サブスクリプション事業を始めたい? それなら、「わくわくするような新展開」についてのプレスリリースの文言を練る前に、やるべきことがある。広告収入に代わってユーザーからの売上にフォーカスすることに伴う、新たなコストの計算だ。一つひとつ見ていこう。【※本記事は、一般読者の方にもnoteにて個別販売中(480円)です!】
サブスクリプション事業を始めたい? それなら、「わくわくするような新展開」についてのプレスリリースの文言を練る前に、やるべきことがある。広告収入に代わってユーザーからの売上にフォーカスすることに伴う、新たなコストの計算だ。
以下の多くは、発足当初から必要なわけではない。だが、遠からず必須になってくる。顧客の獲得と維持を本気で考えているならなおさらだ。
一つひとつ見ていこう。
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顧客データプラットフォーム(CDP)
読者に有料購読してもらうためには、彼らの関心や、コンバージョンファネルのどこにいるか、誰が何を所有しているかなど、できるかぎり多くの情報を得なければならない。そのためには、顧客データプラットフォームなど、オーディエンス分析に役立つソフトウェアを利用する必要がある。
コスト:年間5万ドル~25万ドル。大企業向けの多機能パッケージの場合、利用料が年間100万ドルを超えることもある。
ペイウォール/支払処理
現在のコンテンツ管理システムは、有料購読ユーザーと未登録者を区別し、コンテンツを遮断したり、クレジットカードでの支払を処理できるだろうか? もしできないなら、そのためのシステムが必要だ。
コスト:機能もコストもまちまちだが、一般的なもので年間7万ドル程度。
アナリティクス
カゴ落ち(カート放棄)関連のデータや、どんなコンテンツがコンバージョンを最大化できるか、サイト上のトラフィックを誘導するにはどんな方法が最適かを、誰が精査し分析すればいいだろう? 最初のうちは、オーディエンス開発チームがこうした仕事を担当することもできるが、いずれはフルタイムでこれらの分析にあたる人員が必要だ。もちろん、アナリティクスやCDPを適切に運用しているのが前提だ。
コスト:グラスドア(Glassdoor)によれば、データアナリストの最低年俸は5万7千ドル+諸手当。オーディエンスデータのより深い分析に欠かせない、データサイエンティストの年俸は、アナリストの2倍以上になる。
マーケティング予算
顧客獲得コストは、しばしばDTC(直販)ブランドの予算の筆頭項目にあがる。これには、自社サイト上の広告在庫を譲渡して広告を掲載したり、Facebook広告に予算を投じたりといったことが考えられる。また、マーケティングの成功のためには、顧客生涯価値(LTV)などの概念をしっかりと理解することも欠かせない。ただし、これに関しては、高給取りのアナリティクスチームに任せて差支えないだろう。
コスト:千差万別
技術サポート/カスタマーサービス
この世で不機嫌な顧客よりも悪いものはただひとつ、何時間も何日も待たされたあげく満足のいかない回答をつきつけられた不機嫌な顧客だ。メディアは他の多くの業界と勝手が違うかもしれないが、顧客は顧客であり、彼らはみな迅速な回答を求める。カスタマーサービスと技術サポートを兼任させることもできるが、継続的にしっかりと研修を実施し、サポート体制を整える必要がある。モバイルアプリのバグ修正の方法はアンドロイドの機種ごとに違うし、OTTの問題はプラットフォームごとに多種多様だ。
コスト:カスタマーサービス担当者の年俸の中央値は3万5千ドル。
心構えと考え方
最大のコストは、職場の政治資本に関するものかもしれない。サブスクリプション売上が優先課題になることで、パブリッシャーの組織のあらゆるレベルに影響が及ぶ。編集部にオーディエンス規模を抑えることの重要性を理解してもらい、営業責任者にその仕事の意義は変わらないと説明することは、適切なツールの導入と同じくらい重要だ。それに、参加意識を高めることは節約にも役立つ。
「(早く成長を達成しなければという)内部のプレッシャーをなくすことが、コスト削減につながる」と、ある大手新聞パブリッシャーの幹部はいう。
コスト:プライスレス
Max Willens(原文 / 訳:ガリレオ)