約1カ月前にローンチされたメタ(Meta)のThreadsは、ハードニュースや政治といったテーマよりも、楽しさやエンターテイメントに焦点を当てるソーシャルメディアサイトという前提のもとに始まった。
ローンチ直後に多くのユーザーがこのプラットフォームに参加するのを見て、ニュースパブリッシャーたちもThreadsに参加した。彼らにとっては、メタからの「楽しく、ポジティブな体験にフォーカスする」というガイダンスは義務というよりは、むしろ提案レベルのものと捉えられたようだ。
初期のエンゲージメントに基づくと、ワシントンポスト(the Washington Post)のようなニュースパブリッシャーたちは、フォロワーがニュースや政治のコンテンツに確実に興味を示していることがわかっている。一方、テキサスマンスリー(Texas Monthly)、CBSニュース(CBS News)、バイスニュース(Vice News)のようなほかのパブリッシャーは、2024年選挙が少しずつ近づくなか、Threadsでニュースコンテンツに対する興味が存在するのか確認するため、テストを行っている。
ニュースパブリッシャーの居場所はあるのか
「メタは自社の全プラットフォームでジャーナリズムやハードニュース、政治は優先事項ではないと明確にしている。以前はFacebookのようなプラットフォームでは(前述のトピックが)優先事項だったこともあったが、インスタグラムではそうではなかった。しかし、それでも我々はインスタグラムで成功を収めてきた。だから、この新しいソーシャルメディアプラットフォームへの投稿に関しては、我々のコンテンツ戦略を変えるつもりはない」と、ワシントンポストでソーシャルとオフプラットフォームキュレーションの副ディレクターを務めるトラヴィス・ライルズ氏は述べる。
では、ユーザーがThreads上で実際に見たいものと、一部のパブリッシャーが試してるトーンについての実験結果はどのようなものだろうか。
約1カ月前にローンチされたメタ(Meta)のThreadsは、ハードニュースや政治といったテーマよりも、楽しさやエンターテイメントに焦点を当てるソーシャルメディアサイトという前提のもとに始まった。
ローンチ直後に多くのユーザーがこのプラットフォームに参加するのを見て、ニュースパブリッシャーたちもThreadsに参加した。彼らにとっては、メタからの「楽しく、ポジティブな体験にフォーカスする」というガイダンスは義務というよりは、むしろ提案レベルのものと捉えられたようだ。
初期のエンゲージメントに基づくと、ワシントンポスト(the Washington Post)のようなニュースパブリッシャーたちは、フォロワーがニュースや政治のコンテンツに確実に興味を示していることがわかっている。一方、テキサスマンスリー(Texas Monthly)、CBSニュース(CBS News)、バイスニュース(Vice News)のようなほかのパブリッシャーは、2024年選挙が少しずつ近づくなか、Threadsでニュースコンテンツに対する興味が存在するのか確認するため、テストを行っている。
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ニュースパブリッシャーの居場所はあるのか
「メタは自社の全プラットフォームでジャーナリズムやハードニュース、政治は優先事項ではないと明確にしている。以前はFacebookのようなプラットフォームでは(前述のトピックが)優先事項だったこともあったが、インスタグラムではそうではなかった。しかし、それでも我々はインスタグラムで成功を収めてきた。だから、この新しいソーシャルメディアプラットフォームへの投稿に関しては、我々のコンテンツ戦略を変えるつもりはない」と、ワシントンポストでソーシャルとオフプラットフォームキュレーションの副ディレクターを務めるトラヴィス・ライルズ氏は述べる。
約8万6千人(本稿執筆時)のThreadsフォロワーを持つワシントンポストは、ニュース速報からゲーミングコンテンツ、軽快で楽しい記事まで、さまざまなコンテンツをテストしてきた。「これらはすべて『いいね』やリポストを得ている」と、ライルズ氏は語る。Threadsには投稿のパフォーマンスを分析するアナリティクスは基本的に存在しないが、ライルズ氏のチームは投稿のエンゲージメント率を手動で追跡し、UTMリンクを使用してワシントンポストのWebサイトへThreadsが何のトラフィックをもたらしているかを追跡している。「Threadsでの人気の投稿は、数千の『いいね』を獲得する」と、同氏は付け加えている。
メタのインスタグラム責任者であるアダム・モッセリ氏は、ニュースパブリッシャーのThreads参加を優先的に促すつもりはないと公に言っているが、「それはThreads上にニュースパブリッシャーの居場所がないという意味ではない」と、CBSニュースのソーシャルメディアとトレンドコンテンツ担当バイスプレジデントであるクリスティーナ・カパティデス氏は言う。
カパティデス氏は、「ThreadsはTwitter(正しくは、X)とは異なり、アルゴリズムベースのフィードのみを採用(本稿執筆時)しているため、ニュース速報には最適でない」と指摘しながらも、「幸いなことに、すべてのニュースネットワークがニュース速報だけを提供するわけではない。『CBSモーニング(CBS Mornings)』や『CBSイブニングニュース・ウィズ・ノラオドネル(Evening News with Norah O’Donnell)』のような当社の主要番組では毎日、解説が行われたり、人間関係の話題が取り上げられたり、著者や俳優とのインタビューが行われたりする」と述べ、「このようなセグメントは我々がそれを投稿してから10時間や3日後にThreadsユーザーがそれを見ても、依然として興味深くみられる」と話した。
現状、ユーザーが見たいのはポジティブなニュース
「確かに、(Threadsでは)友好的なトーンが感じられる」とテキサスマンスリーのシニアエンゲージメントエディターであるアマンダ・オドネル氏は言い、「その点は、我々が(Threadsで)プッシュする記事の選択に影響を与えた」と付け加える。
Threadsにおけるテキサスマンスリーのフォロワー(公開時点で約3万4000人)の大半はインスタグラムから入ってきたもので、インスタグラムでは同社の政治やニュースの報道は大いに反響を呼んでいる。しかし、「その成功をThreadsで再現することはできていない」と、オドネル氏は述べる。「我々は、Threadsで人々が何を求めているのかを感じ取り、全体のトーンを軽く保つことを試みた。なぜなら、それが初期のトーンであり、メタは参加する人々にこのようなトーンを使うよう、ほとんど指導のようなことをしていたからだ」。
テキサスマンスリーがThreadsのフォロワーに対して行った第1回アンケートでは、「Threadsで何を見たいか」を尋ねた。選択肢は「ポジティブなニュース」「犯罪ドキュメンタリー」「BBQ関連のストーリー」だった。150件の回答の大部分はポジティブなニュースとBBQに均等に分かれた。その結果、テキサスマンスリーは、Threadsで犯罪ドキュメンタリー、ハードニュース、政治報道を投稿していない。ただし、オドネル氏と同氏のチームがそのようなコンテンツを今後も投稿しないという意味ではないようだ。
「(犯罪ドキュメンタリーやハードニュースについてThreadsで投稿すること)は間違いなく今後、行うだろう。インスタグラムでそれらの投稿が大人気になっているからだ。(Threadsは)我々のインスタグラムのフォロワーの反映であり、彼らが我々のニュースや政治報道に興味を持っているだろうと想定している」とオドネル氏は述べる。
さまざまなトーンを実験
バイスニュースはインスタグラムでハードニュースをダイレクトに提供する一方、Threadsでのアプローチは少し軽くしている。同社の最高デジタル責任者であるコーリー・ハイク氏は、「我々のThreadsでのアプローチは全体的に、これはニュースカテゴリーでも同じだが、少し軽快にしている」と述べる。
ハイク氏はまた、より人間味をバイスのブランドに持たせるため、さまざまなトーンのニュースを伝える実験をThreadsで行っていることを明らかにした。メインのWebサイトでは扱わないが、Threadsのフォロワーは興味を持つかもしれないような内容のニュースを扱う、といった具合だ。
たとえば、2カ月間海で遭難していた男性とその犬が、最終的に救出されたという動画を投稿した。「この話はWebサイトには掲載されなかったが、ハッピーエンドであったためThreadsにぴったりだった」とハイク氏は述べ、「今までにThreadsで投稿されたなかでもっとも反響の大きかった記事のひとつだ」と言い添える。
その投稿は2000以上の「いいね」を獲得し、138件の返信が寄せられたという。現在、バイスニュースのフォロワーは約30万人(本稿執筆時)だが、バイス全体では約140万人(本稿執筆時)のフォロワーがいると、同社の広報担当者は述べている。
「我々はインターネットに存在する『奇妙なニュース』ジャンルに参加したい。(中略)我々のオーディエンスがそれを楽しんでいるからだ。我々はインスタグラムでも同じトーンを持っており、それを非常に真剣なニュースの文脈でも引き継ぎたい」とハイク氏は語る。
テキストベースのプラットフォームの戦い
Twitter(正しくは、X)の代替プラットフォームとして、まだThreadsにはっきりと移行する大きな動きはない。それでもThreadsがTwitter風の特徴を持っていることにパブリッシャーたちは同意する。とくに、ThreadsがWebサイトへのトラフィックのリファラルソースになっていない点、そして初期段階である今は収益化の手段とはなっていない点だ。
「ニュースの観点から見て、Twitterでの我々の戦略は常に話題に参加することだった。Twitterからのリファラルトラフィックはまだ成熟していない」とハイク氏は言う。そして、Threadsでも同じことが言える。「もしThreadsに大量のオーディエンスがいるなら、我々はその会話の輪のなかにいなければならない。Twitterの場合とは違って、収益化がまだそこに存在しないとしても、(Threadsでの)会話に参加しなければならない」と同氏は付け加える。
ハイク氏は、ROI(投資対効果)の観点から言って、Twitterは収益を出すという点では実際には上手く機能していなかったと説明する。しかし影響力の観点からは、Twitterにおけるオーディエンスとのエンゲージメントとブランド構築は重要だった。「もしニュースビジネスに参入するのなら、(Twitter)はビジネスを行うコストと考える。Twitterに参加し、その対話に参加する必要がある」と同氏は言う。
テキサスマンスリーもまた、Twitterを強力なトラフィックのリファラルソースとは捉えたことはなかった。むしろ読者とより一対一で交流するプラットフォームとして見ている。「私は、エンゲージメントの高いTwitterのオーディエンスをThreadsで見つけて、それを再現したいと思っている。ただ今のところ、Threadsのアイデンティティの大部分が、確立されたTwitterベースとの差別化にあるように思える。だから、まだそれを見つけることはできていない」とオドネル氏は言う。
ワシントンポストにとって、Threadsが初期段階にあってニュースや政治に焦点を当てていないという事実のなか、希望となっているのはTwitterでは一般的であるトロールやボットの欠如だ。しかし、ライルズ氏は「Twitterの非常にダークな部分からの解放が永遠に続くとは思っていない。とくに2024年の選挙年に向けて、状況は変わるだろう」と語る。「現在、Threadsには政治家があまりいない。(中略)しかし、政治家が増えてくるとそれがプラットフォームの流れを変える可能性があると思う」。
政治関連の報道もThreads上に
ライルズ氏は、インスタグラムのようにThreadsがWebサイトへのトラフィックのリファラルソースになるとは予想しておらず、ブランド構築の機会として見ている。そして、インスタグラムと同様に、「Threadsでも政治報道に対する需要がありそうだ」と言う。政治報道は、オーディエンスがワシントンポストに期待する主要なトピック分野だからだ。
「我々のような政治関連のパブリッシャーに対して、人々はそれを期待していると思う。インスタグラムで政治報道を全力投球するということはないと思うが、少なくともメインのアカウントでは政治の主要な出来事をハイライトしている。我々はニュースに基づいて、我々のブランドを構築している」とライルズ氏は述べる。
とくに2024年の大統領選挙に向けて、ライルズ氏は「Threadsとインスタグラムでの政治報道をできるだけシンプルに保つことを目指している」と述べ、過去の数回の選挙でオーディエンスに疲労感が蔓延していることを認めた。また、「視覚的な補助をテキストとバランスを取り、物事をより簡単に理解できるようにすることが政治報道の中心となる」とも付け加えた。
テキサスマンスリーにとっては、Threadsがユーザー間での高いレベルのエンゲージメントを維持できる限り(本稿執筆時点で、もっとも「いいね」を獲得した同社の投稿は247件の「いいね」を獲得)、「Threadsは選挙報道戦略のなかで優先されるだろう」とオドネル氏は言った。そして彼女のチームは、「Threadsでいくつかの政治記事を試して、フォロワーがそれらにどう反応するかを見るつもりだ」と言い添えた。
[原文: Meta wants Threads to keep a light tone, but some publishers say the audience is ready for news ]
Kayleigh Barber(翻訳:塚本 紺、編集:島田涼平)