サイト刷新で「定期購読」20%増、ル・モンドの手法とは

ル・モンド(Le Monde)は、この2年間、読者収入の促進に注力してきたが、その努力は実を結びつつある。

このフランスの新聞社は2018年、20%増となる18万人のデジタル定期購読者を獲得した。これはペイウォール内の有料記事の拡大と、技術的なプラットフォームの改善、そして2018年11月に実施したサイトのデザイン刷新のたまものだ。

この新しいホームページのデザインは、定期購読者向けのコンテンツをより際立たせたものになっている。ル・モンドには月9.90ユーロ(約1230円)のプレミアムなペイウォールがあり、購読者はル・モンドが厳選したデジタルコンテンツの約37%を閲覧できる。ル・モンドのサイトでは、定期購読済みを示す黄色いロゴが表示されているが、定期購読者は以前、別のサイトのタブに誘導されていた。すべての読者が同じページを見るようにすることで、このコンテンツが課金に値するかどうかを見極めたり、読者が定期購読するための手順を減らしたりするメリットがある。

「我々には、読者と定期購読者双方の体験の統一が必要だった。だから、両者が見るページを同じものにしたのだ」と、イノベーティブ・サブスクリプション部門のトップを務めるルー・グラッサー氏は語る。「人々はパーソナライズを求めているし、たしかに重要なことだが、彼らは同時に、ホームページ上には最高のコンテンツばかりが集まっていて、記事が多すぎないことも求めている。このことにより、あたかも新聞を読んでいるかのように感じられる」。

リニューアルの効果

その新しいサイトによって、定期購読へのCVR(コンバージョンレート)は46%増えた。ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト運動)や、燃料税の引き上げを宣言したエマニュエル・マクロン大統領への政治批判に関する記事が湧き上がっている最中には、CVRがサイトのデザイン刷新前と比べて90%以上の増加となる日もあった。

マーケティングコンサルタントを行うサイモン・クチャーアンドパートナーズ(Simon-Kucher & Partners)の戦略・マーケティング部門でディレクターを務めるグレッグ・ハーウッド氏は、無料の記事と有料の記事を隣り合わせに配置することには心理学的な効果があると語る。「値段と価値のトレードオフに関する判断を読者に委ねると、ペイウォールを取り除こうとする前向きな読者を獲得するうえで、しばしば必要となるCTA(Call to Action:行動喚起)を効果的に生み出すことができる」。

Le-Monde

ル・モンドのサイトのデザインを刷新した結果、定期購読コンテンツは無料コンテンツと隣り合わせに配置されている

無料コンテンツと有料コンテンツの量のバランスは、多くのパブリッシャーが直面する問題だ。以前は、ペイウォールの向こう側にあるコンテンツの割合は33%だった。このパブリッシャーは、それが40%を超えると、定期購読をしていないオーディエンスにマイナスイメージを与えてしまうことがわかった。そしてそれは、将来の定期購読者層が十分に見込まれることが前提だ。シミラーウェブ(Similar Web)の統計によると、2018年11月の1カ月間で、ル・モンドのサイトへの訪問数は合計8360万だった。そこで、ホームページから有料コンテンツの割合を減らしたところ、12月のトラフィックは9570万に増加した。

今年の目標は30%成長

グラッサー氏によると、2019年の目標はデジタル購読者を22万人にすることだという。30%成長は大きな目標だが不可能ではないと語るのは、エンダーズアナリシス(Enders Analysis)で欧州圏のメディアアナリストを務めるフランシス・ゴダート氏だ。ロイターのデジタルニュースレポート(Reuters Digital News Report)によると、2018年に、フランスで有料のニュースをオンラインで購入した人の割合は11%で、市場全体の平均では14%だったという。だが、ニュースブランドとして定評があり、2番目にアクセス数の多いル・モンドは良いペースで成長を続けている。「経験則で言えば、デジタル定期購読の最大数は、多くても紙面の発行部数となるだろう。ル・モンドの場合で言えば、わずかに40万を超えるほどだ」。

ソーシャルの面では、ル・モンドのマーケティングと定期購読のチームは、どの有料コンテンツをプロモーションするかについて、フランス語で定期購読を示す『アボネモー(abonnements)』の頭文字を取った『abo』というハッシュタグを使い、共同で取り組んでいる。また、こうした有料コンテンツのプロモーションにはプッシュ通知も使っている。通知の回数は、その日のニュースに応じて変えている。このフランスの日刊紙には、Snapchat(スナップチャット)のディスカバーチャンネルもあるが、このプラットフォームでの運用は、現時点では定期購読の促進よりもブランド構築寄りとなっている。

ル・モンドは現在の購読者数を開示していないが、2019年の目標を達成するには、その数を維持し、制御することが必要だ。「2019年に力を入れることは、もっとも大切な定期購読者が確実に『これは価値がある』と思えることであり、また、彼らにメリットを与えることだ」とグラッサー氏は言う。読者の忠誠心にはそれぞれ違ったレベルがある。記事にはコメントするものの、読む量は少ない読者もいれば、サイトをくまなく見てたくさんの商品を利用する読者もいる。こうしたコホート(群)から、彼らがサイトにとどまる要因が何か、または、プッシュ通知やニュースレターを通じてコンテンツを紹介すべきかどうかの理解がカギとなる。定期購読へ誘導する道筋もまたしかりだ。たとえばFacebookを通じて登録する読者は、ブランドの認知度が低い可能性もある。ル・モンドは、登録後の数週間、読者に送られる関連性の強い記事の送信を自動化する取り組みをはじめている。

「プッシュ通知が大切」

2018年12月に米DIGIDAYと対談したル・モンドの社長、ルイス・ドレイファス氏は、定期購読料がデジタル面での収益の55%を担っていると語った。広告ブロッキングなどの障壁を乗り越えて、紙媒体とデジタルを含む収益の75%を担っている読者からの収入を促進することに力を注いできたという。

グラッサー氏は、「オーディエンスの獲得のためではなく、オーディエンスのためだけに定期購読に力を入れている」と語る。「読者の素性や好みを知ることで、彼らに何を直接提供すべきかがわかりはじめた。プッシュ通知を活用した戦略が大切な理由はそこにある」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:Conyac