かつてニュースは、ミレニアル世代のために手直しする必要があった。2010年代、パブリッシャーたちは規模の拡大方法を模索しており、Facebookはユーザーの注目を多く集めるコンテンツに飢えていた。そのとき連邦準備制度から放出された自由な資金源を注視していたVCたちは、新たな投資機会を探していた。
かつてニュースは、ミレニアル世代のために手直しする必要があった。
2010年代、その分野は未知で、最悪の状況が起こりかけていた。特にデジタルネイティブのパブリッシャーたちは規模の拡大方法を模索しており、IPOを行ったばかりのFacebookはユーザーの注目を多く集めるコンテンツに飢えていた。連邦準備制度から放出された自由な資金源を注視していたベンチャーキャピタリストたちは、新たな投資機会を探していた。
そして突然、ニュースはより速く、動画と画像を多用し、共有(そして携帯電話の画面)向けに最適化する必要がでてきた。また、ニュースはパブリッシャーのウェブサイトではなく、プラットフォームに依存することができた。ある方法で、またはその他の方法で(それはおいおいわかるようになる)収益化することが可能で、まったく新しいミレニアル世代向けニュース提供者たちが誕生した。
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マーケティングのご都合主義
目まぐるしい4年間で、マイク(Mic)、マッシャブル(Mashable)、Ozyのようなスタートアップは数千万ドルの資金を調達し、ユニビジョン(Univision)やディズニー(Disney)などのレガシーメディアブランドは独自の競合相手を立ち上げ、この戦略を受け入れたほとんどの企業が動画にシフトした。
今日、これらの新しいブランドの取り組みの影響は、パブリッシング業界全体で見ることができる。しかし、2018年のレイオフ、そして売上や収益機会の損失により、「ミレニアム向けのニュース」がほとんどの場合、マーケティングのご都合主義であって、成功していないという事実が明らかになった。安価な参照トラフィックの否定やオーディエンスのロイヤルティを生み出したブランドがなければ、大いなるニュースの変化はまだ見られなかっただろう。
「デモ版を(ビジネスの)ターゲットにできるとは思わない」と、メディアアナリストのバーナード・ガーション氏はいう。「質の高いプロダクトを作り、収益化する方法を見つけなければならないと思う」。
機能不全に陥った配信機構
25から34歳のインターネットユーザーのニュースサイトのリーチを見てみると、上位50に入ったミレニアル世代を対象にするパブリッシャーはたった3社だ。インサイダー(Insider Inc.)だけが上位10に入っている。コムスコア(Comscore)のデータによれば、その後に続くミレニアル向けニュースは36位のマイクで、その年齢層のわずか2.6%にリーチしているだけだ。
その原因の理由として、これらのパブリッシャーが最初に利用していた配信の仕組みが機能しなくなったことがあげられる。マイクがシリーズBの投資ラウンドで1700万ドル(約17億円)を調達した2014年、Facebookが同サイトのトラフィックの70%を占めていた。現在はグループ・ナイン・メディア(Group Nine Media)の一部となった、動画重視のニュースパブリッシャーであるNowThis(ナウディス)は、独自のウェブサイトを設けないことで、その分散型ニュースアプローチを極めた(その戦略は今年初めに取りやめている)。
しかし、こうした日々は終わりを告げた。長年にわたるFacebookからの参照トラフィックの急増後、いまGoogleはパブリッシャーのトップリファラーという地位を奪還している。「これらの(Facebookに依存した)パブリッシャーたちはオーディエンス獲得方法を多様化しなかった」と、インターネットの参照トラフィックを監視するツール、パースリー(Parse.ly)のCEO、サチン・カムダー氏は述べた。
コミュニティの不在も問題
コミュニティ構築ではなく、リーチの最大化に注力してきたことが、もうひとつの大きな問題をもたらした。エンゲージメント・メトリクスと直接的な関係がいま求められている一方で、多くのミレニアル世代向けニュースパブリッシャーは、規模の拡大が重視された時代に誕生し、それに応じて発展してきたのだ。
「成功するミレニアルジャーナリズムプロダクトを生み出すものが何かということに関して根本的な誤解があった。そこにはコミュニティを作る場所は存在していなかった」と、ギズモード・メディア・グループ(Gizmodo Media Group)の元CEOで、コロンビア大学の経済・ビジネスジャーナリズムのナイト・バジョット(Knight-Bagehot)フェローシップのディレクター、ラジュ・ナリセッティ氏は語った。
パブリッシャーであれ、なんであれ、もっとも成功したミレニアルプロダクトは、受動的なオーディエンスに対して情報を一方的に提供するのではなく、会話をはぐくんでいると、ナリセッティ氏は述べる。Facebookのようなプラットフォームは、建前ではユーザー同士がつながる機会を提供していたが、パブリッシャーたちにとって、こうしたつながりを十分に活用することは、さらに難しかった。「Snapchat(スナップチャット)やFacebookでコミュニティを構築することはできない。それはFacebookのコミュニティなのだから」と、ナリセッティ氏はつけ加えた。
ミレニアル向けサイトの功績
これらの失敗は、チャンスに惹かれた若い記者たちによる数多くの素晴らしい仕事を覆い隠してしまった。BuzzFeed Newsは複数のピューリッツァー賞から参照されており、マイクはエミー賞にノミネートされ、NowThisはバラク・オバマ大統領、ジョー・バイデン副大統領、エリザベス・ウォーレン上院議員、バーニー・サンダースなど、政治家との独占インタビューを実施できた。
そして、ミレニアル世代向けニュースサイトが従来サイトに取って代わることに成功しなかったとしても、広告と配信業務の近代化を促進した功績は称賛に値する。「彼らは業界全体を前進させた。彼らはみな現在すべてのパブリッシャーが通る道を拓いた」とメディアレーダー(Mediaradar)のCEO、トッド・クリーゼルマン氏は語った。
ミレニアル世代独自のニューススタイルはミレニアルの人々だけのものとは誰も思っていない。しかし、それを信じているパブリッシャーは、コンテンツ制作とソーシャル配信の経済性に関して割り切っている。
さらなる新興パブリッシャー
2年前にフランスでローンチされたグローバル動画ニュースパブリッシャー、ブリュット(Brut)は、短い形式に編集されたニュース動画は数多くのプラットフォームや市場で容易に翻訳して配信することができると賭けている。チューブラー・ラボ(Tubular Labs)のデータによると、ブリュットはFacebook上では新興パブリッシャー上位5に現在ランクされている。
「我々が制作している動画の少なくとも6、7割はグローバル向けだ」とブリュットのCEOギョーム・ラクロワ氏は語り、来年半ばまでにブリュットのグローバルチームが制作する動画が平均8つの異なるプラットフォームにわたり14の市場で配信されるだろう、と付け加えた。
「1本の制作費で112本の動画ができたら、広告プラットフォームに売上の50%が削減される、非常に複雑な世界で渡り合える立場にあるといえるだろう。その規模がなければ、その削減を乗り切ることは非常に難しくなる」と、ラクロワ氏は述べた。