パブリッシャーはアドブロックとの戦いにあらゆる戦術を試している。
「ワイアード(WIRED)」が新たに試みているのは、PC向けサイトのプロトコルをHTTPSに切り替えるというものだ。HTTPSは、悪人にサイトのコンテンツを改変されたり、ユーザーの閲覧習慣を探られたりしないように作られたプロトコルである。同誌はHTTPSによって、人々が広告をブロックする理由をひとつ減らせるのではないかと期待している。
パブリッシャーはアドブロックとの戦いにあらゆる戦術を試している。
「ワイアード(WIRED)」が新たに試みているのは、PC向けサイトのプロトコルをHTTPSに切り替えるというものだ。HTTPSは、悪人にサイトのコンテンツを改変されたり、ユーザーの閲覧習慣を探られたりしないように作られたプロトコルである。同誌はHTTPSによって、人々が広告をブロックする理由をひとつ減らせるのではないかと期待している。
3つの懸念のひとつを軽減
「ワイアード」のバイスプレジデントで発行人のキム・ケレハー氏は、「最終的に、人々から公然と寄せられている3つの大きな懸念のひとつを軽減することを目指している」と語った。
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「ワイアード」は、テクノロジーに詳しいオーディエンスが多いことから、普通のパブリッシャーよりもアドブロックの影響が大きい。同誌によると「ワイアード」のオーディエンスの20%以上が広告をブロックしているのに対し、アドブロックのソリューションを提供するページフェア(PageFair)の調査によると、米国で2015年第2四半期に広告をブロックしていたのはオンライン人口の16%だった。
「ワイアード」はしばらく前からアドブロックと戦っている。たとえば、「ワイアード」のサイトをホワイトリストに入れている人に対しては、標準的なディスプレイ広告だけを表示し、ポップアップ広告やインライン動画広告、音声付きの自動再生動画広告をなくして、広告の少ない体験を提供している。また、広告はいっさい見たくない(あるいは追跡されたくない)という人に対しては、1週間1ドルで閲覧できる広告非掲載サイトも用意した。
アドブロッカーを利用する理由
一般に、アドブロック使用の理由としては、広告の排除がもっともよく挙げられる。ページフェアによる2014年の調査では、アドブロックソフトウェアを使う主な理由として、75%が広告を一部または全部ブロックすることだと答えた。2番目に多い理由はプライバシー(17%)で、3番目はパフォーマンス(8%)だった。
「ワイアード」は公表できる具体的な数字をもっていなかったが、広告非掲載サイトのローンチに対するユーザーからのフィードバックでは、大部分のユーザーがアドブロッカーを使う理由としてセキュリティ上の懸念に触れていたという。
「ワイアード」は2月、読者に向けた覚書のなかで「アドブロッカーを利用する理由は、ただ高速でクリーンなブラウズ体験が欲しいというものから、セキュリティや追跡アプリに対する懸念まで、いろいろとあるのはわかっている」と説明した。
HTTPSのサイトであることは、URLの左側に表示される錠前のアイコンで確認できる。暗号化では、サイト訪問時に読んでいるものをハッカーやスパイなどに追跡されるのも防止される。
腰が重い大手パブリッシャー
広告について言えば、サイトをHTTPSにするためには、広告ネットワーク側も広告をHTTPSで配信することが必要になる。HTTPSに移行しても、そもそも広告主による追跡や、さらに訪問者がアドブロッカーを使っているかどうかをパブリッシャーが監視することに反対している人々やプライバシー擁護派らは満足しないだろう。後者の行為は、ヨーロッパでは違法の可能性がある。
「ワシントン・ポスト(The Washington Post)」「テックダート(TechDirt)」「インターセプト(The Intercept)」など、すでにHTTPSに移行しているメディア企業はいくつかある。しかし、Googleによると、大手パブリッシャーはほとんどいないという。
パブリッシャーにとって難しいのは、配信しているたくさんのコンテンツや広告がサードパーティからのもので、それらすべてが安全に配信されるようにする必要があるところだ。また、パブリッシャーはもともと、技術面の優先事項が増え続けており、限りある技術リソースが逼迫するという問題もある。「ワイアード」は、6月9日までにサイト全体をHTTPSに切り替える予定だが、セキュリティと伝送に関する仕組みを切り替える前に、一連のテストから始まる念入りなプロセスを続けている。
増える暗号化をめぐる問題
アドブロックの普及で、暗号化をめぐる話題が増えている。HTTPSも暗号化の一形式だ。ユーザー体験の向上によってアドブロッカーのインストールを防ごうとする、インタラクティブ広告協議会(IAB)のテックラボ(Tech Lab)による「L.E.A.N.」構想で、暗号化は4本柱のひとつになっている。
テックラボのゼネラルマネージャで、IABで技術および広告運営担当のシニアバイスプレジデントを務めるアラナ・ゴンバート氏によると、暗号化によって広告主側の仕事が増えるが、ログイン後のページに広告を安全に配信する際には、すでに暗号化が用いられており、Googleやメディアマス(Mediamath)などの広告サーバー側は準備に取り組んでいるという。
Lucia Moses (原文 / 訳:ガリレオ)