eスポーツにテレビ予算を誘引する、米・ゲーム企業の挑戦

ゲーム開発会社のアクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)が、オーディエンスの行動をeスポーツと従来のスポーツとのあいだで広告主が比較しやすいようにすることで、テレビ広告予算の獲得を狙っている。

アクティビジョン・ブリザードは、同社の主力eスポーツイベントである、オーバーウォッチリーグ(Overwatch League)について、過去2シーズンのオーディエンス数を広告主に公開している。その際、競合他社のように同時オーディエンス数を見せるのではなく、放送局がスポーツ生中継番組のリーチを示すのに使う指標である、1分間の平均オーディエンス数を出すのだという。

要は、イベントの総視聴時間を分単位で算出し、それを生放送にかかった時間で割って、オーバーウォッチリーグの1分間の平均オーディエンス数を出すということだ。これはニールセン(Nielsen)がテレビの生放送を測定している方法に基づいており、バイヤーは、オーバーウォッチリーグと、従来型のテレビで放送されている従来型のスポーツとを比較しやすくなる。

マーケターが、オンラインのストリーム番組と従来型のテレビ放送を比較できるようになれば、より多くの広告予算がeスポーツに流れ込んでくるのではないかという期待が持たれている。というのも、アクティビジョン・ブリザードが引用しているニールセンのデータによれば、リーチするのが難しい、米国の18歳から34歳までの層におけるeスポーツの視聴率は、バスケットボールやアイスホッケーといった従来の人気スポーツのそれよりも速いペースで伸びているからだ。

総合的な評価フレームワーク

ニールセンによれば、今年、米国大学バスケットボールのレギュラーシーズンを視聴した18〜34歳の層は、常時、平均7万2000人だった。ナショナルホッケーリーグを視聴した同じ層の数は、それより少し多い7万4000人だったという。米国におけるオーバーウォッチリーグのレギュラーシーズンのオーディエンス数は、同じくニールセンのデータを見ると、平均5万5000人なので、前述のどちらのスポーツもオーディエンス数では勝っている。しかし、その両方を追う形にあるにもかかわらず、米国の18〜34歳のあいだでもっとも急速に視聴率が伸びたのがオーバーウォッチリーグであり、昨年のシーズンから11%も増えている。

こうした数字は、eスポーツ界で一部の人たちが触れ回ってきていたものほど大きくはないかもしれないが、そこがポイントだ。そう語るのは、アクティビジョン・ブリザードで戦略および分析のリーダーを務めるカスラ・ジャフルーディ氏である。視聴数の算出方法が異なるため、そうした数値では、バイヤーがテレビの広告枠と同じ条件下で比較できないのだ、とジャフルーディ氏はいう。

「eスポーツがスーパーボウルよりも観られているという記事が出るのは、そのためだ。そうした企業は、総オーディエンス数と平均オーディエンス数とを比較している」と、同氏は語る。

さまざまなメディアオーナーが自社のコンテンツをそれぞれ異なる方法で測定しており、その測定方法も必ずしも明確にはなっていないeスポーツ業界において、業界全体での測定方法の標準化への取り組みは、まだはじまったばかりだ。となると、広告主たちにとっては、数値が誇張されたものかどうかを見極めるのが課題となってくる。

「この分野でいま、本当に必要とされているのは、このバーティカルのどこに、どうやって投資するのがいいのか、あるいは本当に投資すべきなのかを、ブランド側が情報に基づき判断できるようにする総合的な評価フレームワークだ」と、イノベーションコンサルタント会社DDGのソーシャルメディアおよびモバイル担当ディレクター、クリストフ・ジャメ氏はいう。「すべてのブランド、リーグ、ゲームが同じ条件で作られているわけではない。オーディエンス層はもちろん、彼らの好みやマーケットニーズも、それぞれ明確に異なっている」。

eスポーツに投資する広告主

eスポーツ業界に投資する広告主は、かつてなく増えている。ナイキ(Nike)は今年初頭、増えつつあるこの分野への投資を管理するためeスポーツとゲームの専門家らを雇用し、アディダス(Adidas)は8月、有名ゲーマーのニンジャ(Ninja)とアパレルラインの複数年契約を結ぶという大きな賭けに出た。ケロッグ(Kellogg’s)はスポーツ関連予算からのeスポーツへの投資を増加、ポルシェ(Porsche)はTwitch(ツイッチ)で「きみならどうする?(Choose Your Own Adventure)」スタイルのブランデッドゲームコンテンツを購入した。

eスポーツ業界へのこうした広告費の流入は、アクティビジョン・ブリザードにとって、パブリッシャーとして多角化するチャンスだ。これまでゲーム機やPC用のビデオゲーム開発にエネルギーのほとんどを費やしてきていた同社だが、人気タイトルの売り上げが減少の兆候を見せており、過去12カ月で株価は30%下落している。広告モデルへ方針転換すれば、売上高に対するストレスは軽減され、市場で特に収益性の高いセグメントに注力できる。同社によれば、アクティビジョン・ブリザードのゲームをプレイしている人の数は毎月3億人以上にのぼり、彼らは1日あたり約50分をゲームに費やしているという。eスポーツとストリーミングプラットフォームを活用して、ビッグタイトルのリリース後何年もゲームへの関心を維持できるアクティビジョン・ブリザードのようなパブリッシャーにとって、こうしたオーディエンスは利益を生み出す存在になってくれるだろう。

Seb Joseph (原文 / 訳:ガリレオ)
Image courtesy of Activision Blizzard.