「市場調査」を新たな収入源に、ニッチメディアの取り組み

ニッチパブリッシャーはみな、オーディエンスを知り尽くしていると豪語する。そして彼らはいま、その知識を収益化する、新たな枠組みの構築に取り組んでいるようだ。

アウトマガジン(Out Magazine)、アドボケート(The Advocate)、プライド(Pride)を運営するプライドメディア(Pride Media)は12月4日、LGBTQコミュニティに特化した市場調査会社、コミュニティマーケティング&インサイツ(Community Marketing & Insights:以下、CMI)の買収を発表。長年にわたり独自の市場調査を行ってきたクオーツ(Quartz)は、いまでは得意先の広告主向けにユーザーリサーチを行う。また、ファーザリー(Fatherly)では、ファーザリーIQと呼ばれる社内リサーチチームが、さまざまな社内プロジェクトを担っており、市場調査プログラムを指揮する人材の確保に大忙しだ。彼らはこうした人材が、広告主をさらに惹きつけると考えている。

市場調査は、ニッチパブリッシャーにとって、マーケターやエージェンシーとの統合を進める手段のひとつだ。広告主と直接取引を行っているなら、市場調査によって新たな予算からの収入を獲得できる。

ただし、調査の独立性をどう保つか、またリサーチがクライアントにとって実際の価値を生むものであることをどう証明するかが、長期的課題になるだろう。広告主やエージェンシーは、パブリッシャーのこうした新たな取り組みに期待しているが、今後の課題も多いとみている。

「パブリッシャーはみな(市場調査が)できるというが、なかでも一部のニッチパブリッシャーは、調査の規模も内容も一級品だ」と、PMGでブランドメディアディレクターを務めるナタリー・セシル・ゲルダート氏は話す。

「これは新たなチャンスだ」

CMIの買収により、プライドメディアはさまざまな新事業への足がかりを得た。買収前の両社の顧客は多少重複していたが、消費者調査は通常まったく別の予算から支出されるため、プライドメディアは主要クライアントと直接つながる新たな手段を獲得した。加えて、まったく新しい角度からの発信をはじめるために、マーケティングサービスチームを強化し、新展開に備えている。

「新たな顧客獲得のチャンスだ」と、プライドメディアのCEO、ネイサン・コイル氏はいう。「広告主というくくりは狭すぎる。CMIは以前から、外国政府や主要NPOと仕事をしてきた。これらは消費者調査とは無関係だ。一企業の観点からみて、エキサイティングな経験だ」。

一方、調査は広告と組み合わせても効果的であり、そのことがパブリッシャーに難問をつきつける。リサーチを単独のプロダクトとして販売した方がいいのだろうか? それとも、メディアを中心に据えた大規模パッケージの一要素とすべきなのか?

コイル氏は、断固として単独のプロダクトとみなす立場だ。プライドメディアではじめて調査のみのオファーを広告主に売った営業担当者にはボーナスを出すと、コイル氏はいう。

自社ブランディングの好機

一方で、コイル氏の逆をいくパブリッシャーもいる。クオーツは以前からオーディエンス調査を実施してきたが、約1年前、同社に数百万ドル規模の広告費を払う広告主に対し、クオーツのオーディエンスとつながりを築く支援することを目的とした、パートナーシップチームを設立した。多くのクライアントがオーディエンスデータに基づいてインサイトを得るクオーツの手法に関心を示したため、いまではクオーツは、彼らと提携し、調査プログラムの改善を随時行っている。独自の市場調査に加え、こうしたプロジェクトを年間6~8件運営していくつもりだと、クオーツのインサイト・ブランド戦略担当ディレクター、エルネスト・エンリケス氏は説明する。

クオーツは調査を自社ブランディングの好機と捉えているため、調査の出典は明確に示される予定だ。「調査主体がクオーツであることはいつでも明示する」と、エンリケス氏は語った。

ファーザリーも、市場調査をチャンスとみなしている。同社は編集、営業、オーディエンス開発など、社内のさまざまな部署と協働するインサイト部署「ファーザリー IQ(Fatherly IQ)」の増員を計画中だ。

ファーザリーは、調査を単独のプロダクトとして販売する可能性を除外していないものの、現段階では多くの部署にとって使い勝手のいいプログラムを設計することを優先している。たとえば、親たちがテクノロジーをどう利用しているかを理解することは、コンテンツ戦略を練る編集者だけでなく、ブランデッドコンテンツを売り込むクリエイティブ部門にとっても、有益であるだろう。

「カンター(Kantars)を相手に世界で競い合いたいわけではない」と、ファーザリーのCEO、マイケル・ロスマン氏は話す。「我々には、バンドルであるからこそ差別化できるオファーがある」。

広告主にアクセスしやすい形

薄利で競争の激しいブランデッドコンテンツの世界とは異なり、小規模な市場調査チームは、うまくいけば大口契約をとりつけ、比較的低コストで事業を実行できる。市場調査プログラムはふつう数十万ドル単位で販売され、実行チームは比較的小規模だ。プライドメディアが買収したCMIは、定期的な調査協力者は大勢いるものの、フルタイム社員は3人だけだ。クオーツで調査を担当する部署、クオーツ・インサイツ(Quartz Insights)は、フルタイム社員4人からなる。プライドメディアCEOのコイル氏は、同社の現在の売上は広告に支配されているが、将来的には消費者調査が10~15%を占めるようになると考えている。

パブリッシャーがこうした部署を強化する理由のひとつは、デジタルメディアのエコシステムにいるプレーヤーが誰しも、広告主にアクセスしやすい形に生まれ変わろうとしているからだ。これには、クライアントのための市場調査に関してパブリッシャー頼みの、エージェンシーも含まれる。

しかし、インサイトを提供することは、とりわけニッチパブリッシャーにとって重要だ。なぜなら、調査によって、ブランドが特定のオーディエンスとのつながりを築くことにもっと時間を使うべきだという主張に、正当性をもたせることができるからだ。そう話すのは、360iでバイスプレジデントとグループメディアディレクターを兼任する、ジェス・サンフィリッポ氏だ。「ニッチメディアに広告費を使いさえすれば、そのオーディエンスと本物の意義あるエンゲージメントを構築できるという考えは甘すぎる」と、サンフィリッポ氏は語った。

Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)