「購読者を獲得したら、その次の問題は定着」というのは当たり前の話だが、パブリッシャーのサブスクリプション事業では、この自明の理がこれまで以上に重要視されているようだ。
「購読者の定着は、パブリッシャーにとってかつてないほど優先順位が高い」。そう話すのはアトランティック(The Atlantic)でチーフグロースオフィサーを務めるメガ・ガリバルディ氏だ。
サブスクリプションビジネスの成長が停滞するなか、アトランティックやワシントンポスト(The Washington Post)、フィナンシャルタイムズ(Financial Times)といったパブリッシャーが競って力を入れているのは、サインアップ後2カ月から6カ月内に新規購読者を自社の購読サービスにしっかりと取り込むことだ。これで、解約率の減少と購読継続期間の向上が実現できるという。
アトランティックの新たなオンボーディング戦略
アトランティックは2023年初めにダイナミックペイウォールを導入し、同社の広報によると、そのおかげで約4万人の新規購読者を獲得、購読者数は合計90万人に伸びたという。それから7カ月後の現在、アトランティックのサブスクリプションチームは、複数のエンゲージメントプロジェクトに取り組み、ダイナミックペイウォールでコンバージョンした購読者のうち、比較的新しいコホートをしっかりと囲い込もうとしている。
ガリバルディ氏によると、新規購読者がサブスクリプション開始から6カ月以内にニュースレター登録と自社アプリのインストールを済ませていることが、正規年間購読の検討に不可欠だという。なお、当該年間購読料はフルアクセスのデジタル版で80ドル(約1万1200円)、紙版・デジタル版が90ドル(1万2600円)約である。
6カ月を超えた時点で、こうした重要なエンゲージメントメニューを選択せず、サイトにも定期的にアクセスしていない購読者は「休眠購読者」になり、そうした休眠状態の購読者をライフサイクルの中盤から後半の段階で揺り起こそうとしても、効果はないという。「実のところ、休眠状態の購読者を目覚めさせて、エンゲージメントに繋げられるような効果的な方法はなかった」とガリバルディ氏は話す。
このほど、サブスクリプションチームは新たなオンサイトオンボーディング戦略を立ち上げた。対象は、コンバージョン後にサイトに戻ってきた新規購読者で、アプリのダウンロードやニューレターの登録に誘導するという。その段階までいけば、「その後2、3カ月の定着率の向上が期待できる」とガリバルディ氏は指摘する。ただし、86万人を超える総購読者の現在の平均定着率は明らかにしてくれなかった。
このほか、ワシントンポスト、フィナンシャルタイムズの戦略は、以下のとおりだ。
「購読者を獲得したら、その次の問題は定着」というのは当たり前の話だが、パブリッシャーのサブスクリプション事業では、この自明の理がこれまで以上に重要視されているようだ。
「購読者の定着は、パブリッシャーにとってかつてないほど優先順位が高い」。そう話すのはアトランティック(The Atlantic)でチーフグロースオフィサーを務めるメガ・ガリバルディ氏だ。
サブスクリプションビジネスの成長が停滞するなか、アトランティックやワシントンポスト(The Washington Post)、フィナンシャルタイムズ(Financial Times)といったパブリッシャーが競って力を入れているのは、サインアップ後2カ月から6カ月内に新規購読者を自社の購読サービスにしっかりと取り込むことだ。これで、解約率の減少と購読継続期間の向上が実現できるという。
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アトランティックの新たなオンボーディング戦略
アトランティックは2023年初めにダイナミックペイウォールを導入し、同社の広報によると、そのおかげで約4万人の新規購読者を獲得、購読者数は合計90万人に伸びたという。それから7カ月後の現在、アトランティックのサブスクリプションチームは、複数のエンゲージメントプロジェクトに取り組み、ダイナミックペイウォールでコンバージョンした購読者のうち、比較的新しいコホートをしっかりと囲い込もうとしている。
ガリバルディ氏によると、新規購読者がサブスクリプション開始から6カ月以内にニュースレター登録と自社アプリのインストールを済ませていることが、正規年間購読の検討に不可欠だという。なお、当該年間購読料はフルアクセスのデジタル版で80ドル(約1万1200円)、紙版・デジタル版が90ドル(1万2600円)約である。
6カ月を超えた時点で、こうした重要なエンゲージメントメニューを選択せず、サイトにも定期的にアクセスしていない購読者は「休眠購読者」になり、そうした休眠状態の購読者をライフサイクルの中盤から後半の段階で揺り起こそうとしても、効果はないという。「実のところ、休眠状態の購読者を目覚めさせて、エンゲージメントに繋げられるような効果的な方法はなかった」とガリバルディ氏は話す。
このほど、サブスクリプションチームは新たなオンサイトオンボーディング戦略を立ち上げた。対象は、コンバージョン後にサイトに戻ってきた新規購読者で、アプリのダウンロードやニューレターの登録に誘導するという。その段階までいけば、「その後2、3カ月の定着率の向上が期待できる」とガリバルディ氏は指摘する。ただし、86万人を超える総購読者の現在の平均定着率は明らかにしてくれなかった。
読者の間口を広げるワシントンポストのアプローチ
ワシントンポストのチーフサブスクリプションオフィサーであるマイケル・リベロ氏は、「新規購読者を『ワシントン・ポストはビジネスにとって価値あるもの』だと納得させる猶予期間は、我々のチームでは60日から90日に設定している」と話す。その期間を過ぎると、「定着の乖離(かいり)」が大きくなるという。そうなれば、エンゲージメントが達成しにくくなり、解約のリスクが高まる。なお、同氏は具体的な解約率を明らかにしなかった。
リベロ氏のチームが目指すのは、購読者をもっと価値の高いアクション、たとえばアプリのダウンロードやニュースレターの登録につなげることだ。ここまではアトランティックと似ている。しかしワシントンポストでは、こうしたアクションに繋がった時点で、その後のアプローチを変更し、従来の政治記事以外のコンテンツを数多く提供していくという。
読者がすでにアプリをダウンロードしていれば、気候変動関連のコンテンツに興味はないか尋ねるのもその一例だ。こうすることで、「購読者がこの先ワシントンポストに求めるコンテンツの間口が広がるのではないか、読者に新たな習慣が生まれることもあるのではないか」と、リベロ氏は期待を見せる。
さらにリベロ氏は、「登録ウォールがあればコンバージョン前の読者を引きつけられるうえ、一旦購読すると、そのコホートはほかのグループよりも高い定着率をたたき出せる」と話した。ただし、具体的な定着率の比較は提示されていない。
フィナンシャルタイムズはグループで記事を読ませる
フィナンシャルタイムズはB2Bのサブスクリプション事業で、購読者のさらなる定着を目指している。そのリブランディングとして7月10日にFTプロフェッショナル(FT Professional)を発表したところだが、それだけではない。ビジネス向けのサービスを利用している熱心な購読者層の収益性を、さらに高める方法を模索している。
FTプロフェッショナルの購読料は、読者ごとに支払われるのではなく、実際に記事を読んだ読者数、具体的には30日間で9本以上の記事を読んだ契約内の読者の数で決まる。
FTプロフェッショナルのマネージングディレクターであるニック・フォロン氏の話によると、FTプロフェッショナルでは、この条件に適合する読者の数を増やすため、コンテンツ購読よりも、プロ仕様のサービスに特化するようプログラムの設計を変えたという。システムの変更によって、購読者はイベントや交流、ニュースレターにアクセスする機会が増え、さらには、記事にハイライトをかけたり、同僚と共有したりするなど、サイト上で仲間と協力しながら記事を活用することもできるようだ。目標は、読者のサイト滞在時間を延ばすことである。
「何も巨大なワークフローのツールになろうとしているわけではない。ただ、読者のサイト滞在時間が長くなるうえに、そのサイトの価値も高まる方法が数多くあることに気づいたということだ。サイトというのは、単に一人で読むよりもグループで読んだほうが、その価値が高まる」とフォロン氏は説明した。
[原文:Media Briefing: How publishers are racing to engage new subscribers in hopes of improving retention]
Kayleigh Barber(翻訳:SI Japan、編集:島田涼平)
Illustration by Ivy Liu