Google ChromeにおけるサードパーティCookieの廃止が目前に迫り、アドテク業界は新時代の崖っぷちに立たされている。
この変更をめぐっては過去4年間、デジタルメディア業界全体が頭を悩ませてきた。まさしくビジネスの生命線とあって、アドテク業界大手のあいだでは、オンライン広告ターゲティングの代替技術を模索する動きがみられる。
業界最大の独立系アドテク企業、ザ・トレード・デスク(The Trade Desk)のCEOを務めるジェフ・グリーン氏が、「カンヌライオンズ国際クリエイティビティフェスティバル2023」の開催中に米DIGIDAYの取材に応じた。
インタビューでは、同社がCookieの代替として打ち出すユニファイドID2.0(Unified ID 2.0:以下、UID2)の展開について、パブリッシャーを含む業界最大の利害関係者との関係について、さらにはGoogleについて話を聞いた。
以下、読みやすさのために編集を加えてある。
◆ ◆ ◆
――最近いくつかの発表をされたが、それらはどのような点で重要なのか?
ひとつ目は、ワーナーブラザーズディスカバリー(Warner Bros. Discovery)による発表だ。UID2を採用するコネクテッドTV(以下、CTV)のプレーヤーがまたひとつ増えたことになる。また、この技術を開発してオープンソース化したのが我々であることを念押しできる。
ふたつ目は、ヨーロピアンユニファイドID(European Unified ID:以下、EUID)に関する発表だ(UID2の欧州版であるこのIDソリューションはさまざまなブランドやパブリッシャーの支持を拡大している)。これはUID2と全くの別物というわけではなく、同様のオープンソース技術に基づいて構築されているが、米国と欧州のあいだでデータを共有できないように、スペースを分けて作成されている。
それにより、EUIDは市場で最もEU一般データ保護規則(GDPR)に準拠した技術といえるものに成長することができる。消費者が自分の嗜好を広く反映させられるためだ。消費者は基本的に、自分の嗜好を電子メールアドレスという最も安全な個人識別情報(PII)に結びつけることになる。
Google ChromeにおけるサードパーティCookieの廃止が目前に迫り、アドテク業界は新時代の崖っぷちに立たされている。
この変更をめぐっては過去4年間、デジタルメディア業界全体が頭を悩ませてきた。まさしくビジネスの生命線とあって、アドテク業界大手のあいだでは、オンライン広告ターゲティングの代替技術を模索する動きがみられる。
業界最大の独立系アドテク企業、ザ・トレード・デスク(The Trade Desk)のCEOを務めるジェフ・グリーン氏が、「カンヌライオンズ国際クリエイティビティフェスティバル2023」の開催中に米DIGIDAYの取材に応じた。
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インタビューでは、同社がCookieの代替として打ち出すユニファイドID2.0(Unified ID 2.0:以下、UID2)の展開について、パブリッシャーを含む業界最大の利害関係者との関係について、さらにはGoogleについて話を聞いた。
以下、読みやすさのために編集を加えてある。
◆ ◆ ◆
ーー最近いくつかの発表をされたが、それらはどのような点で重要なのか?
ひとつ目は、ワーナーブラザーズディスカバリー(Warner Bros. Discovery)による発表だ。UID2を採用するコネクテッドTV(以下、CTV)のプレーヤーがまたひとつ増えたことになる。また、この技術を開発してオープンソース化したのが我々であることを念押しできる。
ふたつ目は、ヨーロピアンユニファイドID(European Unified ID:以下、EUID)に関する発表だ(UID2の欧州版であるこのIDソリューションはさまざまなブランドやパブリッシャーの支持を拡大している)。これはUID2と全くの別物というわけではなく、同様のオープンソース技術に基づいて構築されているが、米国と欧州のあいだでデータを共有できないように、スペースを分けて作成されている。
それにより、EUIDは、市場でもっともEU一般データ保護規則(GDPR)に準拠した技術といえるものに成長することができる。消費者が自分の嗜好を広く反映させられるためだ。消費者は基本的に、自分の嗜好を電子メールアドレスという最も安全な個人識別情報(PII)に結びつけることになる。
ーーメールアドレスがPIIとしてどの程度安全なものかについては議論があるが、その点はどうか?
さほどの議論があるとは思わない。時として、論争を巻き起こしたい向きは存在するようだが、実際は大した論争になっていない。なぜなら、そもそもAppleはメールアドレスを使ってパーソナライゼーションを提供しているからだ。Appleのエコシステムにおけるパーソナライゼーションはすべて、電子メールベースの識別子であるApple IDによって行われる。
Googleのパーソナライゼーションはシングルサインオン(SSO)を通じて行われ、Facebookのそれはログインと、ソーシャルグラフに適用されるデータサイエンスを組み合わせて行われる。
そしてUID2は、セールスフォース(Salesforce)やスノーフレーク(Snowflake)のような企業で採用され、Google CloudやAWSでクラスが実装されている。これには、ディズニー(Disney)のような消費者のプライバシーを非常に重視する企業も含まれる。プライバシー的に安全な方法だと思わないなら、どの企業も電子メールアドレスを使っていないだろう。
実際のところ、平均的な消費者は自分の設定を記憶させるものを必要としている。だから、オプトアウトの選択を含め、消費者に伝えられたことを記憶する何らかの方法が必要なのだ。その方法としてCookieを使うことができないのであれば、またCookieは最善の方法とは言えないことから、ユーザーの設定を記憶するための、はるかに永続的な方法を用いることになる。それは、デバイスをまたいで使用できるような永続的なIDでなければならない。
ーー多くのパブリッシャーは、サードパーティCookieの終焉を、業界における自分たちの地位を取り戻す機会とみている。パブリッシャーの反応は?
ほんの一時期、活字メディアのレガシーパブリッシャーのなかには、今度こそ違う世界に変わってほしいと期待する声があったと思う。しかし、広く理解されていなかったのは、もっとも高いCPMを得るために、広告主は自らのデータを差し出さなければならず、そのデータがいつ削除されるか必ずしもわからないため、プライバシー上のリスクが生じるということだ。
そうなれば、現在よりも大きな非対称性が、逆の方向に生まれることになる。広告主が膨大な数の選択肢を持つことになるためだ。広告主は「自分が何にお金を払おうとしているのか理解できるように、できるだけ多くのメタデータを送ってほしい」と言うだろう。
とくに(レガシーである)活字の世界から持ちこたえてきたパブリッシャーは、CPMの増加の恩恵を受けてこなかった。自分たちが売っているものをできるだけ多く可視化することに熱心なほかのパブリッシャーとは違うところだ。
(UID2の歴史の)初期には、いくつかのレガシーパブリッシャーが、自分たちにはもっと違うやり方があるのではないかと問うていた。しかし、UID2の進化に伴い、パブリッシャーはどうすれば早く実装できるかと問うようになっている。
ーー過去には、GoogleがCookieを完全に廃止するかはわからないと発言していた。しかし来年にそれが実行されようとしている今、どう考えているのか?
私がGoogleの経営陣なら、2024年の第1四半期にCookieを廃止するのはGoogleにとって戦略ミスだと思う。理由の一端として、Googleには2つの方向から大きなプレッシャーがかかっている。ひとつはプライバシーの問題、もうひとつは反トラスト法の問題だ。
Googleがエコシステムに対して提案していることは、自分たちはフェラーリを所有したままで、ほかの皆には自転車を与えるようなものだと思う。
彼らがオープンインターネットに与えようとしているプライバシーサンドボックス(Privacy Sandbox)は、とりわけ彼ら自身が提供するものと比べると、非推奨版のインターネットといえるものであり、ジャーナリズムにとって壊滅的な打撃になると思う。それが(メディア企業の)ガネット(Gannett)がGoogleを提訴した理由のひとつだろう。どれほど影響の大きな動きであるかは、いくら強調しても足りないほどだ。
一方で、各国の政府やテキサス州司法長官、あるいはEUがGoogleを追及し、また他方では、Googleに極度に依存しているはずのパブリッシャーがこのような訴訟を起こす。それが事態の現状を物語っている。
私が2020年当初に「Cookieを廃止することはGoogleの最優先事項ではないと思う」と発言したとき、プライバシーをめぐる監視の目は厳しい一方、反トラスト法に関してはさほどでもなかった。それが今では逆転している。
現在、Googleに向けられている厳しい目のほとんどは、反競争的行為による反トラスト法違反に関するものだ。したがって、自分たちのフェラーリを守るために(多くの人が独占とみなす)資産を活用しながら、世界に自転車を与える行為は、彼らにとって、Cookieを存続させるよりも大きなリスクを生むと私は思う。
[原文:Jeff Green: ‘I think it’s a strategic mistake for Google to get rid of cookies in Q1 2024’]
Ronan Shields(翻訳:高橋朋子/ガリレオ、編集:島田涼平)