2015年に発足したニュースメディアパブリッシャーのモーニングブリューは、今年2月7日、有料会員が100万人を突破したと発表。同社は今後、エマージングテクノロジーやマーケティング・広告など、業界に特化したバーティカルニュースレターの発行を予定している。
ニュースメディアパブリッシャーのモーニングブリュー(Morning Brew)は昨年、ビジネスを大きく躍進させた。願わくば、2019年もこの勢いを維持したいと、同社は考えている。
2015年に発足したモーニングブリューは、今年2月7日、有料会員が100万人を突破したと発表。同社は今後、エマージングテクノロジーやマーケティング・広告など、業界に特化したバーティカルニュースレターの発行を予定している。これら分野別ニュースレターのうち、2つは今年第1四半期のうちにスタートし、ユーザーの反応次第で、今年中に最大8つにまで増やす見込みだと、共同創業者のオースティン・リーフ氏は語る。
こうした節目を迎えたことで、モーニングブリューにとって2019年は、より財政的に健全な年になりそうだ。同社は、ミレニアル層に金融・ビジネスニュースを届けるメインニュースレターのオーディエンスを、今年末までに225万人に増やすつもりだ。また、分野別ニュースレターについても、ゆくゆくは数十万人規模のオーディエンスを目指しており、1つか2つについては年内にも達成の可能性があると考えている。
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現在すでに「かなりの利益をあげている」というモーニングブリューだが、今年はさらに売上を2倍以上に伸ばす計画だと、リーフ氏はいう。2018年の同社の売上は300万ドル(約3.3億円)だった。同社は現在、11人のフルタイム社員を抱えている。
ニュースレターは最先端のデジタルプロダクトとはいえないだろうが、デジタルメディア業界きっての成功事例の数々を支えた。例えばAXIOS(アクシオス)は、eメールのニュースレターをコアビジネスに据え、2400万ドル(約26.5億円)の売上と損益分岐の達成を発表。また、インダストリードライブ(Industry Drive)のCEO、ショーン・グリフィー氏は、昨年10月米DIGIDAYのポッドキャストに出演した際、同社の業界ニュースレターネットワークが2200万ドル(約24.3億万円)の売上と堅実な利益をあげていると述べた。
2018年に会員が大幅増
2018年、モーニングブリューの有料会員数は大きく増加した。3年前にミシガン大学で発足した同サービスの会員は、2018年4月の時点では18万人だった。それが同年11月までに70万人に膨れ上がったのだ。
成長を支えたのは口コミだとリーフ氏はいうが、モーニングブリューは効果が実証されたマーケティング戦略も活用している。たとえば、同社は2018年にはじめて、類似のオーディエンスをもつ別のニュースレターとの相互プロモーションパートナーシップを結んだ。提携先はCBインサイツ(CB Insights)や、エンジェル投資家デイブ・ペル氏が執筆するネクストドラフト(Next Draft)などだ。
また、ハッスル(The Hustle)やスキム(theSkimm)などの好調なニュースレターと同様、モーニングブリューも紹介制度を利用して新規読者を獲得した。5万人以上の会員が、少なくとも3人の新規会員を紹介したと、リーフ氏は語る。
メール開封率は約40%
こうした戦略によって、モーニングブリューの読者層の質が下がることはなかった。メールチンプ(Mailchimp)のデータによれば、同社のデイリーニュースレターの開封率は約40%を誇る。メディアニュースレターとしては高い値だ。
会員の増加と高い開封率が、多くの新規広告主を惹きつけた。2018年に入った時点では、モーニングブリューと提携実績のある広告主はわずか4社だったと、共同創業者のアレックス・リーバーマン氏はいう。それがいまでは、50社以上と活発な提携関係を結んでおり、JPモルガン(JPMorgam)やフィデリティ(Fidelity)などの金融・銀行系から、キャスパー(Casper)やオールバーズ(Allbirds)などの消費者ブランドまで多岐にわたる。
スポンサーはニュースレターに掲載されるネイティブ広告を購入する。執筆はモーニングブリューのコピーライターが担当し、クライアントの承認を受けるという形式だ。現在、同社の広告売上は週に約20万ドル(約2200万円)。広報担当者によれば、同社の2019年上半期の広告在庫はすでに90%が販売済だ。リーフ氏は、売上の倍増を今年の目標に掲げるが、広告売上がこのままのペースで増えつづければ、それを上回る結果になるかもしれない。
理にかなったアプローチ
モーニングブリューのビジネスモデルは必然的にスリムだ。各バーティカルニュースレターは、それぞれ1人が執筆を担当する。
新たなプロダクトへの進出にはリスクもあるが、モーニングブリューの分野別ニュースレターは理にかなったアプローチだと、市場ウォッチャーはみている。「『すべてを網羅するひとつのニュースレター』をつくる努力をするよりも、異なる個性をもつ複数のプロダクトを開発した方がいい。説明しやすいし、別々のオーディエンスを直接広告主に売り込めるからだ」と、ポストアップ(PostUp)で製品・マーケティング担当シニアバイスプレジデントを務めるキース・シブソン氏はいう。「『ビジネスと金融に関心のあるミレニアル社会人』は売れるが、ありとあらゆる雑多なコンテンツを受け取っているオーディエンスでは、価値が下がる」。
モーニングブリューは、自力での成長を目指している。リーフ氏とリーバーマン氏は昨年、2019年にベンチャーキャピタルからの資金調達を行うことも検討したが、のちに断念した。「資金調達をしないことを絶対的なルールにしているわけではない。VC資本を利用した他のメディア企業が、急速に成長しすぎた例から学んだのだ」と、リーフ氏は話す。
地に足のついた成長
モーニングブリューは、将来的にメールボックスの外へとビジネスを拡大し、さらに多様なプロダクトやサービスを読者に提供することも検討している。しかし、それらは2019年のロードマップには含まれない。
「我々は地に足のついた、持続可能なビジネスの成長を目指している」と、リーフ氏は最後に述べた。
Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)