THE CONFESSIONS

「『スコープ外』業務は、一度受け入れたら終わり」:あるフリークリエイターの告白

DIGIDAY無料メルマガに登録しませんか?

平日朝9時にマーケティング業界の最新情報をお届けします。利用規約を確認


クライアントの期待にはできるだけ応えたいが、仕事は最初に取り決めたスコープ内で収めたい。とりわけこれは、リテーナー契約(固定報酬型の契約)で仕事を受けるフリーランサーにとっては、悩みの種だ。

クライアントとの関係維持を考えて、範囲外の仕事でも仕方なく請け負う。これは、フリーランサーをはじめ、エージェンシーも悩まされることが多い「業界あるある」のひとつで、通称「スコープクリープ(scope creep)」と呼ばれている。フリーランサーたちには、クライアントの気分を害さずに追加料金を手にするという、離れ業をやってのける能力が求められている。

匿名性を保証する代わりに本音を明かしてもらう告白シリーズ。今回は、ブランドやエージェンシー、そして個人からも仕事を受けるフリーのクリエイターに、スコープクリープの実態と問題点、対処法を語ってもらった。なお、読みやすさを考え、発言は簡潔にまとめてある。

──スコープクリープとは? あなたとクライアントとの関係に及ぼす影響は?

スコープクリープは大きな問題で、困っているフリーランサーは多い。これは、リテーナー契約で仕事を請け負うフリーランスならなおさらだ。例を挙げるなら、何をするのかあらかじめ互いに同意しているのに、途中でクライアントが「ちょっとこれもやってもらえないか? 5分で済むから」と依頼してくる、そんな状況を指す。「思っていたのと違う。やはりこっちの仕事をお願いできないか?」なんていわれる場合もある。我々フリーランスにとってスコープに基づいた契約が大切なのは、何かあったらそれを頼りにすれば良いからだ。クライアントに対し、「対応は可能だが、代金は数倍になる」とはっきり伝えることができる。しかし、はじめて仕事をする、もしくはまだ付き合いが長くないクライアントとの場合、コミュニケーションの取り方がわからず手探りの状態になり、フリーランス側も安易にスコープクリープを認めてしまうことが多い。そして一度それを受け入れてしまうと、手に負えなくなる。

──具体的にいうと?

私は現在、あるクライアントの仕事をリテーナー契約で請け負っている。もちろん、はじめにスコープを決めて、互いに同意した。しかしプロジェクトがはじまるとすぐに、そのクライアントはほかの業務をたくさん依頼してきた。結局、私はスコープ外のことを山ほどするはめになったのだ。だからそのクライアントに、そちらの希望をすべて叶えることはできないと伝えた。そして、もっと厳密なスコープを改めて定めた。にもかかわらず、そのクライアントはまたほかのサポートを要求してきた。何をさせられても料金は決まっている。近頃では、いよいよ取り返しのつかない状態になった。

──線引きをもっと明確にすれば、解決できるのでは?

線引きが得意なフリーランサーもいれば、そうじゃない人間もいる。線引きを理解してくれるクライアントもいれば、そうじゃない人もいる。私の場合、線引きが得意なタイプじゃないし、クライアントもその辺の理解が乏しい。だからこそ、ここまで苦労しているんだ。

──コロナ禍に伴う解雇が相次いだ昨年、スコープクリープも増えたのでは? 予算が厳しいなか、企業はフリーランサーを都合良く使おうとしているなんてことは?

その可能性は間違いなくある。あるチームの下請業務では、スコープクリープがかなり見られた。特に、わたし以外のチームメンバーふたりは頭を悩ませていたようだ。「これ、ついでにデザインしてくれないか?」とか、「このキャンペーンもちょっとお願いしたい」といった具合に依頼が来る。そして、徐々にプロジェクトリーダーではなく、ほかのスタッフからも依頼が頻繁に寄せられるようになった。結果的に、クライアントのCEOからチームの皆に、スコープ外の注文は受けないようにと指示が出た。このままでは、物事が計画どおりに進まなくなるから、と。

──スコープクリープについて、クライアントに理解して欲しいことは?

「簡単にできるから、やっておいて欲しい」というようなリクエストは、恩着せがましい。そんなに簡単なら自分でやれば良い話だ。それにそのリクエストが簡単だとしても、我々に時間と心の余裕があるとは限らない。こうした失礼な物言いをやめてくれるだけでも、気持ちがかなり救われると思う。

──ほかには?

スコープは我々フリーランサーのみならず、クライアントを守る存在でもある。変化球を投げ続けたり、やることを際限なく追加したりしていると、フリーランサーを雇う意義が失われてしまう。別のスコープを設けてくれるというなら、それはもちろん素晴らしい。しかし、業務だけが追加されて料金はそのままというのは、我々の時間と専門知識を尊重していないことの表れだ。たとえ、クライアントの多くがリスペクトの心を持っていたとしても、我々の労働環境に、その思いが反映されているとはとても思えない。フリーランスを活用したいと思うなら、まずは常識的で明確なスコープを作って、それをきちんと守るべきだ。そうすれば、クライアントも右往左往することなく、戦略を立てることができる。

[原文:‘It can easily spin out of control’: Confessions of a freelance creative on the rise of scope creep

KRISTINA MONLLOS(翻訳:SI Japan、編集:村上莞)