「船頭多くして船山に登る」:ブランデッド動画プロデューサーたちの新たな悩み

ブランデッド動画の制作を手掛ける、ある企業のプロデューサーによると、広告主たちは、以前のような対面での制作に戻ることに消極的なのだという。

スタジオ撮影やロケーション撮影が、関係者の健康と安全性を危険にさらすかもしれないという懸念から、一部のマーケターは従来の制作方法への回帰を控えている。このプロデューサーは、「広告主たちは、問題があった際の責任を回避するため、現場での撮影に及び腰になっている。そのため、我々はいまもリモート撮影を行っている。年末、さらには来年まで、この状況が続くと考えている」と話す。

また、広告主が現場撮影を認めているプロジェクトでも、リモート制作が部分的に取り入れられている。メディア企業やエージェンシー、制作スタジオは関係者の健康と安全を守るため、現場撮影に立ち会う人数を制限し、さらに、新型コロナウイルス感染症 コンプライアンス責任者の採用、撮影現場でのマスク着用、定期的なウイルス検査の義務化といった予防策を講じている。その結果、広告主企業の幹部などが、Zoomのようなビデオ会議プラットフォームで撮影をモニタリングするという状況が生まれている。

制作現場が混乱

クリエイティブエージェンシーのマスタッチ(Mustache)で、マネージングディレクターを務めるミーガン・モーズリー氏は、「クライアントはリモートでの動画制作を受け入れている。いまや、監督やプロデューサーが遠隔で参加することは珍しいことではない」と話す。

しかし皮肉なことに、現場撮影に立ち会う人数を制限すると、ブランデッド動画の制作が複雑になる場合がある。ブランデッド動画の制作を手掛ける別の企業のプロデューサーは、「『船頭多くして船山に登る』ような状況が生まれる」と話す。たとえば、CMOやプレジデントなど、通常であれば現場にいない広告主幹部が、リモートでモニターし、専門知識がないにもかかわらず、撮影を指揮しようとすることがある。

誤解のないようにいっておくと、ブランデッド動画の撮影では多くの場合、広告主の幹部陣が現場で撮影に立ち会う。ただし通常、彼らは離れた場所に座り、モニターで撮影の様子を確認する。撮影中、プロデューサーが広告主の幹部たちにフィードバックを求めることはあるが、プロデューサーは彼らに聞こえないところでタレントやスタッフと話すこともできる。しかし、プロデューサーが撮影にリモート参加する場合、そうした会話もZoomで行われる。すると、広告主の幹部たちが会話に割って入り、不要なコメントをしたり、制作方法について質問したり、必要なコミュニケーションを妨害したりといったことが起きやすくなる。

不要な心配をさせないために

料理メディア、フード52(Food52)の動画担当エグゼクティブプロデューサー、ガブリエラ・マンジーノ氏は「Zoomでプロデューサーが現場スタッフと話す必要があるとき、クライアントとスタッフの両方が話しはじめ、混線状態になる可能性が非常に高い」と述べている。

このような混乱を減らすため、一部のプロデューサーは撮影前に絵コンテや筋書きを見せ、撮影中も写真や動画を送ることで、広告主側のリモート参加を制限しようとしている。また、現場スタッフとはSlackでコミュニケーションを取るなど、別の通信ラインを用意しているプロデューサーもいる。

前出したマスタッチの場合、プロデューサーと現場スタッフ、プロデューサーとクライアント、それぞれにリモートチャンネルを用意している。「クライアントを会話から締め出すためではなく、むしろ彼らに不要な心配をさせないためだ」とモーズリー氏は説明する。さらに、携帯電話をトランシーバーに見立て、ディレクターがリモート参加で、アシスタントディレクターが現場にいる場合、両者が直接会話できるようにするという試みも始めている。

「これも通信ラインを分けるひとつの方法だ」。

原文:‘More chefs in the kitchen’: How branded video producers manage clients remotely monitoring shoots

TIM PETERSON(翻訳:米井香織/ガリレオ、編集:村上莞)