「 Facebookファースト」からの脱却で、再浮上するATTN :「甘い考えは一度も持ったことはない」

Facebookフィードで痛い目にあったパブリッシャーは後を絶たない。リトルシングズ(LittleThings)マイク(Mic)クッキングパンダ(Cooking Panda)などが例として挙げられる。ソーシャルニュースのパブリッシャーとして設立4年目を迎えるATTNは、かつてFacebookで月間2億5000万という動画再生数を誇っていた。そんな同社にとって2018年は、臨機応変な対応と事業の多角化を進める1年となった。

3700万ドル(約41億円)のベンチャー投資を受けている同社はいま、ブランド向けのコンテンツ制作を増やし、自社のコンテンツ配信を減らしつつある。ATTNがいま積極的に取り組んでいるのがテレビ番組用のデジタルコンテンツだ。同社は2019年、自らのテレビ番組の獲得を目指しており、政治とアドボカシー広告という小規模な分野で中心的な存在になろうと目論んでいる。この分野では、テレビからデジタルチャンネルへと予算の流入が続いているからだ。同社は収益基盤であるソーシャルメディアにおける字幕付きの短尺動画から脱却しているわけではないが、2017年頃と比べると「Facebookファースト」な姿勢から変化が生じているのも確かとなっている。

この過程で、ATTNはマーケティングサービス分野に積極的に乗り出した。利益率が低く競争も激化している分野だが、その進捗は順調なようだ。同社は非公開評価で、昨年9月にシリーズCで1500万ドル(約16億円)の資金を調達。そして共同創設者のマシュー・シーガル氏によると、2018年の収益は「2倍以上に伸び」ており、「間もなく」採算がとれるようになる見込みだという。同氏は、収益についての具体的な数値は明かしていない。

シーガル氏は「この会社を立ち上げてから、当社の分野と完全に一致するソーシャルプラットフォームがあるなどという甘い考えは一度も持ったことはない」と語る。

Facebookに対する姿勢

ほかのFacebookパブリッシャーの大半と同様、ATTNのニュースフィード動画も昨年大幅に再生数を減らしている。クラウドタングル(CrowdTangle)のデータによると、2018年4月に2500万の閲覧数を誇っていた同社のメインページも2018年12月には500万にまで落ち込んでいる。ただしATTNの3月および4月のFacebookの閲覧数については、ブランドトータル(BrandTotal)のデータによると、そのインプレッションの24%がペイドメディアによるものとなっている。「Attn:Video」や「Attn:Life」といったATTNが所有するほかのFacebookページからの閲覧数には、ほぼ変化はなかった。

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大規模なATTNアカウントで、過去12カ月間に再生されたFacebook動画(出典:クラウドタングル)

インサイダー(Insider)マイクと同様、ATTNも掲載する動画数を減らして各動画の尺を長くしている。チューブラー・ラボ(Tubular Labs)によると、過去3カ月でATTNがソーシャルプラットフォームにアップロードした動画数は昨年の3月から5月と比べて16%減の766となっている。TVRevのメディアアナリストであるジョン・カッシーロ氏は、ATTNが最近アップロードした動画は、再生時間が1〜5分となっていると指摘。昨年春ごろには、ATTNの動画の75%は2分以内に収まるものだった。

ATTNはFacebookから撤退したわけではない。同社はFacebook Watch(ウォッチ)に4つの番組を抱えている。ズーイー・デシャネル氏主演の食事番組「あなたの食事のルーツ(Your Food’s Roots)」や「アンディバイデッド(Undivided)」などで、これはFacebookが昨年Facebook Watchの開始にあたりパブリッシャー各社に金銭を支払って作成を依頼した番組にあたる。またATTNは、前バイスプレジデントのジョー・バイデン氏が司会を務める番組をはじめ、Facebookの保有するインスタグラム(Instagram)のIGTVに専用コンテンツを提供している数少ないパブリッシャーのひとつだ。

ブランド向けの制作仕事

さらに同社はブランデッドコンテンツの制作においても優れた手腕を発揮しつづけている。調査会社のブランドテイル(Brandtale)によると、同社がFacebook向けに制作したアディダス(Adidas)の動画は、Facebookのブランデッドコンテンツとして2018年で2番目に多い再生数を誇っている。同社は最近、ダック・プレスコット氏が主演のビーツ・バイ・ドクター・ドレ(Beats by Dre)のヘッドホンに関する動画を制作しており、4万3000件のシェアを達成している。

また2018年1月にはATTNがFacebookで配信している番組「アメリカ・バーサス(America Versus)」について、パラマウントテレビジョン(Paramount Television)と提携して、従来型のテレビ番組放送を行うと発表している。シーガル氏は同番組について製作中であり、オンエア日時は未定だが、ほかにも複数の番組が製作中とされている。ATTNはケーブルテレビ番組のフリーフォーム(Freeform)向けにいくつかのドキュメンタリー番組も提供したほか、テレビ企業とより親密な関係を築くため、「グロウニッシュ(Grown-ish)」や「グッド・トラブル(Good Trouble)」といったテレビ番組のアフターショーの制作も手がけている。

ATTNはさらにブランドの動画コンテンツ制作も行っており、広報担当によると昨年同社が制作したブランデッドコンテンツの「およそ4割」についてATTN自身は配信に携わっていないとのことだ。同広報担当によると、2017年には同社は制作したブランデッドコンテンツの9割を配信していたという。

政治とアドボカシー広告

シーガル氏はさらに、政治団体やNPOといった理念を掲げる組織との提携を進めていきたいと語っている。

だが、こうした広告主との提携への道のりは長い。進歩主義的な理念と政治を掲げるデジタル広告エージェンシーのマザーシップ・ストラテジーズ(Mothership Strategies)で代表を務めるアンディ・アムスラー氏は、2018年に120のキャンペーンを実施したが、ATTNは一度も投資候補に挙がらなかったと語っている。

米民主党のコンサルタントでタルボット・デジタル(Talbot Digital)の創設者であるクリス・タルボット氏は、NPOや政治団体、政治家候補はこうした分野への投資に大きく遅れをとる傾向があると指摘し、次のように述べた。

「人目を引く広告が注目を浴びるようになりつつあるが、消費者市場とは比べ物にならないほど遅れている」。

Max Willens(原文 / 訳:SI Japan)