デジタルネイティブブランドが成熟し、テレビ広告への投資を検討しはじめるなか、NBCユニバーサル(NBCUniversal)、Hulu、ターナー・ブロードキャスティング(Turner Broadcasting)などのメディア企業は、こうしたブランドへの売り込みに攻勢を強めている。【※本記事は、一般読者の方にもnoteにて個別販売中(480円)です!】
デジタルネイティブブランドが成熟し、テレビ広告への投資を検討しはじめるなか、NBCユニバーサル(NBCUniversal)、Hulu(フールー)、ターナー・ブロードキャスティング(Turner Broadcasting)などのメディア企業は、こうしたブランドへの売り込みに攻勢を強めている。
彼らの売りは、通常のテレビ番組のプレミアムな広告環境からスーパーボウルなどの大イベントまでカバーする豊富なパッケージと、デジタルプラットフォームに匹敵するリアルなデータ指標だ。
NBCの新プログラム
先日、NBCユニバーサルは、クリエイティブメディアエージェンシーのジャイアントスプーン(Giant Spoon)との提携による新たなプログラム「ダイレクト・トゥ・スケール(Direct to Scale)」を発表した。このプログラムは、メディア戦略、コンサルティング、リアルタイムデータ指標をDTCブランドに提供し、通常放送とデジタル放送のテレビ広告をより利用しやすくすることを目的としている。DTC企業は、NBCユニバーサルの社内クリエイティブチームや、コンテンツカレンダー、データサイエンスチーム、調査・戦略チームとの協働が可能になる。
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「目を引くプレミアムな通常番組の広告環境から、スーパーボウルやオリンピックといった大イベントまでをカバーし、またファーストパーティデータとサードパーティデータを組み合わせて、デジタルプラットフォーム上で実施するのと同じような、データ主導の効果測定が可能なキャンペーンを実現する」と、NBCユニバーサルでクライアント戦略担当シニアバイスプレジデントを務めるトニー・エフィック氏は話す。「テレビ広告でこうしたことができるとは思いもしなかったというブランドも多い」。
「どのメディア企業も、今後増加が見込まれる広告費の分け前を狙っている」と、フォレスター(Forrester)の首席アナリスト、ジム・ネイル氏はいう。「DTCカテゴリーの広告費は急成長中だが、デジタルチャンネルでの伸びは頭打ちになりつつある。一方で、従来型企業の広告支出も停滞している。それにテレビは、余命わずかと誰もが噂するが、依然としてもっとも強力なメディアだ」。
効果測定は必須要件
デジタル配信サブスクリプションサービスのHuluも、DTCブランドの獲得に乗り出している。今年、HuluはDTCクライアント専門の営業チームを創設し、彼らがストリーミングセグメントの広告枠販売を担っていると、Huluの広告販売担当シニアバイスプレジデント、ピーター・ネイラー氏はいう。「パフォーマンスマーケティング・クライアントチーム」と呼ばれる同部署は、この1年で3倍に増員され、ほんの数週間前にも再度増員されたばかりだ。ネイラー氏によれば、Huluは今年、22億ドル(約2500億円)規模のOTT広告市場で最大のプレーヤーとして君臨し、DTCクライアントからの総売上を70%以上も伸ばした。
ワーナー・メディア(Warner Media)傘下のターナーは、DTC企業専用の新たなアトリビューション指標を来年リリース予定であると、広告営業担当プレジデントのドナ・スペチアーレ氏はいう。
DTC企業の囲い込みを狙うメディア企業が直面する大きな課題として、従来型テレビ放送をソーシャルキャンペーンと同様に効果測定可能なものにすることがあげられる。Huluのネイラー氏は、同社がクライアントと同じデータ主導のカルチャーを共有しているため、DTCブランドの獲得に勝機があると考えている。
「我々自身もDTCブランドだ」と、ネイラー氏。「我々はこの世界を知っているし、DTCブランドがソーシャルキャンペーンで行うのと同じように、データを測定している」。
さらなる課題はコスト
もうひとつの課題はコストだ。「費用については誤解がある」と、NBCユニバーサルのエフィック氏はいう。「DTC企業は現状、GoogleやFacebookからの広告枠購入に満足している。だが、CPMをテレビと比較すれば、実際にはいま払っているCPMの方が割高だ」。
従来型テレビ放送での広告を試し、手応えを得たDTCブランドも、同じ印象を抱いている。たとえばハローフレッシュ(HelloFresh)やトップハッター(Tophatter)がそうだ。ハローフレッシュUSでメディア戦略成長・アナリティクス担当ディレクターを務めるデビッド・ウェブ氏は、今年6月、米DIGIDAYの取材に答え、「テレビはデジタルよりも安く、効果的なことがある」と述べている。ハローフレッシュはテレビ広告購入の際、外部のエージェンシーを利用してきた。「最初の試験導入に時間がかかるが、CPMベースで比較すると、より優れているとは言わないまでも、いまやデジタルでは高度にターゲティングされたオーディエンス向けの広告枠が主流化したことで、同等のレベルになっている」。
メディア企業が自身の強みとしてDTCブランドにアピールする点がもうひとつある。人々が日々視聴する大量のコンテンツを武器に、将来の文化的トレンドを予測できることだ。「我々にはコンテンツカレンダーがある。そのため1、2年先にどんなコンテンツが放映され、何が人々の話題になるかを予測できる」と、エフィック氏は語る。
メディア企業はそもそもDTCブランドと相性がいいのかもしれない。ネイル氏は、ここまで紹介したような取り組みは、DTCブランドに好意的に受け止められるだろうと見ている。メディア企業は、多くの従来型アドエージェンシーとは異なり、DTCブランドと同じ用語を使う。また、ほとんどのDTC企業は、社内操業に熟達していて、必要なのはメディアバイイングの経験だけということが多い。「従来型アドエージェンシーと彼らの調達テクニックは、根本的にDTCブランドと相性が悪い」と、ネイル氏はいう。「エージェンシーは総じて最新のテレビ広告に疎いのだ」。
スマートな方針転換
カスタマイズ可能なシャンプーやコンディショナーを販売するDTC企業、ファンクション・オブ・ビューティー(Function of Beauty)で最高戦略責任者を務める、ルーク・ウェストン氏は、2019年以降、テレビ広告の購入を計画があると明かす。NBCユニバーサルなどの取り組みは、テレビ広告への参入のハードルを下げるものだと、彼は考えている。
「NBCはふたつの障壁に対策を講じることで、新規参入を容易にした。エンド・トゥ・エンドのサービス提供と、成果保証だ」と、ウェストン氏はいう。「DTCブランドがFacebook、Google、Snapchat(スナップチャット)に広告費を投じてきたことで、テレビが失った売上はかなりの額になる。NBCの方針転換は、小回りを効かせて試験運用と改善を重ね、効率的に広告費をスケール化できれば、スマートなものといえるだろう」。
それに、ネイル氏が「集団心理」と呼ぶ現象も、トレンドに影響を与えている。DTCブランドは、競合他社が従来放送や配信サービスのテレビ広告を試すのを見て、自社も同じことをすべきだと考えるようになる。「『なんてこった、あの会社がテレビ広告を出してる。うちもやらなくては』といった具合だ」と、ネイル氏は語った。
Ilyse Liffreing(原文 / 訳:ガリレオ)