「サーバーサイドのヘッダー入札」は、一部パブリッシャーのあいだではホットな話題かもしれない。だが、あらゆる新しい技術と同様に、サーバーサイドのヘッダー入札には弱点がある。サーバーサイドのヘッダー入札がもたらす見返りにそれだけの価値があると、すべてのパブリッシャーがまだ確信しているわけではない。
「サーバーサイドのヘッダー入札」は、一部パブリッシャーのあいだではホットな話題かもしれない。だが、あらゆる新しい技術と同様に、サーバーサイドのヘッダー入札には弱点がある。サーバーサイドのヘッダー入札がもたらす見返りにそれだけの価値があると、すべてのパブリッシャーがまだ確信しているわけではない。
サーバーサイドのヘッダー入札という用語は、ヘッダー入札の新たなステージを表すのに用いられている。従来のヘッダー入札は、「クライアントサイドのヘッダー入札」や「ブラウザーベースのヘッダー入札」として知られている。
こうしたヘッダー入札がパブリッシャーのあいだで人気になったのは、複数のバイヤーに同時に入札させて、より多くの収益をプログラマティック広告から引き出せるからだ。当然ながら、収益向上を目の当たりにしたそうしたパブリッシャーは、この方法で販売できる広告枠を増やしたいと考える。そして、それにはもっと多くの需要元を引き込む必要がある。
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そこで問題になるのが、デマンドパートナーが増えると、入札の窓口で遅延(レイテンシー)が生じる可能性が高くなり、パブリッシャーのページ読込速度が遅くなって、結果的にユーザー体験が低下してしまうことだ。
サーバーサイドのヘッダー入札は、そうした頭痛の種を取り除いてくれる。オンラインオークションに起因する技術的負担をパブリッシャーが担う代わりに、重荷をサードパーティに移せるものだ。重荷を移す相手としては、テクニカルベンダーやクラウドベースのヘッダー入札ソリューションもリリースする構えのAmazonなどが考えられる。
サーバーサイドのヘッダー入札ならパブリッシャーは、ページ読込速度を落としたり、入札窓口で遅延を生じさせたりせずに収益を増やせる。デマンドパートナーの数を好きなだけ増やし、ヘッダー入札で取引できる広告量を引き上げることもできる。
だが、常にそうであるように、あらゆる新しい技術の誕生は、それだけでバラ色の未来になるというわけではない。
パブリッシャーの意見
欠点のひとつは、ユーザーの同期に絡む問題だ。ある新聞社のプログラマティック担当責任者は匿名を条件に、「サーバーサイドのヘッダー入札を運用するサプライサイドプラットフォーム(以下SSP)は、もうユーザーのブラウザーにアクセスできなくなり、デマンドサイドプラットフォーム(DSP)がやっているのと同じように、価格を提示してブラウザーから呼び出しをはじめている1社と同期しなければならなくなる」と語る。
「心配なのは、マッチ率の低下や、ユーザーとマッチできないことによる収益の悪化につながりかねない点だ」と、この人物は言葉を続けた。
エージェンシーの意見
また、Amazonによるクラウドベースのヘッダー入札への移行がパブリッシャーにとって朗報になると、すべてのエージェンシーが確信しているわけではない。まず、クライアントサイドのヘッダー入札を利用している(つまり、需要元が自社ページのヘッダーに組み込まれている)パブリッシャーには、需要元が丸わかりで、どのパートナーの入札を選ぶか管理できる。「いささか無様だが、それがエンドツーエンドというものだ」と、独立系メディアエージェンシー、VCCPメディア(VCCP Media)の会長ポール・ミード氏は語る。
たとえば、Amazonのようなベンダー1社にサーバーサイドのソリューションを求めると、入札したパートナーが把握できなくなる恐れがある。「AmazonやGoogleなど、サーバーサイドのソリューションの提供者からただ提供されるだけになる。だから、得るものもあれば、失うものもある」と、ミード氏は述べた。
ベンダーの意見
少し違った見方をする者もいる。いくつかのアドテクベンダーは、サーバーサイドのヘッダー入札は、パブリッシャーよりもSSPにダメージを与えかねないと、大きな懸念を感じているのだ。フリーランスのアドテクコンサルタントであるポール・ガビンス氏によると、ページ上で起きていることが各ベンダーにわかるクライアントサイドのヘッダー入札と違って、「サーバーサイドのヘッダー入札では、ベンダー1社だけが需要を取りまとめてから、ブラックボックスのような環境とも思えるオークションを運営する」からだという。
SSPにとってそれが悪材料なのは、デジタル広告市場のまさにその分野が、競争の激化によってコモディティ化が進んでいるからだ。したがって、パブリッシャーのためにサーバーサイドでオークションを運営しているベンダーが、自分たちの都合のいいようにオークションを操作している可能性があるという懸念が高まっている、とガビンス氏は付け加えた。「つまり、ほかの皆の入札を見てから、自社の入札額を引き上げてインプレッションを勝ち取っている可能性がある」。
サーバーサイドの入札の実情など、ヘッダー入札の詳細については、2月7日にニューヨークでホット・トピック:ヘッダー入札というイベントを開催した。ターナー(Turner)、ハースト(Hearst)、ワシントン・ポスト(The Washington Post)、メレディス(Meredith)などの企業幹部が講演を行った。
Jessica Davies(原文 / 訳:ガリレオ)
Image by Getty Image