7月にオープンした「アルーア」のストアへ訪れてみた。カテゴリー別にレイアウトされているのが定番だが、このストアでは見出し別の配置になっている。その中には実際に『アルーア』誌サイトの記事の見出しになっているものも。ストアの特徴のひとつのテクノロジーとは?
7月上旬、ニューヨークのアルーア(Allure)ストアへ足を運んだ。その日は、インフルエンサーが大勢招待された公式オープンの翌日で、ストアについてのプレス発表が行なわれたソフトローンチの1週間後のことだった。
午前11時の開店直後に入店し、静かな店内を数分歩き回りながら、タッチャ(Tatcha)やシャーロットティルベリー(Charlotte Tilbury)の人気アイテム、マスカラのメロウェイ(Meloway)、天然カールヘア向けのクリーンなヘアケアライン、ナチュラリードレンチト(Naturally Drenched)のような新ブランドの製品などを撮影する。店員は、ニューヨークのデニムブランド、スティルヒアニューヨーク(Still Here NY)のベージュの特製ジャンププスーツ姿だ。数日前、エスティランドリー(Estée Laundry)のインスタグラムにストアについてのはじめての画像が投稿された時、店員が着ていたピンクのジャンプスーツについて、そのジャンプスーツがグロシエ(Glossier)に「所有」されているかどうかが議論になっていた。
雑誌の世界がストアになった
ビューティストアはブランド別、または最近ではクレンザーやモイスチャライザーなどのカテゴリー別にレイアウトされているのが定番だが、このストアでは見出し別の配置になっている。商品の上に表示された見出しは雑誌の見出しを真似している。その中には実際に『アルーア』誌サイトの記事の見出しになっているものもある。
Advertisement
たとえば、「夏の間(汗まみれにならず)輝く完璧なメイクアップのルーティン」。その棚には、超人気のイリア(Ilia)のスーパーセラムスキンティントやエミリーヒース(Emilie Heathe)のネイルポリッシュなどが並んでいる。「季節を問わず、柔らかでしっとりとした肌を手に入れる方法」には、ロードジョーンズ(Lord Jones)のCBD入りロイヤルオイル、ムラッド(Murad)のレチノールユースリニューアルセラム、また、セレピダーム(Celepiderme)のマルチビタミンアンプル、ハイエンドのインディーブランドのモナステリー(Monastery)のフローラボタニカルクリームセラムなどのそれほど有名ではないブランドの製品もある。
「あらゆる肌のために開発された日常スキンケアの選択肢」という見出しの壁には、フランスのラ ロッシュ ポゼの製品だけが並べられている。「あなたの人生がヘンリーローズのように芳しくあることが(女優)ミシェル・ファイファーの願い」という表示のある小さなテーブルには、ファイファーの香水の4点が飾られている(訳注:ヘンリーローズはミシェル・ファイファーのてがけた香水ブランド)。これらの見出しのほとんどは、6年間編集長を務め、7月末にその職を離れる予定のミシェル・リー氏によるものだ。
ブランドとストアのシナジー効果
特集されている製品はすべて、『アルーア』誌の記事またはそのウェブサイトで紹介されている。しかし、業界関係者によると、店内に商品展示場所を正式に確保するために各ブランドは手数料を支払ったという。これは、『アルーア』誌を出版するコンデナストも認めている。ラ ロッシュ ポゼやヘンリーローズのような専用セクションは、ほかの製品とともに並べられているスペースよりも高かったに違いない。
ブランドがこの店舗へ投資することによって、「店舗を会場として使用したり、データ分析や売上利益へのアクセス、インフルエンサーやメディアの認知度が得られるなど、さまざまなメリットがある」と述べているのはソニー・ジンディ氏だ。彼は、『アルーア』のオンラインコンテンツを小売スペースに置き換えるためにコンデナストが起用した小売プラットフォーム、ストア(Stour)のクリエイティブディレクター兼共同創設者だ。現時点では、今後3カ月の間に約190のイベントが予定されている。1日に4イベントの日もある。先週末には、ビューティブランドのリブティンテッド(LiveTinted)のインフルエンサー兼創設者であるディーピカ・マティヤラ氏が、ソーホーにあるこのストアでマスタークラスを主催、店の外まで行列ができた。
私が来店した日、ストアは盛況だった。開店2日目で、大勢のゲストが展示ブランドで働いていた。チャーチ&ドワイト担当の女性3人に話しかけた。同社は、アイコニックなバティステ(Batiste)ドライシャンプーの親会社だ。バティステのシャンプーはアルーア・ベスト・オブ・ビューティー賞を受賞している。
特定のブランドとは関係ない人たちに来店の理由を尋ねた。ある女性(高い評価を受けている小説家だったが匿名希望)は、ビューティアイテムについては『アルーア』誌の記事を参考にするのだと述べた。Tシャツとショートパンツ姿のある若い女性は「動物虐待のないブランドやドラッグストア」からよく商品を購入すると言い、店は「広々としていて、明るくて、匂いもとてもクリーン」と答えた。
シカゴから来ていた女性と、その15歳と17歳の娘2人にも話を聞いた。娘のひとりはインフルエンサーのTikTokでこのストアについて知ったが、誰だったかは忘れたという。母親は娘たちにはパッチョロジー(Patchology)のブレイクアウトボックスを、そして自分用にシャーロットティルベリー(Charlotte Tilbury)のピロートークリップスティックを購入した。彼女は製品の横にあるQRコードをスキャンしてスマホで支払った。階下では、スタッフが購入商品を集めて客に届けていた。
買い物客もインフルエンサーになれる
ストアの特徴のひとつはテクノロジーだ。多くのタブレットが備えられ、全製品にQRコードがある。QRコードは、コロナ禍以前よりもアフターコロナの世界にふさわしい。個人的には、これは香水に一番向いていると感じた。ヘンリーローズのそれぞれの香りを試香紙にスプレーし、ウェブページを開いてどれがどの香りかをチェックした。QRコードを介して利用できるリンクには、ブランドのソーシャルメディアアカウントとその製品を紹介する『アルーア』のコンテンツも含まれている。
アルーアストアでは、『アルーア』がビューティインフルエンサーの女王であるかのような世界を展開しているが、映像チュートリアルとセルフィー撮影のために設置されたスマートミラーのおかげで一般客も(それなりに)コンテンツクリエイターになれる。同店には独自のソーシャルメディアチャネル(インスタグラムの@theallurestore)があり、数人のインフルエンサー(19万人のフォロワーのいる@strollersinthecityなど)と協力して、ストアオープンを宣伝する有料コンテンツを制作した。TikTokでは、#allurestoreは約49000回再生されている。
https://www.instagram.com/reel/CROrAbrgO4Y/?utm_source=ig_embed&ig_rid=6324c1f7-d8cb-467c-a64f-e1971a05b0af
アルーアの目標は、新しい顧客を同ブランドの世界に呼び込むことであり、2021年にはこの点では雑誌の存在を超えたということになる。アルーアには、ポッドキャストがふたつ、製品のサブスクリプションボックス、もちろん複数のソーシャルプラットフォームもある。買い物客がUGCコンテンツでこの世界が拡大するのを手助けするなら、アルーアの成功は間違いないと言えるのではないか。
アルーアストア:
住所:191 Lafayette St, New York, NY 10013
[原文:Inside the Allure store, where anyone can be a beauty influencer]
SARA SPRUCH-FEINER(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)