英・MTV 、Facebook Watchでクイズ番組を提供開始

英国で、Facebook Watchからコミッションを得る形でクイズ番組の配信をはじめるメディアオーナーが増えている。その最新の例がMTVだ。

MTVは、「MTVスタックス(MTV Stax)」と呼ばれる番組を2月18日から開始した。撮影はロンドンにあるMTVのスタジオで行われており、今後10週間にわたって週に3回ライブ配信される。番組のホストを務めるのは、ティネア・テイラー氏やタイラー・ウェスト氏といったMTVのニュースプレゼンターだ。番組の参加者は、1000ポンド(約14万4000円)の賞金を賭けて10の問題にチャレンジする。出題されるクイズは、エンターテイメントや音楽の一般的な知識を問うものや、音楽界で話題のニュースに関するものが中心だ。

視聴者参加型のクイズ番組は、Facebook Watchでますます人気の高い番組フォーマットとなっている。2月初旬には、英国のメディア企業グローバル(Global)が所有するラジオ局のハート(Heart)も、Facebook Watchからコミッションを受け取って「ハーツ・トリプルプレイ(Heart’s Triple Play)」というクイズ番組をはじめると発表した。2018年7月には、Facebook自体が独自のゲーム番組「コンフェティ(Confetti)」を米国で開始し、メキシコ、タイ、フィリピン、ベトナムで各国版の番組を展開している。11月には、英国でもコンフェティの配信を開始した。

MTVのWatch戦略

「人々はクイズ番組が大好きだし、お金を稼ぐのも大好きだ」と、MTVのデジタル担当副社長、ジョアンナ・ウェルズ氏はいう。「これは新しい取り組みだ。我々はデータを注視しながら必要な調整を行っていく。できる限り迅速に対応するつもりだ。ハートと我々(MTV)はオーディエンスが大きく異なっており、我々はそのことを常に意識している」。

MTVは、2018年11月にFacebookからクイズ番組の配信を提案され、この2週間はゲーム番組の配信テストを社内で行っていた。ウェルズ氏によれば、番組の立ち上げに関わったのは10〜20人で、制作の進行状況に応じて、法務担当者、デザイナー、プロデューサーなどさまざまな人が参加したという。

MTV UKとMTV Music UKのFacebookアカウントは、500万人のフォロワーを抱えている。この2つのアカウントが各ページで「MTVスタックス」のライブ配信をシェアするが、「MTVスタックス」自体は独自のページ上で一から制作しなければならない。このような番組が一夜にして成功するわけがないことは、ウェルズ氏も承知している。初回の番組に参加したユーザーは数百人に過ぎず、この数が増えるまでには時間がかかるだろう。他社と比べると、ハートの番組は1エピソードあたり2万5000〜3万ビューを獲得している。英国版のコンフェティは、1エピソードあたり1万5000〜3万5000人の視聴者数を記録しているが、これはライブ配信を見た人の数ではなく、そのあとに番組を見た視聴者も含まれた数だ。

Facebookの狙い

ユーザー参加型のゲーム番組は、Facebookにとって大いに意味のある取り組みといえる。より多くの人が自社のプラットフォームにとどまるようにすることが、Facebookの狙いだからだ。Facebook Watchの各ページでコミュニティが期待どおりに成長すれば、ページへのアクセスやそのページでのユーザーの活動が増えることになる。

Facebook Watchの海外展開はなかなか進んでいないのが現状だ。英国のように、Facebookがコミッションを支払ってWatch向けの番組制作を依頼するのは珍しい。米国では、Facebookページのオーディエンスの規模が英国より大きいため、ユーザー参加型の番組をWatchでテストするのは比較的簡単なのだ。そのため、Watchでユーザーが参加できる機能を開発したり、テストしたりするうえで、米国の企業はFacebookにとって手頃なパートナーとなっている。英国では、バークロフト・スタジオ(Barcroft Studios)の「モースト・インクレディブル・ホームズ(Most Incredible Homes)」のような番組がコミッションベースで制作されている。これは視聴者が自分のお気に入りの物件に投票できるという番組で、多いときには16万人の視聴者を獲得した。

「コミュニティページへの投資が効果をもたらす場合には、コミュニティ的な要素がとても重要になる」と、MTVのウェルズ氏は付け加えた。

米・英で異なる事情

米国のMTVはFacebook Watchを、ビジネスを作り出す場所ではなく、ブランドや番組の重要なマーケティングツールと捉えている。この春には、米国、メキシコ、タイで「リアルワールド(Real World)」の新シリーズをWatchで配信する(制作はバニム/マレー・プロダクションズ[Bunim/Murray Productions])が、これは大勢のファンを持つ著名なクリエイターを起用して番組を作るという、MTVのより広範な取り組みの一環だ。英国のMTVは、Facebookでさらに4つの短編シリーズを配信するほか、今後1年間で12の番組を制作したいと考えている。ただし、これらの番組はWatchの独占配信ではない。

Facebookは、米国でFacebook Watchの番組に参加するユーザーを増やすため、一定の活動的なオーディエンスを連れてきてくれるインフルエンサーを起用した番組に資金を提供する予定だ。英国では、ロンドンで先週開催された「ビドコン(VidCon)」でインフルエンサーにアプローチするため、自己啓発の第一人者であるジェイ・シェティ氏の講演会を開催し、同氏が2018年にFacebookの広告収入で100万ドル以上を稼いだ話をしてもらった。

英国のメディアオーナーは、Facebookが資金を提供するプロジェクトでFacebookと提携する機会がそれほど多くない。そのため、Facebookの気まぐれな報酬システムへの依存度は高くないのが普通だ。Facebookは2018年11月、メディア企業マイク(Mic)とのFacebook Watchの契約を更新せず、マイクの重要な収入源を断ち切った。パブリッシャーにとって、自社が抱える問題をFacebookのせいにするのは簡単だ。

「全員が前向きに」

「この1年間、多くのパブリッシャーがFacebookに多少の警戒感を抱いてきた」と、グローバルのデジタル担当ディレクター、ジェイムズ・ヒックマン氏はいう。だが、「今回はFacebookと非常にオープンで自然な対話ができており、我々全員がとても前向きな気持ちになっている」と、同氏は語った。

ウェルズ氏もこの意見に同意する。「今後も(Facebookに)頼ることはないだろう。我々は10週間かけて自分たちの居場所を作り出すつもりだ。ただし、この取り組みは賢明に行っていく。自分たちの行き先と費やしている時間に常に注意を払い、必要に応じて規模を拡大できるようにする」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)