ブルームバーグ(Bloomberg)のニュース報道で、データを視覚化・図表化する取り組みの重要性がますます高まっている。この取り組みを担っているのがデータジャーナリズムチーム(グラフィックスチームとも呼ばれる)で、ニューヨーク、ワシントンDC、ロンドン、香港に総勢30名のスタッフを抱えている。
ブルームバーグ(Bloomberg)のニュース報道で、データを視覚化・図表化する取り組みの重要性がますます高まっている。この取り組みを担っているのがデータジャーナリズムチーム(グラフィックスチームとも呼ばれる)で、ニューヨーク、ワシントンDC、ロンドン、香港に総勢30名のスタッフを抱えている。2012年にこのチームが独立した部門として立ち上がったとき、スタッフの人数は6名だった。その彼らが、いまも定期的に公開されている「ブルームバーグ・ビリオネア指数(Bloomberg Billionaire Index)」のようなインフォグラフィック記事にトライしはじめたのだ。
ブルームバーグによれば、2018年にグラフィックスチームが獲得した平均月間トラフィックは、前年比で19.3%増加したという。ただし、具体的な数値は明らかにしていない。
成功の物差しは影響力
「我々は、グラフィックが与えた影響力を成功の物差しにしたいと考えている。我々が取り組んでいるグラフィックは、いろいろな物事を変化させてきた」と、グラフィックおよびビジュアルデータ担当エグゼクティブディレクターを務めるマーチン・キオハン氏はいう。
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2018年11月、グラフィックスチームは、「判決の承認(confessions of judgment)」と呼ばれる古い法的文書を利用した訴訟の増加を伝えるインフォグラフィック記事を制作した。この法的文書は、中小企業が融資を受ける条件として、返済不履行で貸し手から訴えられても裁判で争わないことを署名で公約させるものだ。ニューヨーク州では、この文書を根拠に貸し手が中小企業を訴えた裁判がこの3年間で2万5000件にのぼり、いまも増え続けているという。このブルームバーグの報道を受け、ニューヨーク州の検事総長と2人の上院議員は、この制度を廃止すべきかどうか調査しはじめたとキオハン氏は述べている。
また、2017年には、Amazonが始めた当日配達サービスに関するインフォグラフィック記事を制作。この記事は、当日配達サービスの対象外となっている地区に、マイノリティの人口が多い地区が多く含まれていることを明らかにするものだった。Amazonはこの記事を受け、ボストン、ニューヨーク、シカゴの3都市で、当日配達サービスの提供地域を市内全域に拡大した。
ブランディングとして
「メディア界はいま、フェイクニュースがあちこちに流され、何が事実で何が真実なのかを人々が言い争っているような状況にある」と、キオハン氏はいう。「データジャーナリズムは、そのような状況を克服し、信頼を確立するための手段だ。(データジャーナリズムは)詳しい調査と分析がなされた適切なデータを根拠としているため、ブルームバーグは、データに裏付けされた事実を伝えるニュースソースとして際立った存在になれる」。
エコノミスト(Economist)などのパブリッシャーは、ソーシャルでインフォグラフィックを公開することで、読者をサイトに呼び戻し、有料購読につなげようとしている。また、ほとんどのパブリッシャーが、複雑なストーリーをひと目でわかりやすく説明するために、インタラクティブなグラフや図表を利用してコンテンツを補完しているが、滞留時間やページビュー数以外の指標でその成功の度合いを測定するのは難しい。
2016年に、ブルームバーグのグラフィックスチームは編集チームとより緊密に統合された。おかげで、定期的なニュース編集会議に参加したり、自社のほかのジャーナリストと連携を深めたりすることで、調整作業やデータの視覚化を以前よりうまく行えるようになった。ニュースのサイクルにもよるが、グラフィックスチームは毎月、およそ100種類の簡易なグラフィックと35種類ほどの詳細なグラフィックを作成している。後者の例は、Amazonや「判決の承認」に関する特集記事向けのインフォグラフィックだ。こうした特集記事は、インタラクティブな機能とストーリー性を備えた独自のウェブページとして公開されることが多い。
ロングテールな需要
インフォグラフィックを使った特集記事は、注目度が長続きするのが普通だ。たとえば、アメリカの土地利用(市街地、農地、山林)の状況を説明したインフォグラフィック記事は、ソーシャルで広く拡散され、いまだにトラフィックを稼いでいる。ブルームバーグによれば、この記事はグラフィックスチームのアイデアから生まれたもので、2018年のインフォグラフィック記事でもっとも多くのユニークユーザーを獲得しただけでなく、Bloomberg.comの全記事で2番目に多いユニークユーザーをもたらした。グラフや図表はたいてい編集チームの要請で作られるが、高いパフォーマンスを上げた記事はグラフィックスチームのアイデアから生まれたものが多いと同社は述べている。
「我々は当初から(グラフィックの制作に)関わっているため、多くの経験を積んでおり、常に問題意識を持って、読者と同じようにさまざまな質問をしている」と、ブルームバーグのグラフィック編集責任者、アレックス・トリボウ氏は語った。
たとえば、タイムラインは出来事を時系列に表示する方法としてよく使われるが、必然的に過去を分析するためのものになる。2018年11月には、ベネズエラで政府への抗議行動が続き、トランプ政権が原油制裁を検討するなか、グラフィックスチームは、このような政治不安や経済不安を引き起こしている出来事が何なのかを調査した。その結果、原油価格が過去20年間のベネズエラに共通する問題であることがわかったという。この問題がGDP、インフレ、貧困に影響を与えてきたことを、原油価格をバロメーターとして過去の出来事を分析するなかで発見したのだ。
取り組み拡大のために
ブルームバーグは、今後もグラフィックスチームを強化し、より高い成果を上げたいと考えている。そのため、編集チームのジャーナリストが「パイソン(Python)」などのデータ分析ツールやもっと簡易なツールを使えるようにトレーニングする計画だ。そうすれば、編集チームが簡単なグラフィックをすぐに作成できるようになるため、グラフィックスチームは、より内容の深い特集記事の制作で編集チームにもっと協力できるようになる。
「我々はこの取り組みを拡大することで、チーム間の連携をさらに深め、報道するニュースを増やし、より大きな影響を与えられるようになりたい」と、キオハン氏は語った。
Lucinda Southern(原文 / 訳:ガリレオ)