仏日刊紙「ル・モンド(Le Monde)」は、オンラインにおけるフェイクニュース(偽ニュース)拡散を抑制するプロダクト群「Decodex(デコデックス)」をリリースする予定だ。Decodexは3つの事実確認プロダクトで構成され、その中核となるのが、600のWebサイトが登録されたデータベースだ。
仏日刊紙「ル・モンド(Le Monde)」は、オンラインにおけるフェイクニュース(偽ニュース)拡散を抑制するプロダクト群「Decodex(デコデックス)」をリリースする予定だ。
Decodexで可能なこと
Decodexは3つの事実確認プロダクトで構成され、その中核となるのが、600のWebサイトが登録されたデータベースだ。これらのサイトは、ル・モンドの事実確認部門デコドゥール(Les Decodeurs)によって信頼性が判断され、1年がかりで収集された。
データベースには主にフランスのWebサイトが登録されているが、国外のサイトもいくつか含まれる。物議を醸しているいわゆるオルタナ右翼サイトの「ブライトバート(Breitbart)」もその一例で、同サイトはフランスとドイツで拡大を試みている。ほかに、米国の「デイリー・ニュース・ビン(Daily News Bin)」や「デンバー・ガーディアン(Denver Guardian)」も、データベースに登録されている。これらが、「ダーニャ・ヌーベル・ドゥ・ドラゴン(Dernires Nouvelles du Dragon:『最新のドラゴンニュース』の意味)」のような、フェイクニュースや陰謀論を日常的に掲載しているフランスのサイトと一緒にまとめられている。
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フェイクニュースの傾向としては、完全に作り話の記事、事実を嘘で包んだ記事、偏った意図で書かれた記事の3つに分けられ、いずれもソーシャルプラットフォームで急速に拡大することがある。ル・モンドのデータベースには、単なる虚偽サイトだけでなく、ほかの情報源から極端に偏った記事を収集し、一元的に集約することで真実を操作するサイトも入っている。
事実と虚偽の境界線

ル・モンドのサイトでDecodexの検索画面が表示されるようになる
データベースにはほかに、レッテル張りや、それに準じる内容や意見を投影している点で無責任だと判断された風刺サイトも含まれる。「我々はこれを政治的な取り組みにするつもりは毛頭ない」と、デコドゥールの責任者のサミュエル・ローラン氏は語る。「極右であることを望む人がいても構わない。事実を尊重し、事実を操作しようとしない限りは」。
しかし、その境界はときに曖昧だ。「Franois Desouche」は大規模でしっかり作られたフランス語のサイトだが、ローラン氏によると、イスラム教徒や移民に関するニュースを歪曲しているメディアから記事を収集しているという。
ほかのサイトの場合、「一見普通に感じられる」が、中絶などの分野に関する誤報をばらまいているものもある。「あとから理由がわかる。それらを運営しているのがカトリックの活動家であり」、そのためひどく偏っているのだ、とローラン氏は付け加えた。
利用できる実際の機能
データベースはル・モンドのサイトで公開される予定だ。URLやサイト名を入力して、それが検証されたニュースソースなのかどうかを確認できるようになる。

Decodexの機能拡張が表示した警告メッセージ
ローラン氏のチームはまた、ChromeおよびFirefox向けのダウンロード可能な機能拡張を開発。これを導入すると、記事がまったくの嘘、未検証、事実のいずれであるかを赤、黄、青の色分けで警告する。信頼できないと見みなされた記事や、Decodexのデータベースにある600サイトの記事の場合、記事の右上にメッセージがポップアップされる。
ル・モンドはまた、2月上旬に予定しているサイト公開にあわせて、事実確認に特化した同紙初のFacebook「Messenger(メッセンジャー)」ボットを公開する。ローラン氏によると、ル・モンドはこれまで、ニュース配信にとってのチャットボットの価値や継続性に懐疑的で、その人気に抵抗してきたという。しかし、Facebookは偽の記事や画像が拡散されることが多い場所だ。そこでボットをローンチするのは理にかなっているし、Facebookでル・モンドをフォローしている350万人がアクセスしやすい。
ユーザーは、検証したいWebサイトのURLをボットに入力できる。あるいは、ブランド名やキーワードなどを入力すると、Decodexのデータベースにある場合はそれが表示される。「ボットを洗練しすぎることは望んでいない。かえって誤解を招きそうだから」と、ローラン氏は付け加えた。
オープンソースである理由

「ル・モンド」初のFacebook「Messenger」ボット。ニュースソースが正しいか偽物かの検証に特化している
ル・モンドは、こうした新しい機能とツールを周知する広告キャンペーンを実施する予定だ。すべてがオープンソースで開発されているので、ほかのパブリッシャーはこのデータベースにアクセスできる。読者もまた、記事が陰謀論なのかどうかを、ボットを通じてデコドゥールのチームに質問できる。
「オープンソースであることは重要だ」と、ローラン氏は語る。「これは、我々とほかのメディアのあいだの戦いではない。我々は現状を大いに憂慮しているからこそ、民主主義のために実践している。目標は、ツールを共有することだ」。
開発がはじまってから1年が経過したこのプロジェクトは、2017年中も続く予定だ。「我々は、機能拡張のダウンロードを人々に強制することはできないし、我々だけでこの問題を解決できないこともわかっている」と、ローラン氏は語る。「しかし、このような形で、FacebookやTwitterなどに向けて、ニュースソースの確認が可能だと伝えることはできる。不可能だなんて言うのは終わりにしよう」。
Jessica Davies (原文 / 訳:ガリレオ)