コンデナスト(Condé Nast)の高級インテリア誌「アーキテクチュラル・ダイジェスト(Architectural Digest)」は、ミレニアル世代を対象とした新しいサイトをローンチした。独自のデザイン性高いスタイルを踏襲しつつ、若者向けにより手頃な価格で楽しめるインテリアやライフスタイル情報を提供する。
コンデナスト(Condé Nast)の高級インテリア誌「アーキテクチュラル・ダイジェスト(Architectural Digest)」は、より幅広い年齢層を狙っていくようだ。同誌の読者の平均年齢は53歳。にもかかわらず、コンデナストは、18歳から34歳の若年層向けのサイト「クレバー(Clever)」をローンチしたことを発表した。
クレバーは、アーキテクチュラル・ダイジェストの洗練されたトーンを残しつつ、より親しみやすいデザインとなっている。ターゲット層のライフスタイルに合うように、ひとり暮らし向けのコーディネートやDIYなどのトピックを取り上げる。高級インテリアを扱うアーキテクチュラル・ダイジェストとは異なり、学生や若手ビジネスパーソン向けに、より手頃な価格のインテリアを紹介していく。
クレバーの発案者は、2016年5月にアーキテクチュラル・ダイジェストの責任者となったエイミー・アストリー氏。同氏は若者向けファッション誌「ティーン・ボーグ(Teen Vogue)」の元編集長だ。同氏は、クレバーを手がけるにあたり、「限られた予算内で部屋をデザイン」という内容の記事がどれだけ読まれるかを試してみた上で、読者のリーチを広げるようにコンデナストに提案した。その結果、アーキテクチュラル・ダイジェストを訪れるミレニアル世代が759%も増えたいう。
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新たな読者層にリーチを
「昨夏からアーキテクチュラル・ダイジェストを担当することになったとき、まず考えたのは、すべてのオーディエンスにとって唯一無二の住まい情報提供者でありたいということだ」と同氏は語った。「我々は、リーチできる大勢の一般層を置き去りにしていた。クレバーは、新たな読者層にふさわしいサイトでありたい、という想いから生まれた」。
クレバーは、アーキテクチュラル・ダイジェストとは独立して運営されている。現在、3名の編集者がサイトのコンテンツ、動画、ソーシャルメディアの責任者となっている。アーキテクチュラル・ダイジェストのデジタル部門のエグゼクティブディレクターを務めるキース・ポラック氏は、クレバーの使命のひとつは「デザインの民主化」だと述べた。そのため、大学を卒業してひとり暮らしをはじめる若者やはじめて家を購入するカップルなど、人生の重大な転機を迎える読者を対象にしていくという。
このミッションを達成するため、クレバーはルームメイトとの共同生活や請負業者の対応方法など、生活にかかわるアドバイスも掲載していく。「生活、青春時代、そして人生の門出にまつわるすべての会話が網羅される」とポラック氏は語った。
また、同氏は「ソーシャルメディアが要となる」と指摘。クレバーはまもなく、ソーシャル向け投稿を優先とした動画シリーズをスタートさせる。インテリアデザイナーのネイト・バーカス、またジェシカ・アルバやソフィア・ブッシュといったセレブを招き、アパートの改装やリノベーションを特集する予定だ。クレバー独自のソーシャルチャネルに加え、アーキテクチュラル・ダイジェストもまたSNSアカウントや、紙媒体およびデジタル版での広告掲載を通じ、読者をクレバーへと誘導する。
ハイ・ロー・コラボレーション
アストリー氏は、クレバーはもちろんアーキテクチュラル・ダイジェストの宣伝目的で展開するわけではないが、クレバーによってアーキテクチュラル・ダイジェストの広告主の幅を広げることになるのは間違いないだろう。これまで同誌で取り扱ってきた高級ブランドだけではなく、より低価格の商品を展開するCB2、ローズ(Lowes)、ポタリー・バーン(Pottery Barn)といったブランドも新たな対象となりそうだ。
アストリー氏によると、クレバーはミレニアル世代をターゲットとしているものの、幅広い世代や所得水準の読者に対してスタイルのヒントや買い物のアイデアが詰まったサイトになると語った。
「クレバーは、節約志向でもスタイリッシュな生活をしたい読者のためのサイトであり、若年層だけでなく、誰でも対象となり得る」と彼女は語る。同様に、「アーキテクチュラル・ダイジェストは、デザイン志向が高い目の肥えた読者向けであり、それもまた誰でも対象となる」。
アーキテクチュラル・ダイジェストのチーフビジネスオフィサーであるジュリオ・カプア氏は、クレバーは高級なデザインを大衆向けに提供するという「ハイ・ロー・コラボレーション」の流れに乗ったものでもある、と語った。将来のアーキテクチュラル・ダイジェスト読者を確保するための足掛かりとなることが、クレバーの長期的な目標だという。
「デザインはどこからでも創造される。米大手量販店ターゲット(Target)がよりアプローチしやすい有名ブランドデザイナーを取り込んだことから、デザインがより身近なものになった」とカプア氏は言う。「いまはスマートフォンを使って、世界中の美術館などからデザインや芸術を見ることができる。良いデザインとはどういうものか、読者は若いうちから触れているのだ。感受性が精錬されている」。
熱狂的な読者を構築するために
アーキテクチュラル・ダイジェストでは、現在の読者層を維持するために、今年はじめに配信開始したニュースレター「ADプロ(AD Pro)」を引き続き推進していく。このニュースレターは同誌を業界専門誌として、日々の情報収集のために愛読するデザイン専門家を対象としている。アストリー氏はAD Proによってデザイン性を重視した同誌の地位を確固たるものにしつつ、クレバーを通じて読者層を広げていくと述べた。
「我々は、デザインに対して熱狂的な読者層を構築したい」とアストリー氏は語る。「スタイリッシュな生活をしたいと思っている人は大勢いる。そして、人々は以前よりはるかに洗練されている。そんな人たちに読まれるメディアでありたい」。