アドブロックに関する記事のほとんどは、意図的に広告をブロックする人たちを取り上げている。彼らは広告を一切見たくないか、Webの動作を遅くする要素を排除したいかのどちらかだ。
だが、なかには、とくに広告を遮断するつもりはなく、アドブロックという「副作用」をもつ、別のことをしているだけの人たちもいる。仮に、彼らを「偶発的アドブロッカー」と呼ぶことにしよう。「偶発的アドブロッカー」とは、どんな存在か、また彼らがもたらす影響について考察する。
アドブロックに関する記事のほとんどは、意図的に広告をブロックする人たちを取り上げている。彼らは広告を一切見たくないか、Webの動作を遅くする要素を排除したいかのどちらかだ。だが、なかには、とくに広告を遮断するつもりはなく、アドブロックという「副作用」をもつ、別のことをしているだけの人たちもいる。仮に、彼らを「偶発的アドブロッカー」と呼ぶことにしよう。
「偶発的アドブロッカー」とは?
アドブロックとのいたちごっこを長らく続けているワイアード(WIRED)によれば、人々が偶発的アドブロッカーになるケースはふた通りあるという。ひとつは、所属する組織や企業を通じてインターネットに接続している場合だ。組織や企業のIT部門が、ファイアウォールにJavaScriptや特定のドメイン全体をブロックするWebフィルターを設定していれば、事実上のアドブロックとなる。
もうひとつは、Firefoxのプライベート閲覧モード「トラッキングプロテクション」機能を使用している場合だ。ブラウザ拡張機能「ディスコネクト(Disconnect)」のトラッキング遮断リストを利用しているため、同じくアドブロックとして機能するのだ。
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別のパブリッシャー、アトランティック(The Atlantic)も、スクリプトブロッカーを使用しているビジターはアドブロック利用者としてカウントされると話す。具体的には、ゴーストリー(Ghostery)などのプライベートツール、カスタムホストファイル、ノースクリプト(NoScript)などのJavaScriptブロッカーなどがある。
もちろん、これらのツールを使用するくらい詳しい人たちは、アドブロックソフトウェアを知っていて、すでに使用している可能性が高い。英調査会社グローバルウェブインデックス(GlobalWebIndex)によれば、米国の16~64歳のネットユーザーのうち、23%がゴーストリーなどのトラッキング遮断ソフトウェアを使用しているという。彼らの大部分(79%)は、なんらかの形でアドブロックしていると、同調査からわかっている。
一方、アドブロッカーをアドトラッキング回避のために使っている人も多いようだが、この場合トラッカーブロッカーを使う方が適切だと、ショーン・ブランチフィールド氏は言う。同氏は、パブリッシャーのアドブロック解除を支援するページフェア(PageFair)の最高経営責任者(CEO)だ。
ユーザーにとっては最悪の体験
アドブロック問題に携わる人々は、偶発的アドブロッカーの数について、まだ多くはないと考えている。ブランチフィールド氏によれば、3大プライバシーツール(ゴーストリー、ディスコネクト、プライバシーバジャー[Privacy Badger])のChromeストアでのユーザー数は合計で350万人だという。
だが、インドと中国で人気のアリババ(Alibaba)のUCブラウザや、モバイルキャリアのデジセル(Digicel)、スリー(Three)などのように、デフォルトで広告をブロックするブラウザやモバイルキャリアが増えれば、偶発的アドブロッカーも増えるだろう。今後はデフォルトのアドブロックが、ブロックを解除するよう設定を変更する方法を知らないメインストリームユーザーにも拡大するとみられる。
英調査会社ミディアリサーチ(Midia Research)のアナリスト、キャロル・セベリン氏は次のように述べている。「たとえば、ブラウザの初期設定のせいで知らずにアドブロッカーを使っているユーザーのアクセスをパブリッシャーが禁じた場合、消費者にとっては最悪のユーザー体験になるし、パブリッシャーのブランド構築にも大損害だ。意図的にやったわけでもないことについて読者を罰することになる」。
模索される具体的な対応策
好ましい展開としては、偶発的アドブロッカーを考慮に入れた対策として、パブリッシャーがメッセージを軟化させていること。たとえば、広告の少ないページを提供する見返りとしてホワイトリストに追加するよう求めたり、ほかの方法によるサイトへの金銭的支援を求めたりするようになったことが挙げられる、とブライアン・ケイン氏は言う。ケイン氏が最高執行責任者(COO)を務めるソースポイント(Sourcepoint)は、パブリッシャーにアドブロック対抗技術を提供する新興企業だ。
アトランティックは、偶発的アドブロッカーとのコミュニケーションに苦慮しているパブリッシャーのひとつだ。「アドブロッカーの使用を確認しました」のメッセージを受け取って不満を訴える読者もいる。デジタル担当のシニアバイスプレジデントでビジネス開発部門を率いるキム・ラウ氏によると、問題なのは、アトランティックにおいてこうした人たちを追跡できないため、彼らを定量化することも、メッセージを彼らに合わせて調整することもできないことだという。
「現行のメッセージでは『アドブロッカー』という単語を使っており、ユーザーが意図的に使用しているとみなしている。将来的には、ユーザーが使用していると我々が『考えている』ソフトウェアではなく、その結果について言及する、あるいはソフトウェアに言及する場合は、もっと包括的なくくりで表記する形に、変更されるだろう」。
Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)
Image from Thinkstock / Getty Images