コロナ危機で、 インフルエンサー の多くも「失業」状態:「あらゆるものがキャンセルされた」

旅行インフルエンサーのエイミー・セダー氏は、仕事がすっかりなくなってしまった。しかも、この状態は当分続きそうだ。

「3月第2週まで、私たちはまだ春に旅行するつもりでいた」と、フィアンセとともに旅行ブログ「アウェイ・ランド(Away Lands)」を運営するセダー氏はいう。「ほぼすべての予定が次々にキャンセルされた。取材旅行や旅行イベントはもちろん、製品キャンペーンやライフスタイルキャンペーンもだ。企業のマーケティング(部門)は、先行きが見えないなかであらゆる取り組みを中断している。広告を出して、ひんしゅくを買うことを恐れているのだ」。

インスタグラム(Instagram)で22万8000人超のフォロワーを抱えるセダー氏にとって、これからの数週間が自分のビジネスにどのような影響を及ぼすのかは定かではない。通常なら、観光局やホテル、それにライフスタイルブランドやビューティーブランドからビジネスの依頼が増える時期であるにもかかわらずだ。新型コロナウイルスが世界中で人々の生活を混乱させ、一変させるなか、大手企業のマーケターのあいだでキャンペーンの中止や中断の動きが出ている。旅行分野をはじめとするインフルエンサーにとって、ビジネスへの影響は深刻だ。

「多くのインフルエンサーが失業状態」

「誰も旅行キャンペーンを手がけなくなったため、いまや多くのインフルエンサーが失業状態だ」と、旅行インフルエンサーで旅行ブログ「2トラベルダッド(2TravelDads)」の開設者でもあるロブ・テイラー氏は指摘する。「すでに友人の8割は仕事がなくなり、新たな収入が期待できないこれからの2~3週間にすべきことを模索している」。

テイラー氏自身はまだキャンセルされたキャンペーンはないが、彼のビジネスはかなりの打撃を受けている。3月第2週には1日あたりの広告収入が80%減少し、サイトへのトラフィックも通常のわずか30%ほどだった。「旅行サイトで(広告を)高額入札しようという人が誰もいないため、我々の広告収入は減り続けている。そういう私も、自分のサイトのアフィリエイト(キャンペーン)を通じた予約が13日間にわたって1件もないなど、別の大きな影響が見られる」と、テイラー氏はいう。さらに同氏は、ある教育製品のキャンペーン向け動画を撮り直し、更新することを余儀なくされた。その製品の企業が、新型コロナウイルスの流行中に無料で製品を利用できる特別なコードを新たに発行したためだ。

旅行インフルエンサーでフォロー・ミー・アウェイ(Follow Me Away)の開設者でもあるビクトリア・ヨレ氏は、収入の90%が失われてしまった。予定されていたクルーズ旅行や航空会社のキャンペーンが中止になったためだ。「ありとあらゆる活動が停止している。いまは広告に興味を示す人がいない」とヨレ氏は述べ、いまのタイミングで広告を打てば空気が読めない企業と思われる可能性があると付け加えた。「我々の業界だけが打撃を受けているわけではない。いまは製品をプッシュするべきタイミングではないのだ。人々は必要でないものにお金を使う余裕がなく、新しい服や掃除機を買っている場合ではない」。

一方、需要増を見込む人もいる

その一方で、ウイルスの拡散を遅らせるという各国の方針に従って家に閉じこもっている人々は、ソーシャルプラットフォームの利用時間を増やし、インフルエンサーのコンテンツへの関心をいつも以上に高めていると、インフルエンサーマーケティング専門家らは指摘している。インフルエンサーマーケティングエージェンシーのオブビアスリー(Obviously)によれば、インスタグラムではこの2週間に、ハッシュタグ広告付き投稿への1日あたりの「いいね!」の数が76%増えたほか、第1四半期のキャンペーンのインプレッションが2019年第4四半期から22%増加したという。

「ブランドはこれが大きなチャンスであることに気づいているが、メッセージが確実に受け入れられるようにしたいと考えている」と、オブビアスリーの創業者でCEOのメイ・カーワウスキー氏は話す。「我々はいま、クリエイティブブリーフ(広告の指針を示した書類)にどのような表現を盛り込むか、インフルエンサーとどのように話をするか、人々が求めるコンテンツや楽しさを不快感なく提供できるキャンペーンをどう構築するか、といったことをクライアントと話し合っているところだ」。

インフルエンサーマーケティングエージェンシーや専門家の話をまとめると、ブランド各社はこれからの数週間を、インフルエンサーを使って消費者の関心を集めるチャンスと考えており、その時期や方法を検討しているということらしい。実際、あるZ世代向けメディア企業の幹部によれば、エンターテインメントブランドのあいだで、インフルエンサーキャンペーンを利用して自社への関心を高めようとする機運が先週から高まっているという。

インフルエンサーマーケティングエージェンシーのビレッジマーケティング(Village Marketing)は、そのような取り組みをまだ拡大していないものの、検討を進めているところだと、同社の創業者であるヴィッキー・シーガー氏は述べている。「我々は現在、取り組みを拡大する意味があるかどうかを見極めているところだが、そうする方向に向かいつつある。人々がソーシャルメディアの利用時間を増やすことになるからだ」。

インフルエンサーマーケティングの専門家らは、今後数週間のうちにインフルエンサーマーケティングが拡大すると予想している。その根拠は、インフルエンサーへの注目が高まっていることだけでなく、彼らが制作スタッフを集めなくてもコンテンツを制作できることにある。「インフルエンサーは、他人と会うことなくコンテンツを制作し、公開できる。そのため、今後は彼らがマーケティングミックスの一部になるだろう」と、インフルエンサーマーケティングプラットフォームを手がけるフォール(Fohr)の創業者、ジェームズ・ノード氏はいう。

「すべてがオンラインで行われる」

ただし、インフルエンサーのコンテンツに対して慎重なアプローチをとることが、これから数週間の鍵となる。「インフルエンサーマーケティングでは、製品を消毒して自宅で写真を撮るようなことは想定されていない」と、インフルエンサーマーケティング企業のモディフライ(Modifly)でCEOを務めるエリヤ・シュナイダー氏は指摘する。

それでも、今後数週間のうちに、消費者は自分の好きなインフルエンサーに目を向け、新しいコンテンツを探しに来るようになるというのが、インフルエンサーマーケティングの専門家らの見立てだ。「人々がインフルエンサーに注目するのは、一種の現実逃避とエンターテインメントのためだ」と、ノード氏はいう。「いまも給料がもらえるラッキーな人は、これからもある程度の買い物をするだろうし、ブランドはそんな彼らを狙ったマーケティングを展開するだろう。ただし、そのすべてがオンラインで行われることになる」と、ノード氏は語った。

Kristina Monllos(原文 / 訳:ガリレオ)