パブリッシャー各社は年単位とはいかないまでも、何カ月もかけて自社でファーストパーティデータを構築してきた。そのパブリッシャーが熱心に取り組み続けているのが、「広告主にターゲティングツールを売り込む」というミッションだ。パブリッシャーのサイトで広告を流す場合、社内で構築したデータならサードパーティ識別子よりも必ずよい結果を出せるというのが謳い文句だ。
コンデナスト(Condé Nast)とボックス・メディア(Vox Media)によると、そのセールスピッチはたいてい功を奏し、広告主はファーストパーティデータの採用に踏み切るという。現在、同じようなアプローチを取っているのがドットダッシュ・メレディス(Dotdash Meredith)だ。サードパーティCookie最後の日が刻々と迫るなか、インテントターゲティング技術を使用したツール「D/Cipher」を新たにローンチし、広告主を取り込もうと画策している。
ローンチされるパブリッシャーの広告ターゲティングプラットフォーム
コンデナストは自社データと広告ターゲティングプラットフォーム「Spire」を2019年にローンチした。この年はボックス・メディアもファーストパーティのデータソリューション「Forte」を発表し、2020年3月、正式にリリースしている。どちらのプラットフォームも、作られたのはGoogleのブラウザ「Chrome」からサードパーティCookieを徐々に排除すると発表する前で、サードパーティベンダーを使うよりも自社インベントリー(在庫)の売上を伸ばす取り組みとして行なわれた。
また、ドットダッシュ・メレディスもD/Cipherの公開を始めている。このインテントターゲティングツールは、150万件におよぶ同社の記事を集めて作られたコンテクスチュアルデータに基づき、構築されたものだ。
GoogleがついにChromeからサードパーティCookieを排除する具体的な動きに出ており、結果(2024年第1四半期に全世界のトラフィック1%の排除から始まり、2024年末までに完全排除)、広告主のCookie依存は急激に薄れている。パブリッシャー各社にしてみれば、自社のファーストパーティデータプラットフォームが、サードパーティCookieに代わる有望な選択肢として採用されているのかがよくわかるだろう。
では、これら広告ターゲティングプラットフォームの具体的な結果はどうなのだろうか。
パブリッシャー各社は年単位とはいかないまでも、何カ月もかけて自社でファーストパーティデータを構築してきた。そのパブリッシャーが熱心に取り組み続けているのが、「広告主にターゲティングツールを売り込む」というミッションだ。パブリッシャーのサイトで広告を流す場合、社内で構築したデータならサードパーティ識別子よりも必ずよい結果を出せるというのが謳い文句だ。
コンデナスト(Condé Nast)とボックス・メディア(Vox Media)によると、そのセールスピッチはたいてい功を奏し、広告主はファーストパーティデータの採用に踏み切るという。現在、同じようなアプローチを取っているのがドットダッシュ・メレディス(Dotdash Meredith)だ。サードパーティCookie最後の日が刻々と迫るなか、インテントターゲティング技術を使用したツール「D/Cipher」を新たにローンチし、広告主を取り込もうと画策している。
ローンチされるパブリッシャーの広告ターゲティングプラットフォーム
コンデナストは自社データと広告ターゲティングプラットフォーム「Spire」を2019年にローンチした。この年はボックス・メディアもファーストパーティのデータソリューション「Forte」を発表し、2020年3月、正式にリリースしている。どちらのプラットフォームも、作られたのはGoogleのブラウザ「Chrome」からサードパーティCookieを徐々に排除すると発表する前で、サードパーティベンダーを使うよりも自社インベントリー(在庫)の売上を伸ばす取り組みとして行なわれた。
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また、ドットダッシュ・メレディスもD/Cipherの公開を始めている。このインテントターゲティングツールは、150万件におよぶ同社の記事を集めて作られたコンテクスチュアルデータに基づき、構築されたものだ。
GoogleがついにChromeからサードパーティCookieを排除する具体的な動きに出ており、結果(2024年第1四半期に全世界のトラフィック1%の排除から始まり、2024年末までに完全排除)、広告主のCookie依存は急激に薄れている。パブリッシャー各社にしてみれば、自社のファーストパーティデータプラットフォームが、サードパーティCookieに代わる有望な選択肢として採用されているのかがよくわかるだろう。
数字でも結果を出す
ローンチから3年余りのForteの場合、広告主のForte採用状況を見ると、ボックス・メディアでテクニカルオペレーションのシニアディレクターを務めるブライア・クロマティ氏の話では、2023年第2四半期現在、Forteを利用した広告インプレッションがボックス・メディアのポートフォリオ(オーディオは除く)の広告インプレッション全体における75%を占めるまでに成長したという。また広告パフォーマンスは、サードパーティターゲティングを利用した広告よりも平均50%増加したようだ。
さらにいえば、Forteは広告主が望めば、サードパーティCookieやそのほかのサードパーティセグメントと並行して利用することも可能なのだが、単独で利用されるのが一般的だ。「並行利用すると、混乱するのではないだろうか」とクロマティ氏は言う。Forteのデータ以外のセグメントを加えれば、広告主は「おそらくパフォーマンスの低下を目の当たりにすることになるだろう」。
一方のコンデナストでは、「さまざまなレベルで実施しているキャンペーンのどれにでも漏れなくSpireを重ねている」と、デジタル担当チーフビジネスオフィサーのデブ・ブレット氏は話す。同社の広報によれば、こうしたキャンペーンは、Spireを使用しないターゲットキャンペーンと比較すると、平均でエンゲージメント率が100%増で、とくにSpire主導キャンペーンでは、アテンションクオリティがアテンション計測のモート(MOAT)の業界標準を超え、32%を実現したという。
コンデナストのCNアド・スタジオ(CN Ad Studio)で制作されたカスタムメイドの広告でSpireを利用したものは、アテンションクオリティがMOATの業界基準を超える63.3%に達し、Spireを利用したブランドコンテンツ動画広告は、MOATの平均よりも視聴完了率が30%高いという。
コンデナストがSpireを使用するのは、必ずすべての広告ベンチマークをクリアするためだが、ブレット氏は「広告主とエージェンシーには依然として、簡単に手放せない独自の計測ツールや識別子があることも認識しており、Spireをサードパーティツールと並行して利用することも可能だ」と言う。
また、「コンデナストも競合他社も、ソリューションの進化を止めず、質の高い潤沢なファーストパーティデータをクライアントが手軽に活用できるように尽力している。そのため、今私たちに必要なのは、標準化や遍在化が実現できる方法、採用が可能な方法を模索することである」と続け、「さもなければマーケターは煙にまかれて終わりだろう。おそらく上手くいっていることはわかっても、なぜ上手くいっているのかは決してわからないだろうから」と言い添えた。
サードパーティCookieよりもよい結果を常にもたらす
パブリッシャー各社は、ファーストパーティデータプラットフォームのローンチ当初、広告パフォーマンスの大幅な向上が想定されるファーストパーティデータを使用したキャンペーンで、その効果の立証を重視した。実験はパラレルパス・テスト(つまり、ABテスト)で実施された。まずはオーディエンスの特定のコホートを対象に、サードパーティCookieのような従来のターゲティングツールを使用したキャンペーンを行い、その後、同様のキャンペーンをパブリッシャーのツールで収集したファーストパーティデータのみ利用して、別のオーディエンスに実施したのだ。
目標は、「ファーストパーティデータに基づくオーディエンスターゲティングなら、サードパーティCookieよりもよい結果を常にもたらす」と、広告主に示すことだった。
ブレット氏いわく、5年前、同氏のチームはSpireを広告主に売り込もうと躍起になって市場に打って出たが、今やSpireはコンデナストの広告営業の根幹を担うまでに成長し、クリエイティブなプランニングやコンセプトづくりから広告プレースメントのモデリングまで、クライアントやエージェンシーとの交渉で常に話題にのぼるようになったという。
また、ドットダッシュ・メレディスのCEOであるニール・ボーゲル氏によると、同社もD/Cipherの導入では、コンデナストのSpireと同じようなアプローチを取る予定だという。ただし、「強引に市場に乗り込むつもりはない」と同氏は話す。「それは愚か者がすることだ。そのやり方では決して上手くいかない。私たちがやろうとしているのは、すばらしい代替案を見せること。そうすれば、きっとすべて上手く収まるだろう」。
実用的な顧客のデータの活用法
現在、ボーゲル氏はパラレルパス・テストのような啓蒙的なアプローチを取っている。広告主から、自社のファーストパーティデータやオーディエンスを使ってほしいと頼まれても、ドットダッシュ・メレディスではキャンペーンの一部でD/Cipherを使用し、顧客のデータはもう必要ないと証明して見せている。
ドットダッシュ・メレディスでデータ戦略およびソリューション担当シニアバイスプレジデントを務めるジョエッタ・ゴーベル氏の話では、D/Cipherは初期テストの段階で、サードパーティCookieよりも高いコンバージョン率を出していることが明らかになった。さらに実際のネットワークキャンペーンでは、サードパーティCookieを使ったキャンペーンのほうが、優れたパフォーマンスだったものの、D/Cipherがレコメンドするインテントターゲティングのオーディエンスセグメントは、サードパーティCookieよりもコンバージョン率が126%高く、コンバージョン単価が40%低くなり、よい結果を出したという。
「私たちがやっているのは、新しい行動パターンを少しずつ教えることだ。しかも決して楽な仕事ではない」とボーゲル氏は話し、「というのも、顧客が長い時間と多額の予算をかけた顧客のファーストパーティデータも使いながら、上手くいくとは限らないからだ。『御社のファーストパーティデータは必要ない』というセリフは誰だって聞かされたくない」と言い添える。
しかし一方で、「ドットダッシュ・メレディスは顧客のファーストパーティデータもしばらくのあいだ、使うことになるだろう」と同氏は説明する。ただしその目的は、「我々のターゲティングなら、御社のデータよりもはるかによい結果が出る」と証明するためにすぎない。
Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)
Illustration by Ivy Liu