フォーブスには、ソーシャルメディア担当ディレクターのショーナ・グリーソン氏が率いる7人体制のチームがある。半年かけて編成されたこのチームには、プラットフォーム別の専門家がいて、それぞれがデザインや動画などを担当するほかの編集スタッフと協力している。彼らのソーシャルに対する取り組みを紹介する。
ソーシャルプラットフォームが売上のうちわずかな割合しかパブリッシャーに還元しない状況で、一部のメディア企業は、人件費がかさむ特定プラットフォーム担当編集スタッフの雇用を見直しつつある。たとえば10人体制のSnapchat(スナップチャット)専門チームも、近いうちに解散の日を迎えるのかもしれない。
フォーブスメディア(Forbes Media)を例にとろう。同社は独立したパブリッシャーなので、費用を分担するほかのグループ企業がない。2008年には、印刷版とデジタルのスタッフをまとめた。最高製品責任者のルイス・ドボーキン氏は、ソーシャルメディア向けの記事作成と動画制作のあり方についても、同じ考えを当てはめてきた。
専任チームの取り組み
フォーブスには、ソーシャルメディア担当ディレクターのショーナ・グリーソン氏が率いる7人体制のチームがある。半年かけて編成されたこのチームには、プラットフォーム別の専門家がいて、それぞれがデザインや動画などを担当するほかの編集スタッフと協力している。
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ソーシャルチームは7人しかいないので、自分たちだけでフォーブスのソーシャルコンテンツすべてを制作するというわけにはいかない。そのため、ときにはデスクの役割を担い、プラットフォーム別に記事のアイデアを考えたり、特定のプラットフォーム向けの記事を編集スタッフと協力して作成したりすることもある。
「ここでの戦略は、『ソーシャルファースト』の傾向がますます強くなっている」と、ドボーキン氏は説明する。「場合によっては、ソーシャルチームは実際に編集チームのコンテンツ制作に協力している。数年前は、編集者がソーシャルの担当者に『書いたばかりのこの記事をPRしてくれないか』と頼んでいた。いまでは、LinkedInやSnapchatの担当者が、『これこれのネタで記事を書いてほしい。自分が担当しているプラットフォームですごく反響がありそうだから』と提案している」。
ソーシャル視点の企画事例
一例を挙げると、グリーソン氏らのチームは最近、「スーパーボウル観戦にぴったりのおいしいレシピ(Tasty Super Bowl recipes)」というアイデアを社内の動画チームに提案した。動画チームは、フォーブスが公開した2017年版「30 Under 30(30歳未満の重要人物30人)」リストにフード分野で選出された2人、ポップコーンを製造するピップスナックス(Pipsnacks)のジェニファー・マーティン氏とカッツ・デリカテッセン(Katz’s Delicatessen)のジェイク・デル氏の動画を撮影。ソーシャルチームはスーパーボウルの前日、これらの動画をFacebook、インスタグラムの「ストーリー」、Snapchatに投稿した。
別の例では、ソーシャルチームは、ソーシャルビジュアルグラフィックス担当チームに、バレンタインデー用のインスタグラム「ストーリー」を提案。その結果作成された記事「数字で見る大失敗(Bumble By the Numbers)」では、出会い系アプリについて考察し、データの分析やプロフィールのベストプラクティスなどの情報を盛り込んだ。
こうしたアプローチは、現代のメディアの需要に応えられるようジャーナリストを訓練しなおすというドボーキン氏の目標に合致する。この目標のため、フォーブスはまた、専属記者全員が特定のプラットフォーム向けにコンテンツを制作できる新しいCMSの構築も進めている。
「成功を望むジャーナリストは、かつてならデジタルを理解する必要があった」と、ドボーキン氏は語る。「いまは、そうしたソーシャルプラットフォーム向けコンテンツの制作方法を理解するほうがいい」。
フォーブスの営業方針
フォーブスはすでに、2016年の1年間でソーシャルメディアのフォロワー数を大幅に増やした。Facebookは73.9%増の420万人、Twitterは48.6%増の1160万人、インスタグラムは197.9%増の130万人だった。ただし同社は、配信コンテンツからどれだけ売上を得ているかは明かしていない。今年は配信コンテンツ戦略を強化する計画だと述べるにとどまった。
フォーブスはまた、売上の面で従来とは少し異なるアプローチをとる。かつて同社は慣行を破り、編集スタッフが使用するパブリッシングシステムにブランドがアクセスできるようにした。それと同じように、ソーシャルメディアチームの線引きも曖昧にしている。ソーシャルメディアチームが、ソーシャルチャネルへのブランドの誘導方法に関して、営業やマーケティングの部門にアドバイスしているのだ。その役割を担う専任スタッフを雇う計画もある。
「我々と取引しているマーケターやブランドは、信頼できるパブリッシャーのニュースを読みに来るオーディエンスにリーチしたい。そこでソーシャルチームは、ほかの部署と協力し、タイアップのあらゆる可能性を検討しているのだ」と、ドボーキン氏は説明する。
懸念されるリソース不足
フォーブスのアプローチは、多くのクリエイティブエージェンシーの手法に似ている。コンテンツやアイデアからスタートし、次にそれに合わせた配信とチャネルの戦略を組み立てると指摘するのは、エージェンシーのインディゴ(Indigo)でゼネラルマネージャーを務めるベンジャミン・アーノルド氏だ。
ただし、こうしたアプローチにはリスクがある。ソーシャルの動向は急速に変化するので、つねに最新のトレンドを把握してタイムリーに対応するには、多くのリソースが必要になるのだ。「ソーシャル戦略の成否を決める重要な要素が、専門知識であることは明白だ。しかし、リソースが乏しい少人数のチームはすぐに、大人数のチームよりも不利になるだろう」と、アーノルド氏は語った。
Lucia Moses(原文 / 訳:ガリレオ)