BuzzFeedの「テイスティ(Tasty)」は、いまや同社の強大な動画制作部門の牽引役となった。調査企業チューブラー・ラボ(Tubular Labs)によると、同メディアのメインFacebookページは、9月に動画視聴数が17億回近くあり、Facebookページ上で3番目に大きい動画アカウントとなっている。
BuzzFeedの「テイスティ(Tasty)」は、Facebook上で屈指のパブリッシャーブランドにとどまらず、いまや同社の強大な動画制作部門の牽引役となった。
アナリティクス企業のチューブラー・ラボ(Tubular Labs)によると、テイスティのメインFacebookページは、9月に動画視聴数が17億回近くあり、Facebookで3番目に大きい動画アカウントとなっている。動画1本あたりの視聴数も驚異的で、テイスティのFacebook動画の公開30日間の視聴数は過去3カ月で、1本あたり平均2280万回だ。同じ時期、BuzzFeedのメインFacebookページは1本あたり470万回、それとは別のBuzzFeed Foodのアカウントは1本あたり110万回で、どちらにもテイスティに及ばない。
その成長の凄まじさ
チューブラー・ラボによると、現在、BuzzFeedの動画視聴数全体の37%がテイスティだという。BuzzFeedは2015年7月にテイスティをはじめたばかりということを考慮すると、驚きは一段と増す。
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その凄まじさがもっともわかるのはFacebookだ。BuzzFeedがこれまでにFacebookに公開した動画全体のうち、食べ物の動画はわずか8.1%。なのに、Facebook上のBuzzFeedの動画視聴数のうち、34%が食品関連のコンテンツなのだ(チューブラー・ラボが2014年8月以降に追跡したBuzzFeedのFacebookアカウント67件の数字)。現在、BuzzFeedでは75人がテイスティを担当し、メインFacebookページだけで月に約60本の動画を公開している。
BuzzFeed自体、エンターテインメント部門とニュース部門のどちらも動画に力を入れている。ゼ・フランク氏が率いるエンターテインメント部門は、テイスティと、DIY向けスピンオフの「ニフティ(Nifty)」を擁し、チューブラー・ラボによるとニフティだけでも9月のFacebookでの視聴数が7億4700万回あったという。ベン・スミス氏が率いるニュース部門についても、BuzzFeedは動画を増やすため記者の研修を予定しており、また、動画の野望を実現するためNBC ユニバーサル(NBCUniversal)から新たに2億ドル(約200億円)の資金を調達したと報じられている。
コンテンツもどんどん拡大
テイスティといえば、おいしそうなレシピからとっぴなレシピまで、さまざまなレシピを調理する手元の俯瞰ショットが有名だが、それ以外にも目を向けている。BuzzFeedは先日、マーカス・サミュエルソン氏のような有名料理人や、マーサ・スチュワート氏のような「著名な人物」がお気に入りのレシピを紹介する新しい動画シリーズ「テイスティ・ストーリー(Tasty Story)」を開始した。もちろん、これもテイスティの動画シリーズであり、著名人ホストの神秘的な手つきを俯瞰カメラが捉える。
サミュエルソン氏を起用した「テイスティ・ストーリー」の最初の動画は、10月21日にFacebookで公開され、わずか40分間で110万回視聴された。テイスティのゼネラルマネージャー、アシュリー・マッカラム氏は、「テイスティ動画シリーズはさらに制作中で、これはその第一陣のひとつだ。さまざまなフォーマットによるたくさんのテイスティ番組を期待してほしい」と述べている。
テイスティのすべての番組が、テイスティが普及させた「調理の俯瞰映像」のフォーマットというわけではない。長編動画シリーズ「ママ対シェフ(Mom vs. Chef)」のような、そこまでFacebookに特化していないフォーマットの番組もある。
BuzzFeedは、テイスティの拡大策として、いろいろな国に特化したバージョンを提供している。現在、テイスティには、「プロパー・テイスティ(Proper Tasty)」(英国)、「ビエン・テイスティ(Bien Tasty)」(スペイン語)、「テイスティ・ミヤム(Tasty Miam)」(フランス語)など、6つの外国語版がある。またマッカラム氏によると、BuzzFeedはテイスティというブランドを中心に据えた実体験イベントの開催を検討しているという。
マネタイズも急速に成長
Facebookにおけるテイスティの成功は2016年、BuzzFeedに明らかな影響を与えている。ゼ・フランク氏が先日、「リコード(Recode)」のインタビューで、テイスティはBuzzFeedのエンターテインメント事業のなかで、マネタイズという意味ではもっとも急速に成長していると語った。テイスティはまた、2016年の「ニューフロンツ(NewFronts)」で、BuzzFeedが行ったプレゼンテーションの主役だったし、いまではNBCのニュース番組「トゥデイ(Today)」にテイスティのコーナーがある。
ホライズン・メディア(Horizon Media)でソーシャル戦略およびデジタルインフルエンサー担当のディレクターを務めるペドロ・ロドリゲス氏は、次のように語った。「複数の小さなパブリッシャーとの提携による効能が確かにいろいろとあるのかもしれないが、テイスティはその天文学的な成長ゆえに、一流のフードパブリッシャーなのだ。加えて、NBCの『トゥデイ』内のコーナーのような、BuzzFeedがテイスティ全般に対して行ってきた投資によって、より大規模な統合が可能になっている。これは誰もが提供できるものではない」。
コンテンツ面では、BuzzFeedはテイスティの膨大なオーディエンスを使って、ニフティや、健康を中心とした「グッドフル(Goodful)」といった、新たなコンテンツブランドをスタートさせた。また、BuzzFeedの各ページのフォロワーを増やす取り組みに、テイスティ動画のタレントを起用することも考えている。
姉妹メディアも急拡大
BuzzFeedはニフティ向けに、まさにテイスティのレシピ動画のように撮影した動画「ニフティ・キッチン」を制作し、テイスティのFacebookページでクロスプロモーションを実施。マッカラム氏によると、ニフティの視聴数の増加ペースはテイスティのときを上回っている。そしてグッドフルも、9月時点の視聴数が1億9500万回で、現在、ニフティを上回るペースで視聴数を増やしている。
マッカラム氏は、「我々はテイスティによって何かを打ち破ることができた。そしていま、そのフォーマットを移植し、食べ物を扱うだけではないほかのコンテンツ分野にも取り入れられるようになった。我々はスタイルと食べ物に隣接する分野についていろいろと考えている。このフォーマットを見つけ出し、大きなオーディエンスを構築したことで、拡大が可能になったのだ」と語った。
Sahil Patel (原文 / 訳:ガリレオ)
Image by Matt Fraher