ドイツで再燃、パブリッシャー vs 広告ブロッカー の戦い:今回の争点は「著作権侵害」

ドイツでアドブロッカーを提供するアイオー(Eyeo)とプレミアムパブリッシャーのあいだで激しい戦いが続いている。

アイオーはアドブロッカーであるアドブロックプラス(AdBlockPlus、以下ABP)を保有する企業だ。独メディアコングロマリット企業アクセル・シュプリンガー(Axel Springer)は過去4年にわたりアイオーに対する一連の訴訟で負け続けている。そんな同社だが、アイオーを再び訴えるにあたり、今回は著作権侵害を争点としている。

欧州では2016年ごろに、はじめて危機的なレベルにまでアドブロッカーが普及し、パブリッシャーを悩ませた。現在は当時ほど危機的な状況とはなっていない。だが収益への損失が続いていることに変わりはなく、少なくともドイツではアドブロッカーと争いが絶えないレベルの状況にある。

アクセル・シュプリンガーが完全に問題視しているのは、ほかの非営利かつオープンソースのユーブロック・オリジン(uBlock Origin)といったアドブロッカーとは異なるABPのビジネスモデルだ。ABPは、アイオーの2人の共同創設者が「ユーザー体験にとっての悪」とみなす広告をブロックするソフトウェアだ。ABPには、パブリッシャーとプラットフォームから支払いを受けた広告については表示を許可するホワイトリストが存在する。英国の文化・メディア・スポーツ大臣を務めたジョン・ウィッティングデール氏は2016年、このビジネスモデルを「みかじめ料(Protection Racket)」と表現している

最新の状況は以下の通りだ。

今回の訴訟がこれまでと異なる点

アクセル・シュプリンガーの今回の訴訟では、ABPによる著作権保護法への抵触が争点となっており、同社はABPを専門的な解釈で倒す方針だ。同社は、ABPはインベントリーをブロックするためウェブサイトのプログラムコードを書き換えており、これがパブリッシャーの著作権を侵害する違法行為にあたると主張している。

アクセル・シュプリンガーのメディア法律部長を務めるクラース・ヘンドリック・ジューリンク氏は、ドイツのニュースサイト、ハイス(Heise)に対して「アドブロッカーはウェブサイトのプログラムコードを書き換え、法律で保護されたパブリッシャーのコンテンツに直接アクセスしている」と語っている。

当然ながらABPはこの主張を否定している。これまで両社のあいだでは3度にわたり訴訟が繰り広げられており、両社の仲が険悪であることに疑いの余地はない。ABPのアドボカシー部門のディレクター、ベン・ウィリアムズ氏は「アクセル・シュプリンガーの訴状に目を通したわけではないので具体的なコメントはできない」としつつも、次のように語った。「アクセル・シュプリンガーは当社に書面で通知もせずに、今回の裁判について公にしている。訴訟内容と同様、妙な話だ」。

パブリッシャーにとってどれほど大きな問題か

調査会社のeマーケター(eMarketer)の昨年9月の発表によると、広告のブロック率がもっとも高いのはドイツで、デスクトップPCであれば21.4%がブロックされている。それに続くのがフランスの15.4%、イギリスの12%だ。ヨーロッパ全体で見ると20%から25%のあいだが多く、2016年の中頃の平均30%から比べればかなり少ないとはいえ、収益のかなりの割合を占めている。

英国のオンライン出版社協会(Association of Online Publishers:以下、AOP)が昨年夏に発表したデータによると、メンバー企業14社の広告のうちでデスクトップでブロックされている率は30%となっており、2016年は31.7%だった。AOPは、ブロックされたインプレッションによる収益損失は1400万ポンド(約20億円)近くに達し、パブリッシャー1社あたりの年間損失にすると63万ポンド(約9140万円)になると算出している。

2017年にはいくつかの企業がモバイルデバイス上のアドブロッカーが爆発的に普及するだろうと予想していたが、少なくともドイツ国内ではいまだ現実とはなっていない。

だが、ドイツのパブリッシャーのあいだでは、定常状態で推移するアドブロッカーの普及率がABPにとって収益上の懸念材料となっているのではないかという疑惑が持ち上がっている。パブリッシャー関係者らによると、その結果ABPはこれまでよりもブロックを強化し、主要パブリッシャーのウェブサイトの動画プレイヤーをハッキングしてプレロールの広告インベントリーをブロックしたり、ほかのネイティブアドの広告スポットをブロックしたりするようになっているという。これまで以上にインベントリーをブロックできればそれだけ料金を請求できるというのがその理由だ。

ABPの請求料金は固定料金となっている場合もあるが、ブロックしたインベントリーの3割というのが一般的だ。パブリッシャー関係者によると、この3割という数字も交渉によって割り引かれる場合もあるという。

これまでの訴訟

ドイツのパブリッシャーはこれまで何度もABPへの訴訟を起こしており、これからも止むことはないだろう。こうした訴訟は決着までに何年もかかり、両社に多額の訴訟費用を強いることになる。2015年から2019年までのあいだに、ABPはメディア企業から7件の訴訟を受けおり、7件とも最高裁判所で退けられている。

一方アクセル・シュプリンガーも、2016年にホワイトリストの料金は請求すべきではないとの判決を受けて部分的な勝利をおさめた。だが最高裁でこの判決は覆り、ホワイトリストの料金は合法となっている。

2015年にはドイツの全国紙ディー・ツァイト(Die Zeit)とハンデルスブラット(Handelsblatt)がアイオーに敗訴し、2016年にはデア・シュピーゲル(Der Spiegel)が逆転敗訴している。2017年にはほかにもメディア3社が訴えを起こしているが、RTLインタラクティブ(RTL Interactive)やテレビ放送局のプロジーベンザット1(ProSiebenSat.1)、国内新聞社の南ドイツ新聞(Süddeutsche Zeitung)のいずれもアイオーに対し逆転敗訴を喫している。

いたちごっこの回避

アドブロックの台頭により、アドブロッカー側は広告をブロックし、パブリッシャーはブロックを回避しようとするいたちごっこが発生している。パブリッシャーによるブロック回避は気づかれない場合も多いが、広告ブロック率が一定水準に抑えられているのもこの取り組みによる部分が大きい。またユーザーに自主的にアドブロックを無効にさせるような対策も取られている。これはパブリッシャーが広告に依存しているビジネスモデルをポップアップで読者に直接説明する形式が大半だ。ほかにも応急処置的な回避策がとられる場合もあるが、すぐに対策がとられてしまうケースが多い。

パブリッシャーがブロック回避ソフトを導入していた時期もあった。ブロックされた広告を再び挿入するソフトだが、およそ7カ月後にはABPがこの回避ソフトに徹底的に対抗する計画方針を公表している

だが業界関係者によると、プレミアムパブリッシャーのなかでこうしたソフトの使用率が低下しているという。理由は簡単で、広告の再挿入が良いユーザー体験につながらなかったためだ。フリークエンシーキャップ(同一ユーザーに対する広告表示回数を制限する機能)に対応しておらず、追跡も行わないばかりかパブリッシャーにとってCPMがあまりに低かった。つまり労力に見合うだけの結果が得られなかったのだ。

Jessica Davies(原文 / 訳:SI Japan)