パブリッシャーたちはインスタグラムのビデオに次々に群がっている。Facebookが所有するインスタグラムがビデオの再生時間を15秒から1分に延長してから15カ月が経ったが、彼らにとって非常に重要なプラットフォームとなっている。高エンゲージメントと広告メニューの使い易さがパブリッシャーに好かれる理由だ。
パブリッシャーたちはインスタグラム動画に次々に群がっている。Facebookが所有するインスタグラムが動画の再生時間を15秒から1分に延長してから15カ月が経ったが、彼らにとって非常に重要なプラットフォームとなった。ニュースウィップ(NewsWhip)の報じるデータがそれを示している。
米BuzzFeedニュースは2016年5月、インスタグラム上に2本の動画を公開しているが、2017年5月には57本の動画を公開。タイム(Time)のインスタグラム上の月間投稿の半分以上はいまや動画だ。その割合は、2016年3月と比べて11%増加している。ABCニュースの動画投稿の割合は4%から87%になった。BBCニュースにおいては90%を越えている。動画を増やすことでパブリッシャーは多くの成果をあげた。ただリーチを広げるだけでなくトラフィック、収益、エンゲージメントをインスタグラム上でもそれ以外の場所でも向上させているのだ。
インスタグラムにおける動画の投稿数がこれだけ激増したことでSnapchatとの競争に新たな局面が訪れているように見られる。しかし、今回取材したパブリッシャーで、Snapchat向けの予算からインスタグラム向けの予算への移動があったと答えたところはなかった。
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「一番パワーのある方法でストーリーを伝えようとしているだけだ。もしもストーリー的に動画である必要があれば、そうするまでだ」と語ったのはFOXニュースのオーディエンス開発・パートナーシップのシニアバイスプレジデントであるジェイソン・エリッチ氏。FOXニュースにおけるインスタグラム動画で、2016年3月と2017年5月の投稿数を比べると、その数は11倍以上に増えている。
エンゲージメントの高さが魅力
インスタグラムが動画機能を導入したタイミングは非常に遅かった。しかし、いまではアプリの中心的な機能となりつつある。(Snapchatと真っ向からぶつかる機能である)ストーリーのボタンはアプリのホーム画面のトップに位置しており、おすすめ動画は検索画面の最上段に表示される。
時間をかけて動画機能を展開させたことで、オーディエンスも食いついてきたようだ。多くのパブリッシャーがインスタグラムの動画投稿数を増やすなか、エンゲージメントもそれ以上の向上を見せている。ブリーチャーレポート(Bleacher Report)はこの5月、インスタグラム動画において4500万のエンゲージメントを獲得した。これは去年と比べると200%の改善となる。投稿された動画の合計数だと43%の増加だ。CNNはインスタグラム動画の数を19から53と対前年比で2倍以上に増やし、一方でエンゲージメントは500%増加しているという。
「異なるタイプのストーリーテリングを、クリエイティブを最大限活かして届けるようになった。また予算も本格的なものになっている」と、ブリーチャーレポートのプレジデントであるローリー・ブラウン氏はいう。
ブリーチャーレポートはパブリッシャーのなかでも動画を長年活用してきた会社のひとつだ。先月のインスタグラム投稿の70%は動画だったが、これは対前年比と変わらない。
オプションの豊富さも好印象
かつては動画の数がそれほど多くなかったパブリッシャーたちにとっては、動画投稿の増加がほかにも嬉しい成果を出している。ストーリーにトラフィックがもたらされたり、エンゲージメントが得られるのがそれだ。「とにかくオプションの数が多い。インスタグラムが動画に対して提供しているツールすべてを見た」と語るのは、タイムの写真・デジタルエンタープライズ責任者であるキラ・ポラック氏だ。タイム社全体でも動画は、いま注力している分野だと、彼は付け加える。
タイムのフィード上においてポラック氏のチームは、とにかく動画投稿の種類を広げようと工夫している。ポートレートとしても機能するシネマグラフから、タイムの雑誌表紙をアニメーションにしたもの、速報の映像、セレブがレッドカーペットを歩く姿のモンタージュまで、さまざまだ。
また、収益の面からもポジティブな影響が出ている。マネタイズに関しても時間をかけて導入したインスタグラムだが、パブリッシャーたちはプロダクトプレースメントやインフルエンサーキャンペーン、そしてコマースなどを利用して収益へとつなげてきた。去年、GQのソーシャル収益の70%はインスタグラムによるものだったという。
マネタイズはスナチャに勝る
マネタイズの機会という点でインスタグラムは、Snapchatを速いペースで追い越している。Snapchatではユーザーがブランデッドコンテンツを行うことを禁止している。パブリッシャーには、自身が売る広告を通してSnapchatをマネタイズできるメニュー、ディスカバー(Discover)が存在するが、参加できるパブリッシャーの選別は厳しく管理されている。
動画はマネタイズのコアとなった。ブランドはそこに参加したいと思っているし、パブリッシャーもそれを歓迎している。ステートファーム(State Farm)というブランドは、ブリーチャーレポートがインスタグラム用に作った動画フォーマットのスポンサーとして、数多く出稿している。「マネタイズの制限がないことが非常に気に入っている」と、ブラウン氏はいう。
インスタグラムのパブリッシャーアカウントが抱えるフォロワー数はそれほど大きくはない。ソーシャルブレード(SocialBlade)によると、インスタグラム上の人気のアカウントトップ100のうちパブリッシャーは10もいない。それでも、広告主たちからの興味は集まっている。アナリティクス企業ダッシュハドソン(Dash Hudson)のブランド戦略シニアディレクターであるマリアナ・リッテンハウス氏はいう。「パブリッシャーの良いところは、インフルエンサーとしての権威を持っていながら、ブランドの信頼を得ている点だ」。
Max Willens(原文 / 訳:塚本 紺)