多くのパブリッシャーは2023年初頭、どんな困難に直面するのかを重々承知していた。なかでも大きなひとつが、第1・第2四半期の広告販売に関する透明性の欠如だった。だが、今年も半ばが過ぎたいま、先行きは明確になるどころか、前期の不確実性が後期も維持される様相を呈している。
「2024年まで完全復活はないとの思いが、かなり強い」と、匿名を条件にDIGIDAYの取材に応えたメディア幹部は、6月初旬に話した。
透明性の欠如は、2023年度のさまざまな状況の原因となっている。プログラマティックセリングに関して、自身の運命を自らが握るパブリッシャー側のよりタイトな販売周期の通常化は、その一例だ。さらには、サブスクリプションといったより安定的な収益源が停滞期に入りつつあり、リテンション向上の必要性が増しているという事実もある。
四半期ごと、月ごとの販売が常態化
コロナ禍初期のタイトな販売周期が2022年、不穏な空気を醸し出していた。多くのパブリッシャーの営業部隊によれば、数ヶ月前に販売されていたキャンペーンが、より短いスケジュールで、ときには広告主が本番を期待する数週間から数日前に販売されるという、極めてタイトなスケジュールを強いられることもあった。
それだけではない。第1四半期末、一部のパブリッシャーは締結が期待される契約が前期の計画から外されてしまわないよう、ありとあらゆる広告費の確保に必死だった。というのも、メディアバイヤー勢が一旦投じると決めた予算を突如、第2四半期に回すことにしたため、パブリッシャー勢は頼りにしていた収入のあてを失ったのだ。
これは決して目新しいことではないが、この流れが常態化し、2023年以降も続くのかとの問いに対し、メディア幹部らは一様に「今後、広告枠のすべてとは言わないまでも、大半を四半期ベースで売ることにはさすがにならないだろう」という反応を見せた。たとえば、アクシオス(Axios)のCEOで共同創業者のジム・バンデヘイ氏は、「これはあくまで一時的なものだと、私は強く思っている」と、今四半期初めにDIGIDAYへ話した。
とはいえ、年周期の習慣が戻り、広告販売の基本になるのはいつなのだろう?
多くのパブリッシャーは2023年初頭、どんな困難に直面するのかを重々承知していた。なかでも大きなひとつが、第1・第2四半期の広告販売に関する透明性の欠如だった。だが、今年も半ばが過ぎたいま、先行きは明確になるどころか、前期の不確実性が後期も維持される様相を呈している。
「2024年まで完全復活はないとの思いが、かなり強い」と、匿名を条件にDIGIDAYの取材に応えたメディア幹部は、6月初旬に話した。
透明性の欠如は、2023年度のさまざまな状況の原因となっている。プログラマティックセリングに関して、自身の運命を自らが握るパブリッシャー側のよりタイトな販売周期の通常化は、その一例だ。さらには、サブスクリプションといったより安定的な収益源が停滞期に入りつつあり、リテンション向上の必要性が増しているという事実もある。
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四半期ごと、月ごとの販売が常態化
コロナ禍初期のタイトな販売周期が2022年、不穏な空気を醸し出していた。多くのパブリッシャーの営業部隊によれば、数ヶ月前に販売されていたキャンペーンが、より短いスケジュールで、ときには広告主が本番を期待する数週間から数日前に販売されるという、極めてタイトなスケジュールを強いられることもあった。
それだけではない。第1四半期末、一部のパブリッシャーは締結が期待される契約が前期の計画から外されてしまわないよう、ありとあらゆる広告費の確保に必死だった。というのも、メディアバイヤー勢が一旦投じると決めた予算を突如、第2四半期に回すことにしたため、パブリッシャー勢は頼りにしていた収入のあてを失ったのだ。
これは決して目新しいことではないが、この流れが常態化し、2023年以降も続くのかとの問いに対し、メディア幹部らは一様に「今後、広告枠のすべてとは言わないまでも、大半を四半期ベースで売ることにはさすがにならないだろう」という反応を見せた。たとえば、アクシオス(Axios)のCEOで共同創業者のジム・バンデヘイ氏は、「これはあくまで一時的なものだと、私は強く思っている」と、今四半期初めにDIGIDAYへ話した。
とはいえ、年周期の習慣が戻り、広告販売の基本になるのはいつなのだろう?
Cookieの消失が急速に迫っているが、パブリッシャー勢に不安はない
ChromeからのサードパーティCookieの排除を2024年第1四半期から開始し、同年末には完了させるというGoogleの発表を受けて(今回は本気らしい)、パブリッシャー勢は「Cookieに代わるものを何にするのか決めたのか」との問いに対し、メディア幹部らはきっぱり「否、あるいはノー」と答えた。ただしこれは、メディア企業勢が皆パニックに陥っている、という意味ではない。
むしろ、欧州と米国の双方で多くのパブリッシャーが描いているのは、メディアバイヤーとブランド広告主によるパブリッシャー各々のファーストパーティツールの採択が進み、究極的には主導権がパブリッシャー自身の手に戻ってくる、という青写真だ。
事実、欧州パブリッシャー勢はいずれの代替識別子(ID5、RampID、UID 2.0など)についても、「多くに歓迎されることはないだろう」との考えを明らかにしている。米パブリッシャー勢は一方、そこまで明確ではないものの、広告主およびメディアバイヤーが代替識別子として何を選ぶのかを見て、自らもそれに倣うつもりでいることが、全体の反応から伺えた。
プログラマティックパイプラインの合理化は複数の苦悩の緩和剤
多くのパブリッシャーは今年度前期、各々のプログラマティックサプライに対してよりハンズオンなアプローチを採りはじめた。その理由は、炭素排出量の削減からインベントリのCPM向上まで、多岐にわたる。
サステナビリティを重んじるパブリッシャー勢は、各々のプログラマティックサプライチェーンの効率化を図ることで、スコープ3排出量(メディア企業のカーボンフットプリント最大の原因)の減少に努めている。これは、リセラーおよびSSPに送られる広告要求の数をパブリッシャーに減少および管理させ、トラフィックシェイピングと呼ばれるプロセスで広告主が買う可能性が最も高いと思われる広告枠のみを提示する過程、いわゆるデマンドパスの最適化に繋がる。
しかも、トラフィックシェイピングはパブリッシャーのカーボンフットプリントを改善するだけではない。多くのパブリッシャーはより高質なインベントリを創造するべく、各々のプログラマティック広告事業内においてさらなる効率化を求めはじめている。これはつまり、広告主が本当に欲しいインベントリー(在庫)だけを販売することを意味し、ゆくゆくは、より高い視認性を持つ広告、よりよい販売率、ひいてはよりよいCPMに繋がることになる。
サブスクリプションの成長は停滞、だがリテンションは最重要
パブリッシャー勢はあいにく、サブスクリプション事業の頭打ちを受けて、一般に安定的かつ継続的とされていた収入減の停滞化を実感している。
ワシントン・ポスト(Washington Post)は、2021年にデジタルサブスクライバー数が300万人に達したが、2022年は停滞し、250万人に終わったと発表した。
一方、ロサンゼルス・タイムズ(Los Angeles Times)は、デジタルサブスクライバー数が2020年の22万5000人から2022年には45万人と、2年間で倍増を記録した。だが、2023年は新たに10万人を加えるに留まり、成長率は約22%と、停滞の兆候を見せた。
そうしたなか、タイム(Time)はサブスクリプション事業からの撤退を決意し、6月にペイウォールを取り払い、かつて有した25万人のデジタルサブスクライバーを手放すことを決めた旨が、当時アクシオスで報じられた。
ロイター研究所(Reuters Institute)が6月に発表した最新のデジタルニュースレポートによれば、世界20カ国の4万人にアンケートを実施したところ、調査時点において、有料でデジタルニュースサブスクリプションを続けている人の平均の割合は、2年連続で17%に留まった。停滞化は広く蔓延している、と考えられるだろう。
[原文:Media Briefing: Mid-year media check-in]
Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)