サードパーティCookieがなくなることを、パブリッシャーたちは受け入れようとしている。ここからどこへ進むのか、が喫緊の問題だ。その答えは、登録されたユーザーのデータを使って自社データを集めること、となる可能性がますます高くなっている。そこで注目を集めるのがeメールのニュースレターだ。
サードパーティCookieがなくなることを、パブリッシャーたちは受け入れようとしている。ここからどこへ進むのか、が喫緊の問題だ。その答えは、登録されたユーザーのデータを使って自社データを集めること、となる可能性がますます高くなっている。そこで注目を集めるのがeメールのニュースレターだ。
「ニュースレタープロダクトが急速に増えているのはそのためだ。顧客と企業のあいだでの価値交換を生み出すことが目的だ。ここでの価値とは、eメールアドレスとなる」と先日、英DIGIDAYが主催するパブリッシング・サミット・ヨーロッパ(Publishing Summit Europe)においてパブリッシングエグゼクティブのひとりは語った。「パブリッシャーたちはより洗練させるだろう。現時点でのニュースレターはかなり要領の悪い形になっている」。
サードパーティによるCookieの代替は何か、オープンマーケットプレイスにおいてオーディエンスをどのように効果的に特定するかに関するGoogleの判断を待つあいだ、パブリッシャーとデジタルエコシステムの当事者たちは宙ぶらりんな状態となっている。これにより、「自分たちのオーディエンスを所有する」方法を戦略的に考え、より多くのメール登録を促進する必要があるのだ。
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短期間で低コストに制作
ニュースパブリッシャーたちは、いま注目を集めているトピックに関するニュースレターを、数週間の準備によって低コストで生み出すことが可能なポジションにある。エコノミスト(The Economist)は今後数週間でコロナウイルス専門のニュースレターをローンチするニュースパブリッシャーの1社だ(ほかには、ザ・ニューヨーク・タイムズ[The New York Times]やクォーツ[Quartz]がある)。
サブスクリプションが牽引するビジネスモデルにとって、ニュースレターはサブスクリプションの顧客維持の助けになると証明されている。160万人のプリントとデジタルのサブスクリプション会員を持つエコノミストが改善しようと尽力しているのもそこだと、同社プロダクト部門バイスプレジデントのレミー・ベッチャー氏は言う。12月以降、彼らは米国選挙、そして気候危機のふたつについて、トピック専門のニュースレターをローンチしている。これらがほかの日刊・週刊のニュースレターに加わる形だ。
トピック専門のニュースレターはその他のニュースレターと比べてメール開封率が20%高く、クリックスルー率も2倍となる。全体的にトラフィック源としてTwitterをニュースレターが越えたと、ベッチャー氏は言う。
複数の収益源ももたらす
ニュースレターは複数の収益源をもたらす。たとえば、ファイナンシャル・タイムズ(Financial Times)は8種類のサブスクライバー限定のニュースレターと、数多くのその他のニュースレターを運営」しており、それらを通して自社における登録データを集めることに加え、それをFT.com上のスポンサードコンテンツとリンクさせるネイティブ広告スペースを通してマネタイズを行っている。コマーシャルの自動化とプログラマティックのディレクターであるジェシカ・バレット氏によると、ニュースレターはパブリッシャーにとって独立の収益源と見なされているようだ。
「ニュースレターに参加する読者の数はますます増えている。彼らは我々にとって今年の大きなフォーカスである」と、パブリッシング・サミット・ヨーロッパの壇上で彼女は語った。「コンテキスト(文脈)ターゲティングについて議論しているし、オーディエンスターゲティングから離れることについても議論している。また関連性の高い、文脈のある環境で面白いネイティブ要素を入れ込むことができるスポンサードコンテンツについても話している。ニュースレターはその完璧な例だ」。
ニュースレターは、ファイナンシャルタイムズが勝手に読者を登録しているのではなく、希望する読者が参加しているので開封率も高い、と彼女は説明した。
実行不可能な企業もある
ニュースレターの数を増やすことは、実行可能なソリューションではないパブリッシャーも存在する。また、どこが読者にとっての飽和状態かも明確ではない。パブリッシャーがプライベートマーケットプレイスでの取引を増やし、コンテキストターゲティングのオプションを強化することが盛り上がっているなかで、Google ChromeがサードパーティのCookieを排除したときに生じる収益損失を、ニュースレターが回復してくれるわけではないだろう。大手パブリッシャーたちは台風を乗り切ることができたとしても、資本力のあるパブリッシャーと、そうでないパブリッシャーの格差は広がるはずだ。
「パブリッシャーは多くの血を流すことになる。特にバリューが低い、エンターテイメント関連のコンテンツ、目的を持たない人々、そして(トラフィックにおける)鞘取り行為をするパブリッシャーは特に(ダメージを負う)」と、パブリッシャーのエグゼクティブのひとりは語った。
Lucinda Southern(原文 / 訳:塚本 紺)