メディアの評価指標を巡る議論において、「アテンション(Attention)」の観点が強い支持を得つつある。2年前に設立されたアドテク企業のアデレード(Adelaide)は、デジタルメディアの売買を、CPMやビューアビリティに基づく指標からアテンションに基づく評価に移行させることを目指している。同社は先日、200万ドル(約2億2000万円)の資金を調達したところだ。
メディアの評価指標を巡る議論において、「アテンション(Attention)」の観点が強い支持を得つつある。2年前に設立されたアドテク企業のアデレード(Adelaide)は、デジタルメディアの売買を、CPMやビューアビリティに基づく指標から、アテンションに基づく評価に移行させることを目指している。同社は先日、200万ドル(約2億2000万円)の資金を調達したところだ。
なお、投資家として名を連ねているのは、グループエム(GroupM)の前会長であるアーウィン・ゴットリーブ氏、メディアリンク(Medialink)のCEOであるマイケル・カッサン氏、ニールセン(Nielsen)の前CEO、リンダ・クラリツィオ氏、モート(Moat)の共同創設者であるジョナ・グッドハート氏など、業界のキーパーソンたちだ。
そのひとりであるゴットリーブ氏は、メディアが意思決定を行う際、視聴者やCPMを活用するより、もっと定量化しやすい方法を長いあいだ追い求めてきたと、米DIGIDAYによる取材で語っている。「CPMは、そのメディアが持つインプレッションやオーディエンスとの接触機会の価値を反映していない。端的にいうと、メディアの効果を測定しきれていないのだ」。
Advertisement
投資家からの期待
1970年代からメディアバイイングに関わるコードを自ら書き、その生涯にわたって「定量的データを駆使」してきたゴットリーブ氏は、投資前にアデレードのハードウェアとソフトウェアの構成を確認したという。調査会社コムスコア(Comscore)の取締役でもある同氏は、「徹底的に評価していないものには投資しない」と強調する。
一方カッサン氏は、クラリツィオ氏をはじめ、ピュブリシス(Publicis)の元役員であるリシャド・トバッコワラ氏、ARFの元会長ジム・スペイス氏、マーケティングオブザーバーのビル・ハーベイ氏、調査のエキスパートであるアリス・シルベスター氏、マーシャル・コーエン氏、ハワード・シメル氏などが名を連ねるアデレードの諮問委員会に感銘したと述べている。
カッサン氏は最近、代理店やマーケターがメディアコストを削減するための製品開発を行う企業、ハドソンMX(Hudson MX)にも投資を行ったが、「我々の業界には、変革(transformation)、テクノロジー(technology)、信頼(trust)など、『T』で始まる重要な言葉が数多くある。アデレードが目指していることも同じく『T』からはじまる『透明性(transparency)』に影響を与えるものだ。広告主がかつてないほどにメディアの最適化を重視している昨今、これは非常に重要な要素だ」と話している。
AU指標とはいかなるものか
アデレードのCEOであるマーク・グルディマン氏は、同社の「AU指標(偶然ではなく、Auは金の元素記号でもある)」は、アテンションが持続した時間ではなく、アテンションの機会に焦点を当てた指標だと強調する。そのため同氏、ビューアビリティを評価基準にすることに強く反対している。「持続時間はアテンションを間接的に示すものではあるが、それが効果を左右するだろうか?」と疑問を呈し、「十分な情報を収集し、それをインプットしたうえでAU指標を活用すれば、最終的には成果をもっとうまく予測できるようになる」。
CPMに基づく評価に代わるものとして、アテンションを支持する声は、数年前から各所で上がっていたが、アドテクベンダーから次々に送り出される新しい「ソリューション」に、マーケターたちはうんざりしているのも事実だ。そこで重要なのが啓蒙だ。グルディマン氏は、「その仕組みが理解できない通貨では、誰も取引したくない」としたうえで、啓蒙を成功に導くには、モートのグッドハート氏がアデレードの諮問委員会にいることが重要だと付け加える。なぜなら、モートは自社でソリューションを導入しようとしたときに、まさにその問題に直面したからだという。
一方でグルディマン氏は、結局のところ、AU指標がどれほど正確に測定、計算、最適化ができるとしても、最終的には創造的なプロセスが、キャンペーンの成功を決定づけるのだと認めている。「メディアの仕事はアテンションの機会を作ることであり、そのためにはクリエイティブが重要だ」。
[原文:‘The opportunity for attention’: Metrics firm Adelaide draws investment from bigwig media backers]
MICHAEL BÜRGI(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)