サロン・メディア・グループ(Salong Media Group)がFacebookのアルゴリズム変更によるダメージにどう対処しているか。ここに注目すると、パブリッシャーたちがいかにコントロールできない外部のアルゴリズムにますます依存してきており、それに伴うリスクも増加していることが見えてくる。
Facebookが頻繁に行うアルゴリズム変更は、多くのパブリッシャーにとって悩みのタネであり、心配の元となっている。アルゴリズム変更の影響が公にされることはあまりない。しかし、株式公開されているサロン・メディア・グループ(Salong Media Group)は業績を公開しており、そこには明らかな悪影響が見て取れる。
直近の年間業績発表は6月23日に公開された。それによると、収益は対前年比で34%減少し、460万ドル(約5.2億円)に、そしてトラフィックも23%減少という結果になったという。これらの減少に対して、サロン・メディア・グループが指摘している要因はFacebookとプログラマティック広告だ。
彼らがFacebookのアルゴリズム変更によるダメージにどう対処しているか。ここに注目すると、パブリッシャーたちがいかにコントロールできない外部のアルゴリズムにますます依存してきており、それに伴うリスクも増加していることが見えてくる。
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アルゴリズム変更の影響
Facebookは2016年6月にパブリッシャーの投稿よりもユーザーの友人や家族による投稿を優先して表示するようアルゴリズムを変更した。この時点でジョーダン・ホフナー氏は「サロン」のCEOになって、まだ1カ月しか経っていなかった。
このアルゴリズム変更以前は、「サロン」のFacebook上の業績は良かったと、「サロン」の元コミュニティマネージャーであるアンマリー・ドゥーリング氏はいう。「どうやってコメント欄における議論のバランスをとって、安全な場所にするか、力を入れて探っていたところだった。政治的な議論がたくさんあった」。変更前の「サロン」訪問者の約1/4はFacebookからで、1/3が検索、1/3がダイレクトなトラフィックで来ていた。
アルゴリズム変更がされて以降、「サロン」の平均月間トラフィックは23%減少し、ユニーク訪問数は1270万となった。これは前年の1660万と比べると大幅な減少だ。特にトランプ関連のニュースでほかのパブリッシャーたちのトラフィックは大幅に増えたにも関わらずこの数字は驚きである。もっとも少なかったのは9月の960万だった。

「サロン」の複数プラットフォームからのUUの推移 提供:コムスコア
プラットフォームの考え方
「極めて劇的な変化だった。けれど結局のところ何ができるというのか。人生は公平ではない。恵まれた環境にいるからといって成功できるわけではない」とホフナー氏。
経営的に苦しんでいた進歩的なニュースコメンタリーサイトである「サロン」がホフナー氏を雇ったのは、シンディ・ジェファーズ氏と入れ替えるためだった。株式公開された企業としてのメディア企業として、「サロン」にはプレッシャーもある。その点、元NBCニュースプロデューサーであり、GoogleとYouTube出身であるホフナー氏にとって、プラットフォームの考え方というのは馴染みのあるものだった。
「プラットフォーム出身なのでFacebookが何をしようとしているのかは理解できる。一般的にいうと、そしてこれはソーシャルメディアに限った話ではないが、ほかのプラットフォームの上に乗っかった状態のビジネスをするときには非常に気をつけなければならない。結果的には、自分のコントロールの効かないところで何かが起きてしまうかもしれない」。
注力&撤退した分野
当時の多くのパブリッシャーと同様に、「サロン」もFacebookのライブ動画やオンデマンド動画に参入しはじめた。これはテレビと動画の経歴をもつホフナー氏にとっては得意分野だった。「サロン」は毎週ライブ動画を投稿した。中身はセレブや政治家のインタビューがほとんどであった。それによってFacebook上のトラフィックは成長したという。が、マネタイズはまだできていない。しかし、ビデオチームにはさらにリソースを割くことにしている。現在、ビデオチームは6人編成。「サロン」では1日45本ほどのテキスト記事が公開され、これがメディアにとっての根幹であることは変わりないが、それでもいまや日に6つのビデオを投稿している。それらは「サロン」のライターがニュースで話題の人をインタビューするもので、徐々に増えているのはミニドキュメンタリーのシリーズだ。
小規模サイトの「サロン」にとってダイレクト広告やネイティブ広告を売るのは困難だ。そのため収益のフォーカスはプログラマティックに移りつつある。プログラマティックは販売量に対して、必要なスタッフの数も少なくてすむ。ビデオに力を入れることでプログラマティックのプリロール広告率は対前年比で25%向上した。
ホフナー氏によると、ビデオはトラフィックにも貢献している。コムスコア(ComScore)のデータによると、トラフィックは5月に930万になり、対前年比で4%の増加となっている。アンソニー・バーデイン(有名シェフ)、ジョン・リスゴー(俳優)、ジル・スタイン(政治家)といった有名人たちが登場したことが要因だろうとホフナー氏は分析している。
そんななかで「サロン」が意図的に追いかけていないトレンドがFacebookインスタント記事だ。パブリッシャーがFacebook上に直接ポストする形式になっていて、読み込みの速さが売りの、このオプション。Facebookとしては、プラットフォーム上に直接投稿してもらった方が良いため、インスタント記事に参加するパブリッシャーたちをFacebookは優遇していると広く信じられている。「サロン」も1年前に参加したが、自社サイト上で直接広告を売るほうが収益につながるとし、撤退した。
Facebookとの付き合い方
ホフナー氏が入社した当時のスタッフは、同氏が「サロン」の進歩的な個性を薄めてしまうのではないか、そして会社の業績を改善するために人員を削減するのではないかと懸念した。ホフナー氏の下、「サロン」は51人だったスタッフを40人にまで減らしている。解雇になったライターのなかには「サロン」における有名ライターも含まれていた。彼らの代わりとなる人材はもうほとんど見つかった、とホフナー氏はいう。マシュー・シェフィールド、ガブリエル・ベル、そしてアリ・ジョセフがそれだ。編集員も以前より2人少ない状態だが、さらに採用する予算があるとのこと。
「サロン」はFacebook上でさらに多くの画像や投票ポストを投稿している。こういった投稿を現アルゴリズムは好むからだ。しかし、デイブ・デイリー氏が去年6月に退社してから編集長代理も兼任しているホフナー氏によると、Facebookは「サロン」のエディトリアル戦略をコントロールしてしまっているわけではなく、エディトリアルのアプローチはまったく変わらないままだという。
「Facebookにおけるパフォーマンスは我々が参考にする10項目のデータポイントのうちのひとつだ。問題は我々が一番上手く取り上げることができるトピックとは何か、そしてどんな面白い角度を提供できるか、それをどうやって最善の方法で配信できるか、を見出すことだ」と、ホフナー氏は語った。
Lucia Moses(原文 / 訳:塚本 紺)
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