コロナ禍でも広告収入を30%拡大、アップデイの強みとは:アクセル・シュプリンガー傘下の キュレーションアプリ

ニュースアグリゲーターアプリを手がけるアップデイ(Upday)は、ドイツのパブリッシャーであるアクセル・シュプリンガー(Axel Springer)の子会社だ。同社のアプリはサムスン(Samsung)のスマートフォン、タブレット、スマートウォッチ、冷蔵庫にプリインストールされている。そのアップデイが、第1四半期と第2四半期の両方で好調な決算結果を報告した。同社によれば、1日あたりのトラフィックが3倍に増えた時期もあったほか、信じられないことに今年に入って広告収入が30%以上増加したという。

アップデイの売り文句は、エディターやアルゴリズムを活用して、4000社を超えるニュースパブリッシャーからユーザーにとって関連性の高い記事を選んで配信するというものだ。今はあらゆるパブリッシャーでトラフィックの増加が見られるが、だからといってすべてのパブリッシャーが広告収入を増やしているわけではない。キーワードブロッキングが過剰におこなわれたり、広告の直接取引が停止されたりしているからだ。

「我々は信頼できるジャーナリストを抱えている。私の知る限り、アグリゲーターでジャーナリストにこれほど投資しているところはほかにない。また、我々は個人の嗜好を収集するアルゴリズム技術を持っている。この組み合わせが我々をこれほどまでに強くしているのだ」と、CEOのピーター・ビュルテンバーガー氏はいう。

信頼できるニュースソースへのニーズ

この4カ月間、新型コロナウイルスの危機的状況が続々と報じられるなかで、人々は信頼できるニュースソースを求めている。そんななかで、好ましいニュースソースとしての地位を確立しているのが、独自のユーザーを抱えさまざまなサードパーティプラットフォームと連携しているアップデイだ。同社の内部調査によれば、新型コロナウイルス関連のニュースを知る主要なソースのひとつとしてアップデイを挙げたユーザーの割合は90%だった。また、アップデイが唯一の主要なソースだと答えたユーザーの割合も50%にのぼっている。信頼できるパブリッシャーとの連携を目指しているとされるFacebookは、自社で開設している「新型コロナウイルス感染症情報センター」に情報を掲載するため、数カ月前からアップデイのジャーナリストにお金を払っている。

アップデイがもっとも多くの売上を上げている国はドイツで、その割合は全売上の4分の1弱だ。2番目に大きな市場は英国で、フランス、イタリア、スペインがその後に続く。ロイターの「デジタル・ニュース・リポート(Reuters Digital News Report)」によれば、米国では1週間にアップデイを利用している人の割合は3%だという(Googleニュースは17%で、Appleニュースは11%)。ただし、ライバルが続々と登場している。半年前には米メディア大手ニューズ・コープ(News Corp)が独自のアグリゲーター「ニューズ(Knewz)」を立ち上げた。ニューズ・コープによれば、月間ユニークビジター数は500万人近くに増えているという。

アップデイの場合、月間アクティブユーザー数は世界全体で2500万人を超えており、1日あたりのビジター数は平均で1100万人だという。また、欧州で新型コロナウイルスの危機が高まった3月〜5月には、1日あたりのビジター数が通常の3倍を記録した。

アプリ解析を手がけるセンサータワー(Sensor Tower)の推測では、アップデイが「Google Play」ストアからインストールされた回数は世界全体でおよそ130万回に上り、その24%をドイツが占めているという。また、2020年上半期の新規インストール数は前年同期比で76%近い増加となった。なお、センサータワーではサムスンのアプリエコシステムは追跡していない。

プログラマティック広告が収益源

今や総勢140名のスタッフを抱えるアップデイは、2018年に1000万ユーロ(約12億4760万円)を超える売上を計上し、黒字化を達成した。2019年には年間売上を50%増やしている。今年度は、上半期の広告収入が前期より30%以上増えていると同社は説明した。

売上の大半はプログラマティック広告の販売によるもので、カードのようなフォーマットで表示される各記事内のインベントリーをオープンエクスチェンジで取引している。昨年には、収益を管理する専門チームを立ち上げ、最低価格の見直し、新しいフォーマットの導入、キャンペーンの目的に応じた広告配置の管理などに取り組んでいる。アップデイはオープンエクスチェンジでの売上がさらに増えると見込んでいるが、キャンペーンの直接販売やプライベートマーケットプレイス経由での販売もおこなっている。また、デジタル取引のおかげで、28の言語にまたがる34カ国で広告を販売できるようになり、欧州に8カ所の編集拠点を設けている。

さらに5月には、新型コロナウイルスの影響でeコマースが盛んになった状況を受け、推奨製品を日替わりで紹介するアフィリエイトプログラム「アップデイ・チョイス(Upday Choice)」を立ち上げた。その詳細はまだほとんど明らかにされていないが、このプログラムが売上全体に占める割合は1桁台に達しているとアップデイはいう。

パブリッシャーのなかには、アップデイで独占的に記事を公開しているところもある。ある世界的なニュースパブリッシャーは、自社やそのほかのプラットフォームで記事を公開する数時間前に、有料記事のうちの1本をアップデイで無料公開してみた。この記事は英国のアップデイで土曜の朝にトップニュースとして掲載されたが、その結果クリック数が6万6000回に達し、CTRが15.6%を記録したとアップデイは述べている。通常アップデイでトップニュースとして表示された記事のCTRは10%だと、同社CEOビュルテンバーガー氏は話す。

アグリゲーターは今後も成長

分析プラットフォームのパセリ(Parse.ly)のネットワークデータによれば、モバイルとタブレットにおけるアップデイの参照トラフィックは、前月比で平均74%の伸びを示した。だが参照トラフィックの合計数は、リファラルプラットフォームとしてはかなり少ない。

「このような2桁の成長は、小規模なプラットフォームではよくあることだ」と、パセリの上級データアナリストであるケルシー・アレント氏はいう。「パブリッシャーやプラットフォーム(およびこれらプラットフォームのベンチャーキャピタリスト)は、まだデータが少ないときの結果に一喜一憂すべきではないが、このような結果はポジティブな兆候だ。検索やソーシャルの領域とは違い、アグリゲーターのカテゴリーは消費者のニーズを満たすためにますます多様化し、すばやく対応できるようになっている。アップデイの数値は少ないかもしれないが、これからますます成長するだろう」。

最近になってサムスンから出資を受けたアップデイは世界規模で成長し、より動画ネイティブなプラットフォームになるという大きな野望を抱いている。7月中旬には、サムスンのブラウザとの統合によってオーディエンスが増加した。ビュルテンバーガー氏は、この統合がもたらすトラフィックが全トラフィックの10%以上を占めるようになると期待している。

Appleは先月から匿名の広告IDであるIDFAをオプトインに変更し、アプリ内トラッキングを取り締まるようになった。このようなデータポリシーの厳格化によって、一部の広告主がAppleのエコシステムでの広告支出を控えるようになり、Google Playやサムスンが市場シェアを獲得する可能性がある。「アップデイにとっては、より多くの広告主を惹きつけ、得られる分け前を増やせるチャンスだ」と、ビュルテンバーガー氏は語った。

[原文:Investments in journalism, algorithms has Axel Springer’s five-year-old aggregator app Upday up over 30% in ad revenue

LUCINDA SOUTHERN(翻訳:佐藤 卓/ガリレオ、編集:分島 翔平)