・コーハン氏は、「ライフタイム・ムービー・クラブ(Lifetime Movie Club)」と「ヒストリー・ボールト(History Vault)」というふたつのニッチなストリーミングアプリを監督している。これらのアプリのローンチに際し、A+Eネットワークスではフルタイムの従業員と、サブスクリプションビジネスの経験を持つコンサルタントを雇ったと、コーハン氏はいう。

「顧客の維持、あるいは生涯価値について考えるかどうか、これらは、サブスクリプションや直販製品に関して敏感に理解する必要がある種類の事柄だ。我が社には優れた分析能力を持つ人材が社内にいるが、社外にも出て、我々にないスキルセットを有する人々を見つけてきた」と、コーハン氏は語る。

大手企業たちのやり方

大手メディア企業には間違いなく、そうしたサービスを確立するのに必要な才能を確保するためのリソースはある。そして、彼らの多くは、この分野への新規参入者ではない。ディスカバリーのユーロスポーツ・プレイヤーは、2018年春の時点で150万人の購読者がいて、市場である程度の存在感を示している。ESPNも同様に、「ESPNインサイダー(ESPN Insider)」でサブスクリプション製品の素地を持っている。

CBSのように伝統あるメディア企業を確立しているメディア界の巨人は、組織インフラも技術インフラも独自で作り上げることができ、自社の動画ストリーミング技術を利用して新しいOTT(オーバーザトップ)ビジネスをサポートしている。

CBSは直近の四半期決算の収支報告で、OTTサービスである「CBSオールアクセス(CBS All Access)」と「ショータイム(Showtime)」の購読者数が、予定より1年早く2019年末までに800万人に達しそうだと述べた。そしてCBSオールアクセスの購読者の3分の1が、広告なしのオプションを選んでいて、これがCBSにとっての新たな収入になっている。

「(CBSオールアクセスの)成長に驚いている人もいるだろうが、我々はそうではない」と、CBSインタラクティブ(CBS Interactive)の最高経営責任者(CEO)、ジム・ランゾーン氏は述べる。「我々にはこれを重要かつ利益につながる製品にする合理的なプランがあった」。

Sahil Patel(原文 / 訳:ガリレオ)