独自 ニュースレター をめぐる記者と雇用主のせめぎあい:「Twitterアカウントを持つな、ということはできないのと同じ」

ジャーナリストによるニュースレターはフリーランサーたちのあいだでの流行となったが、給与をもらっている正社員の記者や編集者からも「副業」として注目を集めている。

プラットフォームやウェブサイトでは困難なダイレクトなつながりをオーディエンスと持てるという理由から、パブリッシャーたちはニュースレターを受け入れた。その一方で多くの記者たちもまた、読者とダイレクトにコミュニケーションを持ち、新しいアイデアを試し、興味関心を育てるためのツールとしてニュースレターに取り組んでいる。記者のなかには自身の仕事を集めたコンテンツアグリゲーターとしてニュースレターを活用しているものもあれば、読者からの反応を期待してまだ固まっていないアイデアを書き出し、「本業」の記事に落とし込む場合もある。

ニュースレタープラットフォームのサブスタック(Substack)は2017年にローンチしてから着実に成長を見せているが、同サービスを活用する正社員として働くジャーナリストたちの数も増えていると、共同創業者でありCOOのヘイミッシュ・マッケンジー氏は述べた。別のニュースレタープラットフォームであるレビュー(Revue)のCEO、マーティン・デ・カイパー氏も同じ現象が起きていると語った。しかし両者とも、ユーザーのうち何人が正社員の記者もしくは編集者であるかについての具体的なデータは持っていない。

職業上は「グレー」なニュースレター

こうした「副業」ニュースレターは職業上のグレーゾーンにあてはまる。ほとんどのパブリッシャーは社員が本業と競合になるようなフリーランス業務をおこなうことを禁止しているし、才能豊かな人材を抱える企業の管理職は雇用主がコントロールできない、もしくはマネタイズできない形で彼らがオーディエンスを獲得することを心配するものだ。

「『記者が自分のオーディエンスを抱えて(社を)離れてしまうだろう』と心配する編集者もいると思う。しかしこうしたニュースレターは職に留まらせるという点でも優れた戦略だ」とバズフィード・ニュース(BuzzFeed News)で勤務中に「テック・ジャイアント・アップデート(Tech Giant Update)」というニュースレターをローンチしたアレックス・カントロウィッツ氏は言う。バズフィード・ニュースで5年間勤務し、この夏に離職したカントロウィッツ氏だが、現在はサブスタックで「ビッグ・テクノロジー(Big Technology)」という新たなニュースレターを運営している。

カントロウィッツ氏が自身のニュースレターの最初のバージョンをニュースレタープラットフォームのタイニーレター(Tinyletter)を使って作ったのが約2年前だ。ほぼ同時期に、バズフィードは従業員たちが作ったニュースレターのプロモーションを助けると社内に発表した。バズフィードによるこの決定は「自分にとってベストなことを考えてくれていることがわかった」とカントロウィッツ氏は言う。このプロモーション戦略のおかげで当初計画していたよりも長くバズフィード・ニュースに務めることになったと同氏は語る。

これまでも記者たちは副業のニュースレターで成功するとそれを仕事に活かしてきた。2016年、ワシントン・シティ・ペーパー(Washington City Paper)で働いていたウィル・ソマー氏は右派メディアとコミュニケーションに関する副業ニュースレター、「ライト・リヒター(Right Richter)」をローンチした。それから2年のあいだに2度仕事を変えたソマー氏は、職場をザ・デイリー・ビースト(The Daily Beast)に移し同じトピックを報道している。もちろん、自分のニュースレターも移動させた。

自らのアイデアの補填に

副業ニュースレターはジャーナリストたちが本業で報じるのと同じトピックにフォーカスしているものの、それによって「共食い」は起きておらず、むしろ補填的な役割を果たしていると彼ら自身は捉えている。

デーヴィッド・ターナー氏はギズモード・メディア(Gizmodo Media)で音楽業界について書きながら、サイドプロジェクトとしてストリーミング音楽についてのニュースレター、「ペニー・フラクションズ(Penny Fractions)」を開始した。彼によると、ギズモードの編集者たちが掲載を断ったアイデアがニュースレターのトピックとなることが多かったという。

アトランティック(Atlantic)のスタッフであるヘレン・ルイス氏は、「ザ・ブルーストッキング(The Bluestocking)」というニュースレターを2015年から運営している。彼女によると、このニュースレターはまだ固まっていない、ラフな考えを読者とシェアするために使っており、彼女が面白いと思うコンテンツのリンクも含まれている。かつての多くのライターたちがおこなっていたブログ活用と同じスタイルだ。

「2010年代初頭のブログにはキュレーション的な機能があったが、今は(そうしたブログは)存在していない。ほとんどのパブリッシャーにおいてこうした目的の場所は用意されていない。しかし、記者が主導するキュレーションに対する渇望のようなものは確かに存在している」とルイス氏は言う。

「ザ・ブルーストッキング」のおかげで、ルイス氏は読者とTwitterなどのソーシャルプラットフォーム上よりも深いコミュニケーションをとることができている。それによって今後のアトランティック上での執筆の役に立つような形で自分の思考を鋭くすることができている、と彼女は付け加えた。

ニュースレターのメリットを享受する

リスクなしにニュースレターが持つメリットをすべて活用しようと狙うマネージャーたちは、彼らが抱える記者たちに自分たちがコントロールするニュースレターを与える方法をテストしはじめている。サブスタックのマッケンジー氏はパブリッシャーや彼らが抱える記者がサブスタックを使ってニュースレターを構築するためのミーティングを多くの企業と持っている、と語った。たとえば、5月後半にはウォールストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)のスタッフたちがコラボレーション形式のニュースレターをサブスタック上でローンチした。明確にWSJのブランドが使われたこのニュースレターは、「WSJエレベート(WSJ Elevate)」と呼ばれた。

記者による副業ニュースレターが編集者にメリットとデメリットをもたらすとしても、合理的な編集者であれば自分たちから奪うことはないと多くの記者たちが考えているようだ。

「Twitterのアカウントを作ってはいけない、と我々に伝えるようなものだ」とテッククランチ(TechCrunch)の記者であるスティーブ・オヒア氏は述べる。オヒア氏は2016年からニュースレター、「インザノウ(In the Know)」を運営している。

[原文:‘It’s like telling a reporter he can’t have a Twitter account’: Reporters are starting their own newsletters outside of their employer

MAX WILLENS(翻訳:塚本 紺、編集:分島 翔平)