- コンデナスト、ボックス・メディア、ワシントン・ポストなどのメディア企業の多様性に関する年次報告書によれば、民族的・人種的背景を開示しないか自己申告しない従業員の割合が増加している。
- 増加の理由として、企業の従業員構成の変化や個人データの使用に対する従業員の懐疑心が挙げられ、ワシントン・ポストの広報担当者によると、この増加は最近の国際的な事業展開と米国外での新規採用によるものだと思われるという。
- 「企業は従業員に対して、なぜ個人データを収集するのか、それをどうするつもりなのか、なぜ共有することが重要なのかを明確に伝える必要がある」と、DEI専門家らはまとめている。
2023年の夏、多くのメディア企業が従業員の多様性に関する年次報告書(ダイバーシティリポート)を公開した。そうしたなかで、いくつかのパブリッシャーでは、ある傾向が際立っていた――民族的・人種的背景を開示しない、あるいは自己申告することを選択する人の割合が増加していたのだ。
このコホートは、コンデナスト(Condé Nast)、ボックス・メディア(Vox Media)、ワシントン・ポスト(The Washington Post)といった企業の従業員で、前年比1~3ポイント増加している。米DIGIDAYの取材に応じた2人のDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)コンサルタントによると、このような現象が起きている理由として、企業の従業員構成の変化から、自分の個人データが何に使われているのかという従業員の懐疑心まで、さまざまな理由が考えられるという。
DIGIDAYがパブリッシャーを対象に行っているダイバーシティリポートの追跡調査によると、コンデナストの全従業員のうち、2022年12月のデータに基づく最新のダイバーシティリポートで「申告なし」と記録されたのは7%で、2021年の4%から増加した。業界全体を見渡しても、これらの数字を総合的に追跡している組織はない。また、同社の編集部門(8%)とリーダーシップクラス(4%)の両方で、情報を共有しないことを選択した従業員数が1ポイント増えた。
自身の情報を開示しない従業員の増加
ボックス・メディアでリーダーシップクラスである従業員のうち、2022年12月に情報を開示しなかった従業員は3%で、2021年の1%から増加した。しかし、もっとも顕著な上昇はワシントン・ポストだった。同社のニュース・オピニオン部門では、従業員の9%が情報を開示せず、前年の6%から増加。また、2023年にリーダーシップクラスの従業員の5%が情報を開示しなかったが、これも2022年の3%から増加した。
ワシントン・ポストの広報担当者によると、この増加は、最近の国際的な事業展開と米国外での新規採用によるものだと思われるという。海外の従業員から人口統計学的データを収集することは「義務ではない」と担当者らは言うが、米国では「従業員は入社時に選択しなければならない」という[続きを読む]
- コンデナスト、ボックス・メディア、ワシントン・ポストなどのメディア企業の多様性に関する年次報告書によれば、民族的・人種的背景を開示しないか自己申告しない従業員の割合が増加している。
- 増加の理由として、企業の従業員構成の変化や個人データの使用に対する従業員の懐疑心が挙げられ、ワシントン・ポストの広報担当者によると、この増加は最近の国際的な事業展開と米国外での新規採用によるものだと思われるという。
- 広告主はAmazon側から高額な契約を求められているが、実際の予算配分はまだ不透明で、広告付きストリーミング市場でのプライムビデオの影響力は未知数。
2023年の夏、多くのメディア企業が従業員の多様性に関する年次報告書(ダイバーシティリポート)を公開した。そうしたなかで、いくつかのパブリッシャーでは、ある傾向が際立っていた――民族的・人種的背景を開示しない、あるいは自己申告することを選択する人の割合が増加していたのだ。
このコホートは、コンデナスト(Condé Nast)、ボックス・メディア(Vox Media)、ワシントン・ポスト(The Washington Post)といった企業の従業員で、前年比1~3ポイント増加している。米DIGIDAYの取材に応じた2人のDEI(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)コンサルタントによると、このような現象が起きている理由として、企業の従業員構成の変化から、自分の個人データが何に使われているのかという従業員の懐疑心まで、さまざまな理由が考えられるという。
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DIGIDAYがパブリッシャーを対象に行っているダイバーシティリポートの追跡調査によると、コンデナストの全従業員のうち、2022年12月のデータに基づく最新のダイバーシティリポートで「申告なし」と記録されたのは7%で、2021年の4%から増加した。業界全体を見渡しても、これらの数字を総合的に追跡している組織はない。また、同社の編集部門(8%)とリーダーシップクラス(4%)の両方で、情報を共有しないことを選択した従業員数が1ポイント増えた。
自身の情報を開示しない従業員の増加
ボックス・メディアでリーダーシップクラスである従業員のうち、2022年12月に情報を開示しなかった従業員は3%で、2021年の1%から増加した。しかし、もっとも顕著な上昇はワシントン・ポストだった。同社のニュース・オピニオン部門では、従業員の9%が情報を開示せず、前年の6%から増加。また、2023年にリーダーシップクラスの従業員の5%が情報を開示しなかったが、これも2022年の3%から増加した。
ワシントン・ポストの広報担当者によると、この増加は、最近の国際的な事業展開と米国外での新規採用によるものだと思われるという。海外の従業員から人口統計学的データを収集することは「義務ではない」と担当者らは言うが、米国では「従業員は入社時に選択しなければならない」という。
ボストン・コンサルティング・グループ(Boston Consulting Group)のシカゴオフィスのマネージングディレクター兼パートナーであるガビ・ノバーチェク氏は、従業員から個人データを収集することに関する法律は各国にあり、海外から採用した従業員からこのデータを収集するのはより困難であることが再確認されたという。
BuzzFeed(バズフィード)の2022年1月のデータに基づくリポートでは、従業員の11%が個人情報を提供しておらず、前年の5%から増加している。BuzzFeedの最高経営責任者(CEO)であるジョナ・ペレッティ氏はリポートのなかで、同社の全従業員の89%を占める米国で、人事システム「ワークデイ(Workday)」で人種的背景を共有しなかった従業員が115%増加したと指摘した(BuzzFeedのリポートにおける「未申告」グループには、自己申告しなかった従業員と「自己申告を拒否する」を選択した従業員が含まれる)。
2022年のリポートでは初めて、コンプレックス・ネットワークス(Complex Networks)とハフポスト(HuffPost)の従業員が、BuzzFeedと個人データを共有するよう求められたとペレッティ氏指摘した(BuzzFeedは2020年11月にハフポストを、2021年6月にコンプレックス・ネットワークスを買収している)。
パブリッシャーのダイバーシティリポートに含まれるコホートのなかには、自身のアイデンティティーを開示しないことを選択した人の割合が年々減少し、実質的に参加率が向上しているものもある。コンデナストの新入社員のうち、「申告なし」は12%で、前年の14%から減少。また、ボックス・メディアの編集部の2%が最新の報告書でアイデンティティーを明かさなかったが、これは2021年の3%から減少している。
増加が意味するものとは?
各企業の(共有をしない従業員の)増加は、各パブリッシャーのデータが従業員の構成について十分な情報を提供していないことを意味し、多様性の数値を前年比で比較する場合、データに歪みが生じる可能性がある。
プライスウォーターハウスクーパース(PwC)のDEIワークフォース・トランスフォーメーション・パートナーであるサバ・カンブレレン氏は、以前のインタビューでDIGIDAYに「重要なのは、(中略)人々が共有しているデータと共有していないデータの両方を見て、何かほかにすべきことがあるかもしれないサインを見つけることだ」と語っている。
ノバーチェク氏は、「職場でのDEIはしばしば『皮肉』の対象になるが、その傾向は、2020年にメディア企業が従業員の多様性を改善することにスポットライトを当てて以来、強まる一方だ」と話す。これはまた、データを共有しないことを選択する人が増えている理由でもあるかもしれない。
「我々の長年にわたるデータでは、DEIプログラムから恩恵を受けられると想定される人々の約4分の1が、DEIプログラムから(実際に)恩恵を受けたと回答している。このように、プログラムの効果に対する長期的な不満がある」とノバーチェク氏は言い、「会社が人口統計データを何のために使っているか、怪しんでいる人もいるかもしれない」と続ける。
また、「自身の能力を問われたり、疑問を持たれたりするような状況が生まれると考えるから自己申告したくない、(あるいは)統合のさなかにあり、その企業が個人データを使って何をするのかが明確でないため、個人データを共有するのが怖いなど、理由はどうあれ、それはその組織について何か疑うところがあることを示している」と話し、「人々が安心し、自信を持ってオプトインできるような環境を作る必要がある」と言い添えた。
「企業は従業員に対して、なぜ個人データを収集するのか、それをどうするつもりなのか、なぜ共有することが重要なのかを明確に伝える必要がある」と、ノバーチェク氏とカンブレレン氏の両氏はDIGIDAYに述べている。また、カンブレレン氏はこう付け加える。「信頼関係の構築に関わる話だ。時に、極めて個人的な情報を提供してもらうのであれば、それを使う理由を理解してもらうよう努力すべきだ」。
Sara Guaglione(翻訳:藤原聡美/ガリレオ、編集:島田涼平)