Quartz 、初の会員サービスで「コミュニティ」構築に注力:ユーザベースによる買収後の動き

読者からの売上を求めるパブリッシャーは、コンテンツへの無制限アクセスや、広告の少ない閲覧環境を用意するだけでは不十分であることに気づきはじめた。そんななか、Quartz(クオーツ)が創設した新たなメンバーシッププログラムは、イベントや専用コンテンツ、スタッフとの定期的な電話会議を売りに、コミュニティの構築をはかるものだ。

日本のメディア企業、ユーザベース(Uzabase)の傘下に入って間もないビジネスニュースパブリッシャーのQuartzは、11月13日、有料メンバーシップの発足を発表した。価格は月14.99ドル(約1690円)または年99ドル(1万1170円)で、来年以降の年間購読料は150ドル(1万6900円)に値上げされる。これとは別に、Quartzはニュースにコミュニティインタラクションの側面を加える新たな無料アプリもリリース。Quartzスタッフやリチャード・ブロンソン氏などの著名経営者たちが、記事へのコメントや論評をアプリ上でシェアするものだ。

このメンバーシップはコンテンツとコミュニティの性質を兼ね備えたもので、メンバーは話題のビジネストピックを毎週詳しく解説する「フィールドガイド」を読めるだけでなく、インタビューで聞いてほしい質問を提案したり、Quartz記者との定期的な電話会議にも参加できる。来年以降、メンバー限定イベントも開催される予定だ。

Quartzのメンバーシップは、デジタルパブリッシャー各社が先を争ってリリースしている、消費者向けオファーのひとつだ。インフォメーション(The Information)の年749ドル(約8万4550円)の有料購読のような限定プロダクトだけではない。ヤフー(Yahoo)などテック界のレガシー企業も、提供するアドオン機能について、2019年にヤフーファイナンス(Yahoo Finance)の有料版をリリースすると発表している。

コミュニティを構築

パブリッシャーが提供する高額メンバーシップのほとんどは、スキルに特化している。「メンバーシップが読者にとっての実際の問題を解決することが明確であればあるほど、価格は高くなる傾向にある」と、スターリング・ウッズ・グループの創業者、ロブ・リスタグノ氏はいう。「読者の仕事のスキルを向上させるか、読者が情熱をもっている何かで、彼らを成功に導かなくてはならない」。

Quartzのプログラムはいわば折衷案で、重要なビジネストピックの深層を素人向けに解説しつつ、コミュニティを構築するものだ。

「我々は意図的に『メンバーシップ』という言葉を使った」と、Quartzの最高製品責任者、ザック・スワード氏はいう。「限定コンテンツだけではなく、Quartzとの関係という意味も込めている」。

Quartzは以前から、読者売上を伸ばそうとするパブリッシャーのトレンドの一角をなしていた。2017年末にハードカバー書籍を刊行し、今年8月にはプラベートキー(Quartz Private Key)と題した、暗号通貨とブロックチェーンに関するニュースレターを開始。このニュースレターは多数の読者を獲得し、当初の売上目標を突破した。

買収後のアクション

Quartz幹部は、新たなメンバーシップの登録数や売上の予測については口を閉ざしている。

今年7月のユーザベースによる買収のあと、Quartzは熱心な読者への対面インタビューを開始し、メンバーシップにどんなコンテンツやサービスを望むかを調査した。また、そのようなプロダクトの妥当な価格を探るべく、市場調査も実施した。Quartzのオーディエンスの多くは企業アカウントでコンテンツにアクセスできるが、メンバーシップは顧客が自腹を切って登録したいと思う内容、そして払える値段にしたかったと、スワード氏はいう。

「我々は、メンバーシップが本当にいい買い物、値段以上の価値のあるものになるよう努力した。100ドルや150ドルを払う価値のある、特別なプログラムでなくてはならない」と、スワード氏は話す。

メンバー専用コンテンツの大部分は、従来の編集スタッフが制作する。制作に関わる記者は15~20人で、そのほとんどは毎日更新される公開記事の執筆も継続して行う。フィールドガイドの制作期間は4~6週間だ。

カスタマーサービスの質問対応やリテンションなどの業務のため、Quartzは2019年にスタッフの追加採用を行う予定だ。同社がカスタマーサービス担当者の採用を開始したのは昨年の書籍刊行のときで、ニュースレター「プライベートキー」の発足に合わせて増員し、現在は7人がカスタマーマーケティングとカスタマーサービスに専念している。ここに来年、さらに3人が加わる見込みだ。

広告掲載も行う予定

新たなプログラムの売上は、購読料が大部分を占めることになるが、メンバー専用コンテンツにも広告掲載は行われる予定だ。たとえば、広告主のメッセージとフィールドガイドの統合などが考えられる。現段階では広告枠の販売はされていないが、Quartzの発行人で共同CEOも務めるジェイ・ローフ氏は、広告主向けの大型キャンペーンの一部としてメンバーシップを利用し、将来的にオーディエンスが増えた段階で、メンバーシップ広告を独立で販売する考えだ。

同社の他のプロダクトと同じく、メンバーシップでも、中心である記事閲覧の体験を損なうことなく広告を統合するための、さまざまな選択肢を検討するつもりだと、ローフ氏はいう。

「Quartzでの広告体験がネガテイブなものであったことはないと、我々は考えている」と、ローフ氏は語る。「購読料を払ってもいいと思うくらいコンテンツに関心をもっている人々と、つながりを築きたい広告主はたくさんいるはずだ」。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)