ネットに混乱もたらす、広告ブロックリストの内幕とは?:「彼らは単なる4人組」

6月上旬のことだった。オートトレーダーUK(Autotrader UK)のスタッフが、同社が運営するデジタルカーマーケットプレイスに問題が生じていることに気づいた。

サイトを訪れる多数のユーザーが、カーディーラー各社が提供する自動車のリストが見れないと苦情を訴えていた。サイトの表示にトラブルが生じ、そのせいでサイトの使い勝手が悪くなっているという。

調査の結果、ある事実が判明した。この不具合は、アドブロッカーを使用している訪問者にのみ起きていたのだ。そしてこれがきっかけとなり、別の問題の原因も判明した。「イージーリスト(EasyList)」だ。イージーリストはコミュニティが運営するオープンソースのルールリストで、アドブロッカーの「アドブロック・プラス(Adblock Plus)」やブラウザの「ブレイブ(Brave)」などに利用されている。

たびたび支障をもたらす

このクラウドソースリストは、相当数のネットユーザーのブラウジング体験管理に役立てられている。イージーリストは現在の利用状況に関するデータを公表していないが、アドブロック・プラスだけでも、これまでに1億回以上ダウンロードされている。人気アドブロッカーの「ユーブロックオリジン(UBlock Origin)」にも、ChromeとFirefoxに1500万人超のアクティブユーザーがいる。

イージーリストの目的はウェブ体験から広告を取り除くことだが、そのルールはさまざまなサイトのエディトリアル機能に支障をたびたびもたらしている。この半年で、イージーリストのルール変更により、ECサイト「インベントリー(The Inventory)」の購入ボタンが壊れた。動物チャンネルブランド「アニマルプラネット(Animal Planet)」の動画プレイヤーも壊れた。エンタメサイト「ファンダム(Fandom)」のナビゲーションに不具合が生じた。求人情報サイト「インディード(Indeed)」のスタイルやCSSローディングプロセスにも不具合が生じた。

これらの問題の大半はすぐに解決された。しかし、サイトが進化を続けるなかで、パブリッシャー各社は、インターネット上で、クラウドで維持されているドキュメントのなかでもっとも重要なもののひとつと衝突するおそれへの対処を迫られている。イージーリストにコメントを求めたが、回答は得られなかった。

「彼らは単なる4人組」

「このことを知らない人のほうが多いのは異常だ」と語るのは、ブロックスルー(Blockthrough)創業者のマーティ・クラツキー=カッツ氏だ。ブロックスルーはアドブロック・プラスのプログラム「アクセプタブル・アド(Acceptable Ads)」を利用したマネタイズのためのソリューションをパブリッシャーに提供している。「彼らに悪気があるとも、悪意があるとも思わない。だが、彼らはパブリッシャーのマネタイズのバランスを取ることに熟練していたわけではないし、選ばれたわけでもない。彼らは単なる4人組なのだ」。

イージーリストは2005年、ブラウザ拡張機能「アドブロック」のアドオンとしてローンチされた。以来、何人かが管理人を務めてきたが、現在はライアン・ブラウンなる人物が率いる4人のグループに、イージーリストのルールを変更する権限が与えられている。

時間とともに、そのルール(とそれに対する例外)のリストは無秩序な広がりを見せてきた。ブレイブが昨年夏に行った分析から、イージーリストには7万超のルールがあることがわかった。その内容は、特定のパターンに一致するウェブアドレスからサイトあるいはコードをサイトがフェッチするかどうかを決める「ネットワークルール」。バナーなど特定のページエレメントを表示できるかどうかを決める「エレメントルール」。そしてネットワークルールとエレメントルールの例外だ。

問題解決までに1週間

ブレイブによれば、ルールの約9%を占めるこれら例外が必要なのは、イージーリストのネットワークおよびエレメントルールは標準的なサイトの機能を破壊する場合があるからだという。多くの場合、「advert(広告)」などの、イージーリストが禁止している言葉を開発者がコード内で使用していると、問題が発生するようだ。このような場合なら問題の解決は簡単だ。「こちらで変更を加えるほうが簡単な場合もある」と語るのは、ジフメディアグループ(Ziff Media Group)でプロダクト/テクノロジー部門のシニアバイスプレジデントを務めるジョシュ・バッツ氏だ。同メディアグループはECやショッピング、エディトリアル系のサイトを運営している。

ところが、こうした変更作業が困難なケースもなかにはある。たとえば、オートトレーダーUKの場合だそうだ。もし実施していたら、とてつもない数のページを修正する必要が生じていただろう。そのため、スタッフはイージーリストの掲示板を訪れて、同社が抱える問題を訴え、イージーリストのオーサーが変更を加える決断を下してくれることを願うしかなかった。

多くの場合、修正自体は大した作業ではない。たいていは数時間でイージーリストのスタッフが直してくれる。とはいえ、腰を据えた作業が必要になることもある。オートトレーダーUKのケースは、問題解決までに1週間近くを要した。理由のひとつは、例外を設けるよりも、オートトレーダーUKがコードを変更することをリストオーサーのひとりが望んだためだった。

オートトレーダーUKの親会社にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

双方にとって頭痛の種

こうした定期的な混乱は、双方にとって頭痛の種だ。だが、アドブロッカーサイドはそんなことを意にも介していない。「たしかに、ブロックしているもののなかには、そうすべきではないものもあるかもしれない」と、クラツキー=カッツ氏は語る。「だが、アドブロックを支持しているのであれば、そのぐらいの代償なら払う価値があるのではないか」。

Max Willens (原文 / 訳:ガリレオ)