「Snapchatのパクリ」と揶揄されていたインスタグラムのストーリーだが、ますますその影響力を増している。「ティーン・ヴォーグ(Teen Vogue)」は、これを利用してニュースレターのサブスクリプション数を効率的に増やすことに成功した。
「Snapchatのパクリ」と揶揄されていたインスタグラムのストーリーだが、ますますその影響力を増している。「ティーン・ヴォーグ(Teen Vogue)」は、これを利用してニュースレターのサブスクリプション数を効率的に増やすことに成功した。
ティーン・ヴォーグはコンデナスト(Condé Nast)が所有するメディアのひとつだ。彼らが3カ月前にローンチした「ウォーク・レター(Woke Letter)」は、ニュースと政治にフォーカスをあてたニュースレターになっている。ローンチ以来、もっともサブスクライバー数の増加に貢献しているのはインスタグラムのストーリーだ。ウォーク・レター経由のサブスクライブの多さは、スタッフたちの励みになっている。彼らのほかのニュースレターと比べても、ウォーク・レターは2倍の開封率を誇っているのだ。ほかのニュースレターには、ショッピングセールを扱うものや、ティーン・ヴォーグの記事のダイジェストを届けるものなどがある。
なお、コンデナストはウォーク・レターのサブスクライバー数を公開していない。
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政治ネタでアクセス増
ティーン・ヴォーグと「アルーア(Allure)」のソーシャルメディア責任者であるテロン・ムーア氏は、「インスタグラムのストーリーは、自然な相性の良さを持っている」と語った。
2016年の大統領選挙のレポートにおいてティーン・ヴォーグは驚異的な成功を見せた。それを土台にさらに成長させようとする試みがウォーク・レターにはある。彼らは大統領選以前、2015年から政治関連の記事を掲載しはじめている。しかし、「ドナルド・トランプはアメリカの正気を失わせている」といったセンセーショナルな記事は、大統領選中においてインターネット上で大きな話題と議論を集めた。これによってティーン・ヴォーグは政治と国内問題を取り上げるという方向性に切り替えたのだ。その結果、トラフィックは上昇している。コムスコア(comScore)によると、6月には昨年の同時期と比べて、約2倍ものユニーク訪問者となる680万という数字を叩き出した。
政治をクリック数を得るために利用しているという批判の声もある。しかし、ウォーク・レター限定のコンテンツであるエッセイなどもある一方で、その多くは別のパブリケーションの記事となっている。速報ニュース的な内容はどうしてもドナルド・トランプ関連になってしまうが、それ以外のことも多く扱っている。「ドナルド・トランプの週刊速報としてウォーク・レターを始めたわけではない」とムーア氏は言う。
戦略的にインスタを利用
ニュースレターのオーディエンスを増やすため、エンゲージメントがもっとも高いプラットフォームに焦点を当てている。それがインスタグラムだ。ティーン・ヴォーグのインスタグラムフォロワー数は210万人。これはFacebookにおける590万人に比べると少ないが、ニュースウィップ(NewsWhip)のデータによるとインスタグラム上のエンゲージメントという観点では、ビューティ・ファッション・パブリッシャーのなかでもトップクラスの成績を常に叩き出している。
1月から6月にかけて、コスモポリタン(Cosmoplitan)、エル(Elle)、そしてヴァニティ・フェア(Vanity Fair)といったライフスタイルパブリッシャーよりも高いエンゲージメントをティーン・ヴォーグはインスタグラムで達成。全体でみると、年比較で昨年よりもエンゲージメントが93%増加していることになる。6月のエンゲージメント数は350万以上だ。これらはニュースウィップのデータによる。
政治関連のレポートがこういった数値に貢献しているのは間違いない。インスタグラムではティーン・チョイス・アワード関連のレポートといった従来通りのものもある一方で、もしも警察に逮捕されたときに知っておくべき権利、といった記事へのリンクも発信しているのだ。「ビューティ・ハックの扱い方と同じレベルで、政治について扱いたい」とムーア氏は言う。

ティーン・ヴォーグのインスタグラム・ストーリーズの例。左「親は軍勤務、11才のトランスジェンダー少女は自分の健康のために立ち上がる。ブルー・ジャーヴェンは議会で語る」。右「もしも逮捕されたら、これがアナタの権利。これをアナタは知っておく必要がある」
宣伝予算を使う気はない
ソーシャルプラットフォームからニュースレター購読へと誘導することは、近年より容易になってきている。Facebookもインスタグラムもeメールアドレスを登録させることができる広告ユニットを広告企業向けに提供している。Facebookはさらにインスタント記事内でも読者のeメールを獲得できる機能を試験運用している。
しかし、上記のような機能は現在のところムーア氏は導入を検討していないという。ティーン・ヴォーグはウォーク・レターのオーディエンスを開発するための広告予算はまだ割り当てていない。これまでインスタント記事の利用を辞めたか、規模を縮小させた大手パブリッシャーの数は少ないが、コンデナストはそのひとつなのだ。その理由にはパブリッシャーのサイトに直接オーディエンスが来る場合と比べて、インスタント記事から生まれる収益が小さすぎることがあげられる。
「予算を使わずにFacebook上でできることは限られている」と、ムーア氏は言った。
Max Willens(原文 / 訳:塚本 紺)