2018年2月26日に講談社にて、「インターネットメディア協会(以下、JIMA)」の立ち上げ準備会の記者会見が行われた。同団体は、インターネットで情報を発信するメディアを中心に、コンテンツプロバイダーを中心に、プラットフォームが集まり、インターネットメディアが参考にすべきガイドラインを発信することを目的とする。
「インターネットメディア協会(以下、JIMA)」立ち上げ準備会の記者会見が2月26日、講談社にて行われた。この団体は、コンテンツプロバイダーやプラットフォームなど、インターネットメディアが情報発信をする際に遵守すべきガイドラインを設定することを目的とし、その信頼性向上に取り組むという。
準備会の発起人は、新聞社や出版社、ネット専業パブリッシャー、プラットフォーマーの取締役や編集長などの9名。それぞれ、現段階では有志個人としての参加になるが、JIMAの正式発足を予定している6月には、多様なメディアに協力を呼びかける。
ガイドラインの内容
「一昨年のDeNA『WELQ(ウェルク)』騒動後、インターネットメディアを運営する方々をはじめ、新聞社や出版社など、さまざまな方からネットにおける正しい情報発信の仕方がわからない、という相談を受けた」と、発起人のひとり、BuzzFeed Japan創刊編集長の古田大輔氏は語る。「その際に、インターネットで情報を発信する際に参照すべき、明確なガイドラインの必要性を実感した」。
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事実、インターネットにおける情報発信の在り方に関する議論は、日本でも話題になっているものの、欧米に比べるとまだ不十分といわざるを得ないと、古田氏は続ける。「サイト運営元の明記や記事の訂正の方法など、インターネット上における情報発信のルールは、ネットネイティブなパブリッシャーだけでなく、新聞社や出版社も徹底できていないことがある」。
発起人に名を連ねる東洋経済オンライン編集長の山田俊浩氏は、「記事公開後における、その削除の仕方なども、ガイドラインで指摘すべきかもしれない」と補足する。実際、都合が悪くなったら記事をそのまま削除するというのは、インターネットメディアにありがちな対応だ(公開期間を設定しているところもあるが)。記事の削除は、物理的に造作のないことだが、それをやってしまってはメディアの信頼性が揺らぐ。
だが、JIMAが目指すのは、コンテンツの質を判断する「ネット上の警察」ではない。先述のとおり、インターネットで情報を発信するために遵守すべき、基礎的な事項を定めるためのガイドラインの設定だ。古田氏は「それこそがユーザーに対する説明責任ではないか」と語る。
リテラシー向上の先に
とはいうものの、会見に参加した記者からは、「そもそもフェイクニュースなど悪質なコンテンツを作るメディアが、JIMAに参加するとは考えにくい」という意見もあった。しかし、少しずつガイドラインを浸透させ、徹底する企業が増えていけば、悪質なコンテンツを作るメディアはユーザーから読まれなくなり、自然淘汰されていく。それこそが狙いだと、発起人たちは語る。同団体が目指すのは、ユーザーリテラシーの向上も含め、インターネットの信頼性を高めていくことだ。
「すべてのメディアが団体に加盟する必要はない」と、プラットフォーマーからの唯一の発起人になった、スマートニュース執行役員の藤村厚夫氏は語る。「ガイドラインを浸透させていくことによって、ユーザーから見たときに、信頼できるメディアとできないメディアの違いを明確化できれば、レベルの底上げに繋がる」。
現段階での参加資格は、インターネットメディアに限定しておらず、新聞やテレビ、雑誌といったレガシーメディアも含める。今後はスマートニュース以外の大手プラットフォームに対しても積極的な参加の呼びかけを行い、建設的な議論を目指すという。
Written by 村上莞
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