インフルエンサー は利用無料、インスタ専用スタジオの中身:ウィリアムズバーグの豪華ペントハウス

ブルックリンのサウスウィリアムズバーグ、イーストリバーの近くに立つ一棟のラグジュアリービルディング。そのなかにはパーフェクトにデザインされた、寝室が3部屋、バスルームが3.5部屋のペントハウスがある。家賃は月1万5000ドル(約160万円)だ。

主寝室には小ぶりなバスタブが置かれ、グッチ(Gucci)の壁紙が貼られている。フロアから天井まで一面の窓ガラスからは自然光が大量に差し込んでくる。すぐ近くにあるのは小道具を収納するクローゼット。そこにはコーヒーテーブルに置くための本、雑誌、クッションやその他合計で約4万ドル(約435万円)相当のデコレーション用品があり、ペントハウス内のデコレーションを入れ替えられるようになっている。ここには誰も住んでいない。それでもほぼ毎日、インフルエンサーやセレブリティがプライベート玄関からプライベートエレベーターを使って出入りし、安定した収益を得ている。

インスタ向けの専門スタジオ

このペントハウスを所有するのはビレッジスタジオ(Village Studio)だ。彼らは大都市において、ブランドやインフルエンサーたちがインスタグラム(Instagram)用の写真やビデオを撮影するのに最適な明かりを備えたアパートや家を探し出す。最初のスタジオは2018年8月、ニューヨーク市のソーホー地区にオープンした。この場所はミレニアル世代を対象にしたピンクのアクセサリーで装飾されている。そこにはインスタグラムでよく見られるブラッシュピンク色のソファもある。ふたつ目のスタジオはロサンゼルスに先日オープンされ、次にブルックリンの前述のペントハウスがオープンした。

ソーシャル上のコンテンツを増やすブランドたち、そしてインフルエンサーマーケティングの成長を受けて、ビレッジマーケティング(Village Marketing)のファウンダーであるヴィッキー・シーガー氏は最初のスタジオをオープンした。

「ソーシャルメディアを見てみると、消費者たちはブランドよりもインフルエンサーたちと時間を費やしている。これはソーシャルが人間同士の繋がりを意味しているからだ。全体的にはインフルエンサーたちはほとんどのブランドが1週間に出すコンテンツの10倍の量を1日で生み出している。それに加えて、私が広告業界で働いていたとき、撮影用に倉庫を借りていた。大きな撮影用倉庫スペースを使ってプリント用の撮影だけで3万ドルから20万ドル(約330万から2200万円)を費やした。そのモデルが変わるなかで、コンテンツもその制作方法において転換するとわかっていた」と、シーガー氏は言う。

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コンテンツ制作方法の転換

昨年、オリジナルな場所を使って小規模な制作クルーで撮影をするブランドが増えていることに、彼女は気付いたという。ときにはクルーはソーシャルメディアマネージャーとiPhoneだけですらある。シーガー氏は、ビジネスの70%から80%はスペースを借りるブランドから来ていると説明する。しかしほとんどのブランドは撮影にインフルエンサーを連れてくる。コルゲート(Colgate)の撮影でオリビア・カルポが、エクスプレス(Express)の撮影でカーリー・クロスが、ケラスターゼ(Kerastase)の撮影でエミリー・ラタコウスキーが来た。

「多くのブランドたちはコンテンツスタジオをローンチしつつあり、それは正しい。すべてのブランドがスタジオを持つべきだ。それでも我々のようなビジネスをしているところは多くないため、今後も常にビジネスが成り立つだろう。特にプロのレベルでこれを行っているところは少ない。インフルエンサーたちはさまざまなスペースを必要とする。常にだ。人々がここに来たときは、ビデオを10本、写真を30枚、1日で撮影していく」とシーガー氏は言う。

ビレッジスタジオはあらゆる規模のブランドがインフルエンサーと繋がるのを助けるインフルエンサーマーケティングエージェンシーであるビレッジマーケティングの一部門だ。そのため、インフルエンサーたちは絶えることなくビジネスにやってくる。スタジオ利用のうち約20%から30%はインフルエンサーが占めている。ここにはビレッジマーケティングの既存のクライアントたちも含まれる。ビレッジマーケティングのインフルエンサーパートナーにはフィットネストレーナーのメーガン・ラウプ、ファッションモデルのリンジー・ソーマー、フードブロガーのサラ・クローフォードが名を連ねる。

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利用者にとってのメリット

メーガン・ラウプは彼らのスペースについて「コンテンツ撮影に使えるポテンシャルを持ったスペースを得られて、とにかく嬉しかった。スペースを見つけるのはときに非常に難しい作業になる」と語った。

ラウプはこれまで、ソーホーのスタジオで3回撮影を行った。彼女のフィットネスアプリのためのビデオ撮影、そしてインスタグラムのコンテンツ向けの撮影だ。ラウプを含めたインフルエンサーやブランドにとって、彼らのスペースの利点は、モジュール形式でデザイン変更ができることだ。ビレッジスタジオのチームがサービスを提供する形で家具は動かしたりスペースから取り除くことができ、本棚の本を入れ替えたりできる。アート類も壁から外し、動かしたり、新しいアートを飾ったり、カーテンを窓にかけることもできる。

ブルックリンのペントハウスに関して、ビレッジスタジオは消費者ダイレクト販売(D2C)の家具ブランド、メイデンホーム(Maiden Home)とパートナー契約を結んでおり、リネン・タオル類に関してはボール・アンド・ブランチと契約を結んでいる。メイデンホームは大手ブランドやインフルエンサーたちによってプロダクトを撮影してもらえることと引き換えに、家具のほとんどを提供している。それに加えて、ビレッジスタジオをショールームのように使うこともできる。シーガー氏によると、メイデンホームを選んだ理由は、カスタマイズ家具を6週間で提供できるからだ。これによってデコレーションを素早く行い、ビレッジスタジオも収益をあげることができる。

「スペースを素早く完成させて、運営を開始することは、我々にとって非常に重要な要素のひとつだった。実際にそれは成功した。(メイデンホームを使ったことで)3カ月削減することができた。ソーホー地区のスタジオではカスタム家具を作るのに3カ月もかかった。これは良くなかった」と、シーガー氏は言う。

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インフルエンサーは無料

インフルエンサーはスペースを無料で使うことができる。公式な契約書も必要ない。コンテンツを投稿する時もスタジオをタグ付けする必要がない。しかしほとんどインフルエンサーたちはスタジオをタグ付けする。なぜスペースを借りたかったの理由と、名前、eメールアドレスをビレッジスタジオのウェブサイト上のフォームに記入するだけだ。ブランド側は契約書と手数料を払う必要がある。手数料は移動させる家具の量によって、3000ドルから1万5000ドル(約33万から160万円)のあいだとなっている。

インフルエンサーやブランド向けに居住スペースを貸し出すコンセプトは新しい物ではないと、シーガー氏は言う。ロサンゼルスでは、人々は自宅をYouTube動画撮影のために貸し出すようになって長いと、彼女は言う。また、Z世代のTikTok(ティックトック)インフルエンサーたちのグループ、ハイプハウス(Hype House)のおかげで、このコンセプトは話題になっている。ハイプハウスには19人のメンバーがおり、そのうち4人は豪邸にフルタイムで居住している。ほかのメンバーたちは、コンテンツ撮影をしたいときに訪問する、といった具合だ。ビレッジスタジオも同様のコンセプトだ。違いは誰もここに住んでいない、ということだ。

「私はノースキャロライナ州から仕事のためにここにやって来るが、そのときもこのスタジオでは寝泊りしない。私自身はホテルに泊まる。ここでは誰も宿泊しないことになっている。パーフェクトな状態でなければいけない」と、シーガー氏は言う。

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Katie Richards(原文 / 訳:塚本 紺)