Netflix(ネットフリックス)は4月25日、中国のオンライン配信サービスであるアイチーイー(愛奇芸:iQiYi)とオリジナルコンテンツに関するライセンス契約を結んだことで、念願の中国市場への進出を果たした。アイチーイーはバイドゥ(百度)傘下のサービスで、有料会員は、2000万人を超える。
オンラインストリーミングサービスのNetflix(ネットフリックス)は長年、中国市場への進出の可能性を探ってきた。
そして4月25日、中国のオンライン配信サービスであるアイチーイー(愛奇芸:iQiYi)とオリジナルコンテンツに関するライセンス契約を結んだことで、中国市場への進出がようやく実現する。アイチーイーはバイドゥ(百度)傘下のサービスで、有料会員は、2000万人を超える。
Netflixは詳細については多くを明らかにしていないが、この提携は同社が中国に存在する7億3100万人のインターネットユーザーへリーチするのに役立つ。同社の米国における会員数は減少しているが、中国のインターネットユーザーのうち30%は、オンライン動画を毎月視聴。中国政府によるNetflixへのアクセス遮断や、長期にわたるコンテンツの承認プロセスといった潜在的なリスクはあるが、Netflixが中国に進出するには、現地企業と提携するしか方法はない。
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Netflixの狙い
「ストリーミングサービスの競争において、中国は最高の手柄だ。Netflixは中国進出にあらゆるリソースを使ってきたが、自力ではまず実現しない」と、メディアに関して助言するクリエイティービーメディア(Creatv Media)の創業者で会長のピーター・セイシー氏は指摘する。「こうした提携は賢明な一手であり、Netflixにとって唯一の指し手だ」。

Netflixの登録者数の推移
セイシー氏の推測では、今回の提携は純粋なコンテンツライセンス契約か、会員からの収益の配分契約のどちらかだという。上海に拠点を置くマーケティングコンサルタント企業チャイナ・スキニー(China Skinny)のマネージングディレクター、マーク・タナー氏は、中国の規制当局が外国のメディア企業による動画ストリーミングサービスの運営を禁じてきたと指摘。ただし、バイドゥとの提携は中国政府との円滑な交渉に役立つので、Netflixとアイチーイーの両方にとって好都合だという。
「バイドゥはまた、検索エンジンなどの資産を通じて膨大なデータを蓄積しており、Netflixのコンテンツ開発に貢献できそうだ」と、タナー氏は語る。
アイチーイーの現状
アイチーイーはNetflixと同様に、人気が高いオリジナルシリーズを数多く投入してきた。ただし、2013年にバイドゥに買収されて以来、まだ黒字化していない。バイドゥの直近の決算報告では、アイチーイーの2016年のコンテンツ制作費は約79億元(約1300億円)に達した。
したがって、Netflixの番組のおかげで、アイチーイーと親会社のバイドゥは制作費の重荷を軽減しつつ、オンラインエンターテインメントに対する中国の視聴者の需要を満たせると、タナー氏は付け加えた。
ただし今回の提携は、Netflixとアイチーイーの両社にとってリスクを伴う一手でもある。Netflixは通常、シーズン単位でオリジナルシリーズを制作し、制作を終えてから1〜2週間後に配信する。Netflixがほかの国と同時に中国で新番組をリリースしたい場合には、そうしたペースが問題になるだろう。というのも、中国政府は、事前にシーズン全体を検閲するからだ。テレビ業界アナリストのアラン・ウォーク氏は、配信開始日の前に10~15時間分のコンテンツを中国政府が検閲できるように、Netflixは十分な期間を確保する必要があるという。
「中国政府の検閲当局が、Netflixに対応するためにわざわざ残業をしない」と、ウォーク氏は語る。「したがって、中国市場での新シリーズ配信は、おそらくほかの国よりも数週間遅れるだろう。すると、レビューとコメントが先にオンラインで目に触れるので、これが中国の視聴者に受け入れられず、アイチーイーのサービスに影響するかもしれない」。
中国進出の事例比較
ところで、中国に対して大きな野心を抱く西側の企業は、Netflixが最初というわけではない。先例は、Appleと配車サービスのUber(ウーバー)だ。ただし、AppleはiBooksとiTunesを立ち上げたが、2016年に中国当局からサービス停止を強いられた。Uberはバイドゥと提携して出資を受けたが、やはり昨年に中国市場から撤退した。
「ひとつの懸念は、Netflixが成功すると自らの首を絞めるというものだ」と、ウォーク氏は案じる。「現地企業と競合するほど大きくなれば、中国政府に停止される可能性が高くなる。それが現実になれば、アイチーイーにとってのリスクはさらに大きくなる」。
だが、クリエイティービーメディアのセイシー氏の考えでは、バイドゥとNetflixの提携はUberとの場合と大きく異なる。というのも、Netflixはおそらく、中国の規制当局相手にお馴染みの試練をすでに経験しているからだ。
「バイドゥが今回のNetflixとの提携を掌握しているのは、明らかに見える。したがって、Netflixが成功すれば、それは中国企業の成功を意味する」と、セイシー氏は語る。「主要な問題はコンテンツ。何が中国の当局に容認されるかだ」。
Yuyu Chen(原文 / 訳:ガリレオ)
Image from 米DIGIDAY