TVネットワークが測定システムの見直しに取り組むなか、ウェブパブリッシャーも独自の測定方法の改革に直面している。サードパーティCookieが最終的に廃止されると、広告パフォーマンスの追跡システムの多くが損なわれることになる。今後、TVとウェブのクロススクリーン測定も目指される。
TVネットワークが測定システムの見直しに取り組むなかで、ウェブパブリッシャーも独自の測定方法の改革に直面している。
サードパーティCookieが最終的に廃止されると、ブランド効果やアトリビューション指標など、パブリッシャーがサイト上に展開している広告のパフォーマンスを追跡するための測定システムの多くが損なわれることになる。
「最大の課題は、これが広告主に影響を与え、その結果、パブリッシャーがその影響を感じるようになることだ」と、IAB(インタラクティブ広告協議会)のプログラマティック・プラス・データセンター(Programmatic+Data Center)で測定およびアトリビューションを担当し、バイスプレジデントを務めるアンジェリーナ・エン氏は述べる。
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Googleのプライバシーサンドボックスは、測定やアトリビューションに利用できるデータを制限し、広告主がキャンペーンの成果をいまほど測定できなくなるとしたら、大手テクノロジープラットフォームのように、広告主の予算をめぐって競合する企業に対して、パブリッシャーが不利になる可能性がある。そして、パブリッシャーは、その状況をますます認識するようになっている。
主なキーポイント:
- サードパーティCookieの廃止により、自社サイト上で展開する広告の効果を測定するパブリッシャーの能力が損なわれる。
- Cookie廃止後の測定への影響に対応する取り組みが始まっている。
- メディア企業が技術系プラットフォームと競争するのに有用な、真のクロススクリーンの測定環境を構築することが究極のチャンスになる。
進まない、Cookie後の測定環境の構築
あるパブリッシャーの幹部は「我々が注目し始めているのは、Cookieが使えなくなったあとの測定に関する問題だ。ブランド効果やアトリビューションなどの測定ソリューションがどうなるかを考えるエネルギーが少し低下しているような気がする」と話す。
ほかの複数のパブリッシャーも、Cookie廃止後の測定は2022年の緊急性の高い課題であることに同意している。それに関する会話がほとんどないということも同意見であった。
前出とは別の2人目のパブリッシャー幹部は「測定についてどのように話し、どのように行っているかを再考する必要がある。そのような話し合いは始まってはいるが、遅々として進まない」と語る。
公平に見ても、測定関連の動きは特に遅い。TV広告のバイヤーとセラーたちは、ニールセン(Nielsen)の測定システムからの脱却についてもう何年ものあいだ話し合ってきたが、ニールセンの数値的欠陥の証拠に直面し、業界は測定環境の更新ペースを急速に上げている。このように、TVネットワークが測定方法の改革を進めているのなら、ウェブパブリッシャーもその流れに乗れないものだろうか? 多くのメディア企業、広告主、そしてそのあいだにいるすべての人が求めてきた、クロススクリーン測定のエコシステムをついに確立するチャンスではないのだろうか?
その答えは、端的にいうなら、その通りだ。だが現実は、パブリッシャー幹部たちは、そうしたいと思っているが、TVの測定に関する会話に関与できていないという。「プラットフォーム間でこれまで以上に一貫性を持たせる必要があるのはたしかだ。それが形になり始めると期待している」と、1人目のパブリッシャー幹部は語る。
TVの測定更新の取り組みがウェブ測定にまで拡大しない理由のひとつは、GoogleやFacebookのような主要なウェブプラットフォームを巻き込んで競争の場を拡大することに対して、TVネットワークのオーナーが不安を抱えていることだと、あるTVネットワーク幹部は述べる。
クロススクリーン測定の現状
しかしながら、TVネットワークのオーナーでさえ、プラットフォームに対してメディア企業が不利にならないようにするための新しい測定基準を開発するために、協力してパブリッシャーにその輪を広げる機会を認識し始めている。「なぜなら、(TVネットワークのオーナーは)ウェブと同じように、取り残されることになるからだ。そこでGoogleとFacebookが登場する」とTVネットワーク幹部(2人目)はいう。「我々が何をしようとも、GoogleやFacebookには適わない。なぜなら、我々は(新たな標準を)共同で開発・発明するということを実際にやったことがないからだ」。
IABは、「今後数週間のうちに」クロスチャネル測定協議会を発足させる予定だ。このグループの目的は、「クロスチャネル測定に必要な標準KPIと標準測定指標を特定すること」だとエン氏は述べている。
TVネットワークのオーナーとウェブパブリッシャーが新しい測定環境の構築に向けて協力することには、究極のインセンティブが存在する。広告主がそれを望んでいるということだ。広告主はずいぶん前からクロススクリーン測定を望んでおり、それを実現する機会がいまやってきたというわけだ。
2022年のアップフロントでの交渉に向けて、TV広告のバイヤーとセラーのあいだでは、リニア(従来型)TVとストリーミングを中心に「(測定のための)通貨」の話が進んでいるが、あるエージェンシー幹部は「その通貨は、ほかのメディアパートナーを含む、すべての人のために機能しなければならない。YouTubeやTikTok(ティックトック)を取り込めるようにしたい」と述べる。
これは、テックプラットフォームに有利なように聞こえるが、エージェンシー幹部からすれば、ウォールドガーデンを取り壊すための一歩になる。また、パブリッシャーの立場からすれば、自分たちが参入するための手段でもある。「これは、ある種のトリクルダウン効果をもたらす可能性がある。そして、デジタルにとって完璧でないにしても、少なくともそこには、その上に構築するのに使える十分な基盤がある」と、パブリッシャー幹部(1人目)は話す。
「業界を取り巻く情勢が変わったのに、黎明期から測定法を変えていない」と、エージェンシー幹部(2人目)はいう。TVの測定システムの見直しとサードパーティCookieの廃止に伴い、測定の状況がどのようになるにせよ、「クロススクリーンで機能する必要がある」。
TIM PETERSON(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:小玉明依)