ニュース業界の後ろ盾になりつつある、GoogleとFacebook : 好むと好まざるとにかかわらず

GoogleとFacebookは、長い年月、二羽の兎を追ってきた。ユーザーを獲得し、維持するためには、パブリッシャーのコンテンツが欲しい。だが、そのコンテンツに金は払いたくない。両社とも、パブリッシャーにコンテンツを開発してほしい、あるいは彼らが打ち出す新しい製品を試してほしいと望みはするが、その製品をテコに、新事業を構築することは望まなかった。

昨年の早い時期、Facebookでニュース業界との窓口役を務めるキャンベル・ブラウン氏は、パブリッシャーに対して厳しい言葉を投げた。「Facebookは、皆さんが抱える問題をすべて解決できるわけではない」。ブラウン氏は、部屋を埋め尽くした雑誌メディアに向かって、そう告げた

だが今日、共通の景気後退のただなかで、FacebookとGoogleはニュースメディアの将来において、より大きな役割を果たそうとしている。この2強は、ローカルメディアを支援するために、このさき数カ月で両社合わせて2億5000万ドル(約267億円)近くを拠出する。その内訳は、緊急支援金、パブリッシャーのサイトへの広告出稿に充てる追加のマーケティング費用、およびGoogleが通常時にアドサーバから徴収する手数料の免除などだ。Googleによると、支援金の給付対象のパブリッシャーは、少なくとも4000社を見込んでいるという。一方、Facebookはすでに、200の編集部に対し、1600万ドル(約17億円)を給付している。

さらに、GoogleとFacebookは、いずれもニュースメディアにとっては大口の広告主だ。そして彼らのようなパブリッシャーは、ほとんどのカテゴリーが壊滅状態でも、テクノロジーはひとつの頼りになるカテゴリーであると見ている。

「我々が広告ツールで稼ぐ金は、全面的にパブリッシャーの成功に依存している」。そう語るのは、Googleのニュース担当のバイスプレジデント、リチャード・ジングラス氏だ。

2社が受けてきたプレッシャー

他方、GoogleとFacebookも、あるプレッシャーに直面している。パブリッシャーにコンテンツの使用料を直接支払えという外国政府からのプレッシャーだ。この4月、オーストラリア政府は、両社に対し、同国のパブリッシャーにコンテンツの使用料を支払わなければならないという裁定を下した。同じく4月、この裁定にさきだって、フランス政府の競争監視機関も、Googleに対して、検索結果の表示でパブリッシャーのコンテンツを再利用した場合、同社は使用料を支払う義務を負うと裁定している。

米国の独占禁止法(反トラスト法)は、米国のパブリッシャーたちがこのような交渉で連携することを禁じているが、このような活動を支援する取り組みに関心を示すものもいる。たとえば、2週間前、ニューヨーク・タイムズ紙(The New York Times)のベン・スミス氏が、ある書簡に関する書き込みをTwitterに投稿した。この書簡は、デンバー・ポスト紙(The Denver Post)などの新聞を所有するヘッジファンド、オールデン・グローバル・キャピタル(Alden Global Capital)のヒース・フリーマン最高経営責任者(CEO)が、米国新聞社のCEOたちに宛てたもので、GoogleとFacebookに本来支払うべき報酬を支払わせようというキャンペーンに賛同を求める内容だった。

GoogleとFacebookは、多くの場合、ニュースメディアのもっとも重要な事業パートナーであり、流通パートナーでもあるのだが、「ほとんどのパブリッシャーが現状に不満を抱いている」と、ロイター・インスティテュート(Reuters Institute)のディレクター、ラスマス・クライス・ニールセン氏は指摘する。Googleがジャーナリズムを支援する取り組みとして展開するGoogleニュース・イニシアチブ(Google News Initiative:GNI)は、今月、ロイター・インスティテュートが主導する、独立系ニュースメディアに対する緊急救援活動を支援すると発表した。「彼らは、現状が不十分で、不公平だと感じている」。

具体的なパブリッシャー支援内容

Facebookは、5月第2週、緊急支援金の給付を開始したが、先行き不透明なニュースメディアはこのような支援を必要としている。たとえば、ロサンゼルス・タイムズ紙(The Los Angeles Times)は4月に、新型コロナウイルスの感染拡大が同紙の広告収入をほとんど「一掃」してしまった、と従業員に告げている。

Facebookが行った第1回の支援金給付で、一部メディアの受給を援護したローカルメディア協会(Local Media Association)によると、「2000件を超える申請があった」という。同協会のプレジデントを務めるナンシー・レイン氏いわく、「彼らの多くは、この支援金がなければ、廃業するしかない」ありさまだった。

FacebookやGoogleにしてみれば、これまで投じてきた莫大な労力と資金が水泡に帰しかねない状況だった。両社は、パブリッシャーが持続可能なビジネスモデルを確立するのを支援するために、それぞれ3億ドル(約321億円)を拠出すると明言している。この資金は、ローカルメディアによるコンテンツの有料化やブランド化などの取り組みに投じられ、具体的には、Facebook Watch(ウォッチ)向けの動画制作や、Googleのサブスクリプション支援ツール「Subscribe with Google(サブスクライブ・ウィズ・グーグル)」の試験運用などを支援している。

「サブスクリプションを促進し、我々がこれまで行ってきた取り組みを継続することが、向かうべき方向と信じてはいるが、事業の継続で精一杯のときに、このような話をするのは不可能だ」。取材に応えたFacebookのブラウン氏はそう語る。

「この業界は非常に危険な場所へ」

新しいビジネスモデルに対する投資や、その投資が支える各種の施策は、それに参加する者からは高く評価されている。その一方で、前進するのは一部のパブリッシャーに限られる。多くのニュースメディア、とりわけ小規模なパブリッシャーは、活字広告への依存から抜け出せずにいるのだ。

「[ここ数週間]ローカルニュースの各種業界団体と数多くの会合を行ったが、あるひとりがこう言った。『これはデジタル戦略に注力せよという我々への警鐘だ』」。Googleのジングラス氏は、そう打ち明ける。「なんとも嘆かわしい発言だ」。

先行き不透明な現状で、複占(デュオポリー)を形成するFacebookとGoogleが、ニュースメディアを直接支援せよという要求を退けるのは難しいかもしれない。「この業界は非常に危険な場所へと向かっている」と、業界団体のニュース・メディア・アライアンス(News Media Alliance)で議長を務める、デヴィッド・シャバーン氏は述べている。「両社が何らかの補償制度を設けるべきだという要求は高まるだろう」。

事業の多角化と、プラットフォームとの安定した関係構築に成功したパブリッシャーにとっては、支援の継続は好都合だ。

「みな、これが攻めの一手なのか、守りの一手なのか、議論したがるが、私に言わせれば、そんなことはどうでもいい」と、テキサス・トリビューン紙(The Texas Tribune)のエヴァン・スミス最高経営責任者は言う。同紙は、FacebookとGoogleの両方の救援基金に給付申請を行った。「私の仕事、我々の仕事は、プロのジャーナリズムを守るために、できるかぎり多くの金を集めることだ」。

MAX WILLENS(原文 / 訳:英じゅんこ)