長尺動画 の 需要増、パブリッシャー悩ます「権利問題」:お金は先が得か、後が得か?

ミレニアル世代にフォーカスしたニュース・パブリッシャーのマイク(Mic)は、Facebook Watch(ウォッチ)限定の番組制作、番組ライセンシングを開始した。

初夏にプレミアとなった「マイク・ディスパッチ(Mic Dispatch)」は、1週間に2回配信されるFacebook Watch上のニュースマガジンだ。ニュース分野に力を入れているFacebookは、CNNからマイクに至るまで、さまざまなニュース団体に資金を提供し、日刊、週刊のFacebook Watch番組を制作させている。米DIGIDAYがこれまでも報じたように、これらの番組の多くは1年契約である。1月にはHulu(フールー)が3部作に分かれたドキュメンタリーを配信する。トピックは話題になったファイヤー・フェスティバル(Fyre Festival)のスキャンダルだ。ビルボード(Billboard)、シネマート(Cinemart)、そしてHuluと並んでマイクは、プロデューサーとして参加している。

マイクのコーリー・ハイク氏によると、Netflix(ネットフリックス)やAmazonといった、ほかの大手ストリーミング企業とも「積極的に会話」を続けているという。もちろん、トピックはマイクのジャーナリズムをベースにした新作プロジェクトについてだ。さらにマイク・プロダクションズ(Mic Productions)と呼ばれる5人スタッフから成るユニットも編成している。この5人にはハイク氏、マイクのCEOであるクリス・アルトチェック氏、そして戦略開発部門エグゼクティブ・バイスプレジデントであるシャーミー・ガンディ氏が含まれている。このチームは長期のプロジェクトをストリーミングプラットフォームやTVネットワークに開発・販売することを目的としている。

「パブリッシャーたちによる配信メディアの初期の段階ではありとあらゆる物をあらゆる場所でスプレーのようにばら撒く、というものだったのに対し、現在はオーディエンスにリーチするという観点だけでなく、良質のジャーナリズムを行い、ジャーナリズムから投資利益率を獲得するという観点からも意味のあるプラットフォームと、より良い関係を築くために、賢く動くことが重要となっている」と、ハイク氏は言う。

長期プロジェクトの好例

ハイク氏によると、「マイク・ディスパッチ」はまさに彼らが行いたい長期プロジェクトの好例だという。プレミアから1カ月が経ち、10のエピソードが配信された。各エピソードは約15分ほどで、スタジオでのインタビュー、そしてマイクのジャーナリストたちによる現場からのレポートで構成されている。これまでのエピソードではニューヨーク州知事候補のシンシア・ニクソン、アレクサンドリア下院議員候補、そして保守派コメンテーターのキャンデス・オーウェンズ氏といった有名人たちが登場。チームは25人のスタッフで構成されている。

マイクは以前、ニュースフィード向けに短尺動画を大量に投稿していたが、3秒以上見続けるユーザーの割合は「マイク・ディスパッチ」の方が大きいとハイク氏は言う(本記事をパブリッシュするまでに、正確な割合についての回答はもらえなかった)。

ほかの長編のコンテンツバイヤーたちに対しても、マイクは「マイク・ディスパッチ」と似たニュースマガジンのフォーマットをとるプログラム制作を計画している。それに加えて、マイクが得意とする社会問題などのトピックに関する従来型のドキュメンタリーも制作するという。ここから数四半期の間にマイクは、ほかのプラットフォーム向けの長編プログラムをどんどんと発表していくと、ハイク氏は言う。具体的な数については言及しなかった。

取り組むべき権利問題

ストリーミング動画バイヤー向けに長編動画を制作・販売するという戦略の変更は、Facebookのニュースフィード用の短尺動画を大量に流すことでリーチを増やすものの収益は限定的だった以前の戦略から離れる形だ。資金を受け取ってプログラムを制作し、ライセンシング配信をすることから収益の1/3が来るような状況まで持っていきたいと、同社は言っている。

こういった形式のコンテンツを買ってくれるプラットフォームは確かに存在している。Netflixは本格的なニュース番組には興味が無いと述べていたものの、Vox MediaBuzzFeed Newsといったデジタルパブリッシャーたちから、ニュース中心のノンフィクション番組を購入しはじめている。Huluもまた、BuzzFeed Newsからドキュメンタリー映画を購入。こういったパブリッシャーと、テレビのコラボレーションを早い段階から取り込んで成功したのはHBOだ。HBOとViceの映像コンテンツは、エミー賞も獲得している。

ストリーミングやテレビコンテンツのバイヤーに依頼されてコンテンツを制作するのか、それとも、権利を失わずに、作品をライセンシング配信する方法を見つけていくのか。この問題はマイクを含めた長尺動画プロダクションに野心を抱えるパブリッシャー全員が、取り組む問題となるだろう。最近ではプラットフォームはますます、コンテンツに資金を出して権利をすべて所有したがる傾向にあるからだ。プラットフォームのために制作するのであれば、パブリッシャーはお金を最初に受け取ることができる。もしもコンテンツの権利や配信権利の一部をパブリッシャーたちがキープしたいのであれば、最初に制作コストを自社で負担しなくてはいけない。そうして作り出したコンテンツがライセンシングやシンジケーションを通じて、将来的に利益を生むと期待するわけだ。

前向きなマイク担当者

「マイク・ディスパッチ」は、Facebookによって制作資金が出され、権利もFacebookが所有している。そのため将来的にマイクが番組をほかのプラットフォームにライセンシング配信をするということはできない。テレビネットワークや大手ストリーミング企業と配信契約やプロダクション契約を結ぼうとするなかで、IP(知的財産)に関するアプローチも正しい方法を見極めようとしていると、ハイク氏は言う。

「自分たちに差し出された、さまざまなチャンスのなかで必死になって見極めようとしている最中だ。最終的には、これらのチャンスで一体何を得ることができるのかという点に尽きる。ストリーミング企業たちが慎重になりながらも、はじめてニュース分野に進出しようとしているなか、これは取り組みがいのある問題だ」と、彼女は言う。

Sahil Patel(原文 / 訳:塚本 紺)