IN/OUT 2021 - PUBLISHERS

「『コンテンツを語り合う』トレンドが、ますます強まる」:フジテレビジョン 清水俊宏 氏

2021年にも、新しいトレンドは生まれ、役目を終えたトレンドは忘れ去られていく――。

DIGIDAY[日本版]がお届けする、2020年・2021年の年末年始企画「IN/OUT 2021」。この企画では、我々が開催してきたさまざまなイベントでお世話になった、日本のブランドおよびパブリッシャーのエグゼクティブたちへ、新しい1年にトレンドイン・トレンドアウトするであろう事象について考えを伺った。

フジテレビジョンのコンテンツ事業室でチーフビジョナリストを務める清水俊宏氏の回答は、次のとおりだ。

――2020年を総括すると、どんな1年でしたか?

ビジネスモデル大転換への機運が高まった1年でした。

ここ数年、「最高のコンテンツを作るだけではなく、これまでにはなかったような『作り方』と『届け方』をいかに開発するか」に注力してきましたが、実際には社内に温度差があるのは否めませんでした。しかし、コロナ禍でどの番組も「新たな制作体制」への対応を余儀なくされ、「新たな発信」の必要性を実感することになりました。たとえば、「作り方」においては、収録・取材方法、機材、演出方法などの制約が出るなか、リモートを使ったインタビューなどが一般的になりました。また、「届け方」では、YouTubeやTikTokなどに最適化した動画の配信をしたり、ローカライズ、パーソナライズのニーズになるべく応えるコンテンツをネット上に展開してQRコードでテレビと連動させたりする取り組みなども行われました。

これまで少しずつしか進まなかった変化が一気に加速した2020年。まだ既存の仕組みを置き換えることのみにとどまっている分野もありますが、ユーザーの心理や行動の変化を的確に捉えれば新たな成長を見込めるという可能性を肌で感じた1年でもあり、今後さらに柔軟な戦略転換をしていくための足固めができました。

――2021年、必ず押さえておきたいと思う、新しいトレンドは?

「コンテンツを語り合う」というトレンドが、ますます強まると予測します。

友人と一緒にドラマなどをオンラインで楽しむ「ウォッチパーティ」のような形態がコロナ禍で広がりましたが、この流れは、コロナが終息したとしても遠距離恋愛などのニーズもつかんで成長していきそうです。Amazonプライムビデオでは、配信中の映画やアニメなどを最大100人でチャットしながら楽しめる機能のベータ版を会員向けにリリースしました。スマートフォン向けサービスでは「ピカブル」が、友人と声で会話しながら一緒にYouTubeなどの動画を見られる機能を無料で提供していて、若者の支持を得はじめています。

不特定多数ではなく「自分の知っている人」と一緒に見るため、コンテンツの滞在時間やエンゲージメントは極めて高く、「口コミ」で広がっていくのが特徴です。5Gの整備でXRや新サービスなど「コンテンツを語り合う場」も増えていくため、メディア側もトークルーム創設や自由視点映像の提供など「コンテンツを語りたくなる仕掛け」を次々投入していくでしょう。「おひとり様のコンテンツ消費」とは違う、「友人との同時共有型コンテンツ消費」が2021年にどのような進化をするのか、目が離せません。

――2021年、もはや時代遅れと思える、既存のトレンドは?

「時間のコスパ感覚」というトレンドは、大きく後退しそうです。

コロナ以前は「知らない2時間のドラマ・映画を見るより、YouTube動画20本を見たい」「ドラマを見るなら、家のテレビでまとめて見るより、移動中などに細切れで見たい」といった視聴行動が「時間のコスパが良いから」として広がりを見せつつありました。しかし、コロナ禍で在宅時間や自由時間が増え、「長いコンテンツをまとめて見る」「質の高いものをしっかり見たい」という感覚が再び優勢になっているようです。「鬼滅の刃」や「愛の不時着」は、まさに「質の高いものをまとめて見る」という形で広がりを見せました。

また、オンラインイベントを自ら行なう企業が増え、「リーチ数を求めることの時代遅れ」を実感した人も多いようです。「1万人がとりあえず再生だけしたコンテンツよりも、100人が熱心に見てくれるコンテンツ」「1万人のなんとなくのフォロワーがいるインフルエンサーよりも、100人の熱狂的なフォロワーがいるマイクロインフルエンサー」の必要性が真剣味をもって語られるようになりました。「時間のコスパ感覚」「リーチ」で顧客をとらえようとすると、実態との乖離が生まれてしまいそうです。

年末年始企画 [IN/OUT 2021] Brands の回答一覧
年末年始企画 [IN/OUT 2021] Publishers の回答一覧

Edited by DIGIDAY[日本版]編集部