世界最大のビジネスSNS「LinkedIn(リンクトイン)」は、広告収入の45%をネイティブアドの一種「インフィード広告」で得ている。フィード内に掲載する広告にFacebookのような規模感はないが、ユーザーの経歴という強力なパーソナルデータを保有するため、絞りこまれた顧客にリーチすることができることが売りだ。
世界最大のビジネスSNS「LinkedIn(リンクトイン)」は、広告収入の45%をネイティブアドの一種「インフィード広告」で得ているという。同サービスのフィードは、Facebookフィードのような規模感はないが、個々のユーザーのキャリアという強力なパーソナルデータが反映されている。そのため、より絞りこまれたターゲットの顧客にリーチできるのだ。
2003年、LinkedInが専門職ネットワーキングサイトとして創業されたときは、どこにでもある小さなサイトに過ぎなかった。しかし、やがて企業やビジネスパーソンの関心を集め、2006年から黒字転換。事業は次第にプラットフォーム化した。2015年6月のユニークビジター数は約1億1000万人、前年同月比で46%も伸びている(comScore調べ)。
LinkedInの主な収入源は現在も、求職者の情報をリクルーターに販売する仲介業だが、広告部門にも力を注いでおり、現在の売上の20%は広告収入となる。
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広告収入全体の45%が「スポンサード・アップデート」
2013年、LinkedInは「スポンサード・アップデート(Sponsored Updates)」と呼ばれる「インフィード広告」を売り出した。この商品は、マイクロソフトやホテルチェーン「ホリデイ・イン・エクスプレス」などによる利用実績がある。
2015年7月30日に発表された収支報告書によると、この「スポンサード・アップデート」はもっとも急激に成長している広告商品であり、今年の第2四半期で6300万ドル(約76億円)を売り上げた。同社の広告収入全体の45%に上る。
LinkedInの「スポンサード・アップデート(Sponsored Updates)」広告
「スポンサード・アップデート」は批判されることもある。論点のひとつは、企業が望むリーチを提供できるか。もうひとつがFacebookのような大規模プラットフォームの方が広告効果を期待できるのではないか、だ。
しかし、「スポンサード・アップデート」は急成長を遂げた。LinkedInのマーケティング・ソリューション部門、商品企画部長であるラッセル・グラス氏は、「インフィード広告」はLinkedInが開発を進めるメディア運営プラットフォームの拡大に繋がり、2014年2月から社員の多くがこの開発に携わっていると話す。
「最終的にLinkedInを、ビジネスパーソンがビジネス上の目標を高め合い、仕事を成功させるために集う場所にしたいと考えている」とグラスは話した。「この目標を達成するにはコンテンツの質と評判を高め、顧客からの引き合いを欠かすことはできない」
「スポンサード・アップデート」は、モバイルの画面一杯に表示されるため、モバイル機器にもっとも適していると、グラス氏は説明する。LinkedInに接続するデバイスの半分以上は、モバイルだからだ。
なぜ、LinkedInのフィードは広告価値があるのか?
LinkedInの顧客であるソフトウェア開発会社「パーコレート(Percolate)」。成長戦略担当者のクリス・ボールマン氏によると、LinkedInはフォロワー約1万2000人程度にしかリーチできないが、ほかに類を見ない登録メンバーの質とターゲティング能力を評価しているという。結果として、パーコレートにとってLinkedInは最大のデジタルマーケティングの対象となっているのだ。
「LinkedInでプロフィールをごまかした場合、社会的に厳しい目が向けられる。そのため、私たちのメッセージが的確な人に届けられていると分かる」と、ボールマン氏は語った。「今までオーガニックリーチを見てきましたが、結果はかなり良いものだった。私たちが何かを投稿すると、パーコレートのフォロワーの半分に届く。Facebookでは良くて10%にしか届かない」
LinkedInはB2B広告収入を得るパブリッシャーの手強い競合になるかもしれない。ニューヨークの広告代理店「The Gate Media」のパフォーマンス・マーケティング部長クニック・カペイディア氏も「スポンサード・アップデート」を利用している1人だ。「もしニッチなB2B読者を追いかけるならLinkedInほど適切なプラットフォームはありません」とカペイディア氏は話した。
Lucia Moses (原文/訳:小嶋太一郎)
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